427 決闘します
アレックスさんとの通信を終えると、眼の前に機体一覧が表示された。
じゃあ、どうしよう。
勲功ポイント100万以下だと、1000万もするフェアリーテイルは選べないから――やっぱりスワローテイルかな。
でも、このスワローテイル14世代機なんだよね。ちょっと使いづらいかもしれない。
きらりさんの通信が聴こえてくる。
『私は、勲功ポイント的に50万だけどロブの攻撃用換装でいいかしら。で、クールとかいうヤツは何の機体――』
きらりさんは安牌のロブを選ぶらしい。使いやすいもんね。
で、私はやっぱりスワローテイル――久々だから、ちょっと懐かしいかも。私が視界に浮かぶスワローテイルの部分をタッチすると、怒声が聴こえてきた。
『は!? 10万しかしないスワローテイル、地雷機体の!? お前ガチで、舐めてんのか!? ――ふざけるのもいい加減にしろよ!! ほんともう絶対に分からせてやる! みんなコイツに今から分からせるからみててね☆きらりん』
だって、スワローテイルやフェアリーテイルは、私にとって最高の機体なんだもん!
もー、この人、ほんとにこわいよぉ。
❝また、きらりが豹変してるwww❞
あー。でも、きらりさんって豹変で売ってるタイプなんだ?
だけど、この人ガチだからなあ。普通にこわいです。
アレックスさんのルール説明が続く。
『VRなんで撃墜した方が勝ち、あとは何でもありだ。じゃあカウントダウンするぞ?』
「はい」
『いつでもどうぞ』
『――いくぞ
3
2
1
Fight!!』
この決闘は流石に、サニヤ少佐の時みたいに不意打ちで始まりとかじゃないよね。当たり前か。
さてと、決闘が始まったけど、きらりさんとの距離は10キロくらい。
ずいぶん距離があるから、接敵までに相当加速できるだろうけど、あんまり速度を溜めるとGで曲がれなくなるから地上の最高速とあまり変わらない秒速1250メートル位にしよう。増やしても1400位にしないと。
「よし、そろそろ互いに射程に入るかな――って、向こうはだいぶ速度を溜めたなあ」
秒速3000メートル位出てない?
きらりさんの通信が入ってくる。
『そんなトロトロした速度で私に勝てると思ってんの!?』
前線攻略勢は、そんなに高速戦闘するのかな。――まあ、良い重力制御装置をもってるのかもしれないし。
だけど、あんなに速度上げたら、機体自体が曲がる時に大きなカーブ描きそう。
昔の戦闘機も、格闘戦をするなら速度が遅いと有利な所あったしなあ。
ただまあ速度がないと、一撃離脱戦法をされちゃうと負けちゃうんだけど。
だから多分きらりさんの戦闘スタイルは、一撃離脱戦法なのかな。
確かに一撃離脱をパーティーでするなら、連携が大事になるよね。
きらりさんが人型モードのロブで、ガトリングを乱射してくる。
人型で戦うタイプの人なんだね。
そして、すれ違おうという動きをしてくる。
私は、ガトリングの弾丸を視ながら サッサッ と躱す。
『くっ、なにあの動き、なんで飛行形態なのに宇宙であんなに細かい動きができるの!?』
私は変形中でも機体の腕とかを動かして、細かい微調整してるんだよね。
単純な話、宇宙だと機体の腕とかが動く時――『動いた方向と反対側、両方』に50%づつ力がかかる事になる。
だから腕を動かすだけで、機体が結構回転したりするんだ。
で、私はVRと操縦桿を同時に動かせるわけで。〈発狂〉デスロでもやってたから、これはVR内でも出来るという訳で。
だから飛行形態でもスワローテイルの腕を動かしたり、普通は戦闘機形態ではできない膝を曲げたり、機体内部に仕舞い込まれてる頭を回したり、腰を回したりで微調整ができる。
しかも相手と数キロも距離が離れているから、相手が放った弾丸は到達まで何秒も掛かるわけで、当たるわけもなく。
『ちょこまかとぉ!!』
あとこの人、多分――というか確実に、機体がVRに映す偏差予測通りに撃ってきてる。
これだと私に当たるわけがない。
だって機体が単純計算してる偏差予測を外すだけで避けられるだもん。
戦う相手が頭の悪いMoBなら、偏差予測に従ってたら当てられるけど、人間相手だと偏差予測通りじゃ駄目なんだよね。
――これは私が、散々FPSで思い知ってきたこと。
ちなみにMoBでもオークは別、アイツ等ちゃんと偏差を躱してくる。
でも、きらりさんは流石にランキング30位だけあって、こっちが単純な蛇行しても読んでくる。
だけど、私は腕とかを細かく振ってるから一般的には見ない動きになってて読みにくいんだと思う。
というかそもそも、見てから回避余裕でした。だし。
うーん、今後人間みたいな行動してくるアクティブアクターとも戦う機会がでてくるかもなんだよね?
その時この人の戦い方じゃ、結構危ない。
(よし、本当にちょっと分からせようか――対人の機微って奴を)
相手との距離がどんどん縮まっていく。
距離1キロ――距離500メートル――距離100メートル。
『なんでこんな近距離でも躱し続けられるの!? 反射神経でどうこうなる距離じゃないでしょ!! スワローテイルなんか、ガトリングが数発当たれば爆散するのに!!』
うん、流石にこれ以上は原始反射でも躱せない。
「3択ブースト、シールド」
私は強化したシールドで、相手のガトリングに耐える。
シールドの効果時間は1秒と長めにしてある。
そしてすれ違いざま。
相手が私の左を抜けようとしたので、右の〈臨界・励起翼〉を展開。
この時のために、〈臨界・励起翼〉は相手に向けている。
空気抵抗も重力もない宇宙――しかもスワローテイルは複葉機形態があり、今が正に複葉形態。
右に備えられてる上下2枚の翼から放たれたプラズマが思いっきり、スワローテイルを横滑りさせる。
『えっ、――なっ、なにその動き!?』
「その考え危ないですよ。『常にすれ違える』なんて、思わないほうが良いですよ。一撃離脱なんてさせません」




