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437 釣りをします

 しかしスウは、魚雷をバリアで受け止めた、きらりを心配する。


「結構凄い威力の魚雷だったですが、大丈夫ですか?」

『よゆー、よゆー、もっと殴ってもらって良いくらいだわ』

「そ、そうですか」

『水中には全部で6匹くらいいるみたいだけど、全部から攻撃されても大丈夫よ。ほら、私のパーティーメンバーが回復してくれるから』


 スウが背後振り返ると、ヒーラーが6人いた。


「え・・・・」

『私のリスナーの猛者たち。全員、ヒーラーでしかも15世代機。手の空いた人間が攻撃するというガチガチ構成』

「うわあ」


 そりゃ、バリアが少々砕けても瞬く間に回復してしまう。


『というわけで敵の全部から攻撃されても余裕。どんどんアクティブソナー使って!』

「あー、じゃあスキル使ってみます」

『スキル?』

「〖ドラミング〗」

『ド、〖ドラミング〗!?』


 スウがスキルを使って、みずからの胸を叩くと。


 拡声器で大きくされた「ポコポコ」という音が、海中に鳴り響いた。

 その音は相当遠くまで響いたらしく――

 しかし、パッシブソナーを使っている人間には相当うるさかっただろうが、どこからも文句は来ない。


 敵がドラミングの音を聞きつけたのだろう、辺りから一斉に魚雷が飛んできた。

 これでスウには敵の位置が把握できた。


「じゃあ、北の3匹固まってる場所に飛びましょう」

『ド、〖ドラミング〗ってそんなダサいスキルがあるなんて、是非欲しいわ』

「いや・・・・」


 ドン引きのスウは、きらりを放置して北に向かった。


『あっ、待って!?』


 こうして水中の敵を全滅させた前線プレイヤーたちだった。




『いやー、終わった終わった』

『最初はどうなることかと思ったけど、産むは易しだな』

『いや、スウが居なかったら無理だろ、今の』


「ふー、終わりかな」

『ですねー』


 スウ含め、これで69層攻略も終わりだと思っていたプレイヤーだった。

 しかし、またも敵を倒した場所がボンヤリと輝いて――それらが一箇所に集まっていく。


「えーーー」

『ちょちょちょちょ』


 慌てるスウときらり。

 まわりのプレイヤーも慌てている。


『嘘だろおい!』


❝まだなんかしてくるのか!?❞


 現れたのは、シャチのようなMoBだった。


 VRに名前が表示される。


 〈ポセイドン〉。


「ギリシャ神話の神の名を冠してる」

『経験上、絶対強い奴じゃないですか、やだー』


 現れたポセイドンが、泡を残して瞬く間に姿を消した。

 スウは反射的にタグ付けしようとしたが、そんな暇などなかった。


『は、速い!!』


 スウが速度メーターを見ると、


「秒速1300メートル!? 水中で音速を超えてる!?」


 水中では抵抗が、空気中の8倍にもなる。

 その上抵抗の影響は、数値が上がると加速度的に上昇する。


 バーサスフレームでも秒速300メートルから、500メートルしか出ないのだ。


「あんなの、タグ付けできないって!」

『どこ行ったの!?』

『駄目だ、見失った!!』

『そ、狙撃してくるぞ!! 一撃でバリアもシールドも抜いてきた! う、うわぁぁぁぁぁぁ!! 14世代機じゃもう戦えねぇ! だ、脱出する!!』

『しかも撃ったらすぐに位置を変えやがる。あんな速度追えねぇよ!!』

『バーサスフレームでも追いつけない! 氷山を利用してすぐに隠れる!』


「どうする? どうしよう――そうだ、アレを使おう」


 スウは、〈時空倉庫の鍵〉から棒のようなものを取り出した。


『え、スウさん、それなんですか?』

「前に友達が落下していくのに上手く助けられなくて、それで作ったんです。釣り竿」

『つ、釣り竿!?』

「きらりさん、ペイント銃を預けるんで、ポセイドンが止まったら接射して下さい」

『は、はい』


❝あー、40層でアリスの機体が停止した時の・・・❞

❝昔ちょっと使ってた釣り竿かあ・・・❞


「〖テレパシー〗――リイム」

『コケ?』(ママ、なぁに?)

「ポセイドンを、〖アポート〗で引きよせて」

『コケー! ・・・・コケケ・・・』(任せて! ・・・・あ、でも、相手が見えないと、移動できない)

「大丈夫」


 スウは、〈時空倉庫の鍵〉からポラロイドカメラを取り出す。そして、


「〖念写〗」


 〖念写〗のスキルで相手の位置を捉えた。フィルムを振って浮き上がってきた写真を通信ウィンドウにかざす。


「相手はこんな奴」


 リイムはポラロイドの写真に映る氷山に隠れている敵を見た瞬間、スキルを使う。


『〖コケッコ〗!』(〖アポート〗!)


 氷山に隠れていたのに、いきなり瞬間移動させられたポセイドンが混乱したようにあたりを見回した。

 そしてすぐさま逃げようとするが、そんなことはスウが許さない。

 アレスティングフックを付けたワイヤーを、ポセイドンの前に飛ばした。


「これを、こう!」


 逃げようと尾びれを振ったポセイドンの口に、見事にアレスティングフックを利用したワイヤーが引っ掛かった。


❝でも、相手は音速で動くんだろ!? 止められるのか!?❞


「大丈夫です。このヘウレカの竿なら!」


❝仕組みは完全にクレーンだもんなw❞


「あとはバーサスフレームとスキルの力技で! 〖質量操作〗!!」


 スウが、フェアリーテイルの質量を倍にして、氷山にフェアリーテイルの足で踏ん張る。

 逃げようと暴れるポセイドン。


「とまれぇぇぇぇぇぇ!」


 スウが叫びながらフェアリーテイルでリールを回すと、ポセイドンが引きづられていく。

 きらりがすぐさま、ポセイドンへペイント弾を接射。ポセイドンにタグ付けが完了した。

 暴れまわったポセイドンはワイヤーを引きちぎって逃げるが、隠れることができなくなって、被弾を続ける。

 やがて、


『69層の攻略に成功しました』




「きらりさん、リイム、ありがとね!」

『いえいえ、お役に立てて光栄です!』

『コケーーー!』(お手伝いが出来て楽しかったよ、ママ!)

❝GG❞


 こうして69層は攻略され、いよいよ70層のボス攻略が始まるのだった。


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― 新着の感想 ―
70層…キリがいいから大ボスかな?
更新お疲れ様です。 デカいシャチもといポセイドンも、まさか水中を音速で動けるというチート持ちの自分が釣竿(?)を起点にして倒されるとは思いもよらなかったでしょうね。いや普通に誰でも予測出来んなこれは…
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