423 人類の力を使います
❝スウたん、それ超レアMoB!❞
❝最近噂になってたユニーク個体だ!❞
❝何人もの前線プレイヤーが返り討ちになってる!❞
なんかヤバイの釣れちゃった――しかし、サメは殴れと教えられている。
というわけで、バックラーも実験することにした。プレゼントするものだけど、実戦で使ったらパキッと真っ二つとか洒落にならないから実験はしておきたい。
私はフェアリーさんで、作ったばかりのバックラーを握って、飛び上がったサメの腹にシールドバッシュ。
ロンズデーダイヤモンドに突き上げられたサメは、陸に吹っ飛ぶ。
❝スウたん。そのサメ、武器での攻撃が一切通用しないんだよ!❞
「そうなんですか!?」
❝・・・でも弱ってね?❞
「え。あれ? そういえば・・・・ピクピクしてる」
サメは陸にあげられ痙攣していた。
私は暫く考える。
「・・・・もしかして、武器での攻撃は通用しないけど、防具での攻撃は通用するとか?」
❝トンチかよワロwww❞
サメは、陸に打ち上げられた魚よろしくピクピクしてる。
ややあって意識を取り戻した白い巨大サメが、仰天したように海に帰ろうとする。
「逃さない」
❝そいつ、すごい力――の筈なんだけども❞
❝・・・・バーサスフレームの3倍位の力が・・・・あるんだけども❞
鮫に引っ張られ、竿から伸びていくワイヤーをリールを巻いて引っ張る。
相手の力を、6分の1以下に出来る釣り竿のチート性能舐めては困る。
私がリールをグリグリ巻くと、白い鮫が引き寄せられてくる。
逃げられない鮫は、大暴れしだす。
私は配信にエコーを掛けて、必殺技のように叫ぶ。
『これがアルキメデスの知恵が生み出せし、〝賢者の竿〟の力だ! 人類の力だ!』
すると、なんだかコメントの様子が変になった。
❝何その名前❞
❝フニャフニャしてそう❞
❝おいヤメロ❞
「え?」
❝スウたん、キョトンとして首を傾げてるの笑うw❞
❝相変わらずやなあw❞
「えっ、えっ、えっ?」
❝賢者モードっていう言葉があってな。そして竿って、あるモノの喩えによく使われるんよ❞
「あっ!」
私は自らの犯した過ちに悶絶しながらコックピットの計器に、何度も頭を打ち付ける。
乱れ舞う、髪。
そしてもう一度エコーを掛け直す。
『これがアルキメデスの知恵が生み出せし、ヘウレカの竿の力だ! 人類の力だ!』
❝言い直すなワロw❞
❝速攻で名前変更すなw❞
私は引き寄せられた白いサメを抱く、そうして抱いたまま飛行形態で陸の奥地に誘拐。
バーサスフレームより力があるという魚でも、陸の上や空の上ではピチピチするだけでうまく力がでないようだった。
そして絶対に逃げるのは無理だろうという内陸までくると、暴行を加える。
「シールドバッシュ、シールドバッシュ」
両手で持った盾の角で、ガンガン殴りまくる。
❝角は止めたれwww❞
❝痛そうw 容赦ねえw❞
❝あーあー。せっかくのユニークモンスターなのに、戦いすら始まらない❞
❝スウたんがマンチキンすぎて、なんか若干、MoBが可哀想になってきたwww❞
「和マンチ万歳」
ホワイト・キングが「ギャオー」と叫ぶ――なんか目に涙が浮いている。
「やめてやめて」と言っているようだ。
本当にちょっと可哀想になってきた。
「んーーー、逃がそうかなあ」
❝逃がしても他のプレイヤーにいずれ狩られるだけだぞ❞
「そっか。シールドバッシュ、シールドバッシュ」
「ギャオー」
やがてホワイト・キングは砕けて消えた。
『ユニークモンスター、ホワイト・キングを討伐しました。銀河クレジット100万、勲功ポイント100万を入手しました。強力なユニークモンスターを討伐したことにより、称号〖クリーンヒット〗を入手しました。使用すると、相手の弱点が見える。コアや重要器官、パイロットの位置が分かる』
❝強力?❞
❝強力?❞
「強力?」
❝いや、攻撃が一切無効とか、強力やろがい❞
❝・・・・字面だけなら、最強の一角だな❞
❝というかスウたんにその称号は渡したらあかん! スウたんの腕が揃うともう手がつけられなくなる!❞
パイロットの位置が見えるのは良いな。誰かに襲われた時に、パイロットを避けて攻撃しやすい。
こうして2つのアイテムのチェックも終えて、2つのアイテムは完成を見た。
「えっ、プレゼント!?」
次の日、早速リッカにプレゼントしようとハイレーンに呼び出すと、リッカは私の前に、なぜか西洋の甲冑――全身板金鎧を着込んで現れた。
「うん・・・・そうなんだけど・・・・リッカ、その鎧どうしたの」
「これかー! 銀河連合のショップカタログで見つけたんだ! パイロットスーツ!! カッコイイだろー!」
「うん、カッコイイけど・・・動きづらくない?」
「超、動きづらい!」
「それでいいの?」
「あんまり良くない!」
「だよね」
「仕方ないんでパーツの一部だけにするかー」
リッカは動きの邪魔になりそうなパーツを外していく。
取捨選択をしていくと、なんか某アルトリアさんみたいな格好になった。ダーリンと同じ格好だ。
やぱりあの格好は、合理的らしい。
ちなみにリッカは鎧の下に、さらにパイロットスーツのシルバーセンチネルを着ているみたい。
「うん、これならそこそこ動きやすい。背中が曲がらないけど――まあ、背中が曲がらないのは時々利点にもなるし。防具を軸にして相手を投げれそうだ。スウ手を出して」
「やだよ! 投げる気でしょ!!」
「〖サイコメトリー〗を使うとかズルいぞー!」
「使わんでも分かるわ!!」
「長い付き合いだと、こういう事があるから不便だなあ」
「長く付き合わなくても分かる事もある」
リッカが、除外した鎧のパーツの山を見た。
「500万もしたのに、勿体ない」
その言葉に私は驚愕で目を見開いた。
「え、500万って、勲功ポイント?」
「だなぁ」
「だなぁって、勲功ポイント500万だよ!? なにしてんの!?」
「宵越しの金は持たぬ」
「どっかのプラモデルで散財したJKを、思い出したよ・・・・」
自分の散財は気にならなくても、他人の散財は気になるモノである。
リッカが腕を組む。
「まあ、使う時には使わないと」
「その鎧を買うのって使う時だったの・・・? 本当に使う時だったの・・・? ――ていうかそんな事ばっかしてるから、万年勲功ポイント枯渇してんじゃないの!?」
「言い得て妙」
「遠回しにして肯定してんじゃないよ!」




