494 最後の中ボスと戦います
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ターロースを倒すと私達は突然波紋に飲まれ、ワープした。
気づくと私は1人になっていた・・・。
マイルズがいない。
そうして目の前に、戦闘機がいた。黒い北斗だ。
乗っているは誰か確認できない。真っ黒な影が乗っている。
第6ステージのボスは多分ビーナスだから、中ボスだろうか。
眼下は一面の海だ。雲一つ無い、青一色。
とりあえず、正面対決状態なので機銃を撃つ。
あっ、・・・・取ったパワーアップが、全部消えてる。
つまり、単純な戦闘機の能力だけで戦えってことか。
〈時空倉庫の鍵〉も使えないみたいだ。
「オーケー、純粋なドッグファイトってことだね――じゃあ、エアマのスーパートップガンの実力見せてあげる!」
互いに機銃を撃ちながら、迫る。
結構、こちらの弾丸を横転で躱してくる!
だけどそろそろ、北斗の左右の翼から放たれている機銃の射線が交差する場所――機銃調和点に入る。その瞬間、横転の中心軸を撃ち抜いてやる。これなら弾丸を横転で躱せない!
400メートル――350メートル――300メートル、今!
撃つたら私も横滑りで、相手の弾丸を躱しておく。
さあ、あっちはどう――、
「えっ、向も躱した!? 横転で!?」
―――あっ、横転じゃなくて、バレルロールか!
バレルロールは普通の横転と違って、上から見ると、曲がった「↗」とか「ގ」みたいな感じの軌道を描くから、軸をずらせるんだよね。
同じ方向に避けたから、普通の横転に見えた。
「さすが70層の中ボス・・・・一筋縄には行かない」
互いにすれ違う。しばらく進む。
相手は背後にいる、撃たれる心配はないから、私は上昇Uターン。
って、撃ってきた!?
そうだ、北斗には後ろ向きにも機銃があるんだった。
でも後ろ向きに撃った弾なんて、真っすぐ飛ばないから問題ない――と思ったら、直撃コースの弾丸が来てる!
「このっ!!」
私は弾丸をなんとか躱す。
相手は下降Uターンを選択。こうして両機、円を描きながら飛ぶことになった。
2機が、描く円の軌跡の180度反対側を飛びながら、相手の後ろを取ろうとする。
だけど性能が全く同じ2機が同じ方法で背後を取り合っても、距離が縮まるわけもなく。
「Gもキツイし・・・・、燃料も無限じゃない。早めに決着を付けよう」
私は上昇に切り替え、わざと〝相手に後ろを取らせる〟。
「いいよ、来い!」
相手が後ろから機銃を連射。
私は一瞬相手の機首上げ方向にフェイントを入れて、さらに一瞬の内に低揚力機で無理やり速度を緩め、機首下げ方向に逃げる。
飛行機は浮くように設計されている――だから沈むのは苦手だ。
素早く機首下げ方向に逃げられると、パイロットが幾ら疾く反応しても相手を追うのはワンテンポ遅れる。
私の頭上を、機銃の弾丸の塊が通り過ぎる。
戦闘機の弾丸を避ける時は、そもそも射線から逃れるのが一番いい。
戦闘機の弾丸は、そんなにあちこちにバラ撒けるものじゃない。戦闘機はすぐに機首を振れないから、ある程度、塊まって飛んでくる。
だからその弾丸の塊を躱せば、かなり楽に躱せる。フェイントを掛ければ尚である。
敵は、偏差の為に私の進行方向を撃っている。
ならいずれ、相手は追い越しする。
私は、さらに相手の機銃調和点に入ったら、バレルロールを左右に繰り返す。
山なりに半円を描き、何度も左右に。
「必殺、バ・レレレ・ルロール」
この舌を噛みそうな技は、横滑りより大きく避けられるのが利点、横滑りより動きが遅いのが欠点。
〈励起翼〉が無いからね、スリップじゃあまり大きく避けれない。あと〈励起翼〉がないとスリップも遅いし。スリップは、バ・レレレ・ルロールよりは速いけど、動きが小さすぎる。
というわけで、相手との距離200メートルの危険地帯を抜けたので、左右横転で弾丸を躱す。
しかし相手は、私の前方に機種を向けて私より最短距離を通っているので、そろそろ追い越しする。
「さあ、アレをやるんだ」
私はある瞬間を待っている。
ドッグファイトで、速度を捨てないで追い越しを防ぐには、曲線と上昇で、時間稼ぎと減速するしかない。
「そろそろ苦しいでしょ?」
私が言うと、後ろの北斗が機首を上げた。
「――来た!! ここだ!!」
相手が息継ぎでもするように――水面に顔でも出すかのように上昇。ハイ・ヨーヨーをして来た。
ここで私は、エアマで私が無双できた理由の技、下降Uターンを繰り出す。
下降Uターン《スプリットS》は相手に上面を晒すから、相手の機銃がこちらを狙っている時はやってはいけない。
だけど今、ヤツは機首を上げて機銃を、私から逸らした。
この瞬間は撃たれないっ!
「これこそ! 私がエアマで無双できた秘技、〝勝利の廻天〟!!」
この技で、私は1試合中1度も撃墜されず敵を54機撃墜と、なかなか自慢できるキルレシオを叩き出したことが有る。
自慢する相手がいなかったから、モニターの前で「ウィヒヒヒ」とか笑うだけだったけど。
この技を、初見で破れる人はそうはいない。知ってるならヘッドオンに持ち込まれるけど、このMoBは知らなかったようだ。
ヤツは普通にハイ・ヨーヨーを選択した。
MoBはハイ・ヨーヨーを終えて、私の姿が前方に無いことにビックリしただろう。
❝あー・・・スウたん、エアマでこんな事してたんだ。そら強いわ❞
えっ、配信に映ってたの!?
❝†ラスト・ロンド†❞
「や、やめ!! 手元が狂うから!!」
❝手元が狂うのは被害甚大なので、今は止めておこう❞
❝てかこれ、明かしていいんか・・・?❞
「今だけじゃなく、ずっと止めて! ――さ、さあ、こっちのターンだよ」
とにかく、私が後ろを取った。
私は、もしもこちらが追い越ししても簡単には撃たれない場所――〝相手の旋回の内径〟にあるエントリーウィンドウに向かって飛びながら機銃を撃つ。
そう、ここから入れば万が一追い越ししても大丈夫。
相手は、横転してこっちの機銃を躱す。
うーん当たらない。機銃調和点に入れたいなぁ。でないと当たりそうにもない。
横滑りとか、私の真似してバ・レレレ・ルロールもしてくるし。
駄目だ、そろそろ相手を追い抜きそうだ。
仕方ない。機首を上げよう。
私はハイ・ヨーヨーを実行。
「さて・・・」
私はハイ・ヨーヨーで背面飛行になった瞬間、頭上つまり、下を確認。
やっぱり。ヤツも私の真似をして、スプリットSをしてる。
「私の技が、私に通用するものか!」
私は既に背面飛行になっているので、そのままハイ・ヨーヨーからスプリットSの機動に変更。
その為の背面ハイ・ヨーヨーまである。
❝これは酷い❞
両者Uターン。結果、相変わらず私が追尾側。
相手は私をなんとか追い越しさせようと、シザース機動を使ったりするけど、無駄。私がそんな手で追い越しとかするわけ無い。
とうとう速度を捨ててまで、ブレイク・ターン(速度を捨てながらカーブする事で、急激に曲がる)もしてくるけど。付き合わないよ。
もう一度、ハイ・ヨーヨー。
MoBは捨てた速度を回復するため、アンロード加速をした。
アンロード加速っていうのは、飛行機が一番速く飛べる角度で飛ぶ方法。
敵が一番速く飛べる角度で、エンジンの出力を上げる。
私はMoBのアンロード加速を見て唸る。
「綺麗なアンロード加速、本当に最高速を出せる飛び方をしてる。強い、間違いなく」
機銃も避けるし。
「これじゃ、なかなか終わらない。――機銃調和点で回転の芯を狙わないと、撃墜できそうにない。相手との距離は500メートルくらいか・・・・なら!」
今度はロー・ヨーヨー。
まずは機首下げ、降下で加速。そうして機首上げ。高揚力装置を下げて上昇。
私は両の横転舵まで下げる。こうすればさらなる揚力が手に入る。一気に上昇!
よし、機銃調和点に入った。
MoBは危険を察知して、バ・レレレ・ルロールをしてくる。けど、
「読んでたから、通用しないよ!!」
私は何度も見た相手の軌道に沿って、機銃を掃射。
完璧な弾丸の収束が線を描いて、敵を噛み砕いた。
敵の北斗が、爆散する。
「ッシ!!」
私が拳を握ると、空間が揺らぎだした。
ここまででドッグファイトの基本的な事はすべてやったので、ドッグファイトの講座を短編として公開しました。
本編でもまたやるかも知れませんが、興味有る方は読んでみてやって下さい。
https://ncode.syosetu.com/n3126lf/
アップ前に張ったURLですが、多分このURLで行けると思います。




