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422 白きサメが現れます

 思い出し終えて、私はあの時アリスが考えた構えになる。

 壁に持たれながら、仁王立ちで、励起剣を正面にぶら下げた。元は翼である励起剣はかなりのロングリーチを誇る。


「ほら、コックピットは胸の裏だよ。胸もがら空きでしょう」


 ウォンバットっぽいMoBがグルルと喉を唸らせ、フェアリーさんの胸を見た。

 そうして、勢いよく飛び込んできた。――釣れた!!


「フィッシュオン!!」


 コックピットの中で叫んで、私は肩のロケットエンジンを点火、フェアリーさんを回転させて半身にさせる。

 瞬く間に〈励起剣〉が正面に回った。


 シジフォスの目が驚愕に見開かれた。

 だけど、もう遅い。


 フェアリーさんの左手を、チョイと下げれば、


 ガキィ ざりざりざりざり


 という音がして、シジフォスが真っ二つになっていく。


 左右に分かたれたシジフォスが地面に落下して、ジルコンで出来た玻璃のようになって、砕け散った。


 指を鳴らす音が、通信から聴こえてきた。指を鳴らしたのは、タズマさんだ。


『ひゃーーー、カッケェ!! 流石スウたん!! 配信してないし、今の見れたの俺だけかよ! みんなに見せたいような、ラッキーなような、感情がこんがらがってるぜ! スウたん、今のカウンターって何?』

「アリス考案のカウンターです」

『一式さんかあ。流石剣道の選手って噂があるだけあるなあ。一式さんって強いの?』

「めちゃくちゃ強いですよ」


 日本一の女子高校生ですから。


『マイマスター、アイテムが出たようです』

「え、まじ?」


 シジフォスの砕けた場所に、黄色い大きな宝石が残っていた。


『おっ、スウたん、あれってロンズデーライトっぽい輝きしてる』

「本当ですか!?」

『確かシジフォスって、体内でロンズデーライトを生成するんだけど、あんな大きなのは初めて見たわ』


 私がフェアリーさんでロンズデーライトを持ち上げると、アイテム名と説明が表示された。


 忍耐のロンズデーライト:普通のロンズデーライトに比べ遥かに強靭であり衝撃にも強い。


「これ凄いかも」


 通常のダイヤモンドやロンズデーライトは衝撃に弱いらしいけど、このロンズデーライトは衝撃にも強いみたい。


「ラッキー、これをリッカにあげる盾の材料にしよう!」

『リッカちゃんにプレゼントあげるんだ?』

「です。そのための材料をここに取りに来たんです」

『まじかー、スウたん友達想い』

「リッカにはお世話になってるんで」

『そうなの? 配信見てると、スウたんがお世話してるように見える(笑)』


 まあ、あの子、私といるとすんごいだらしなくなるからなあ。でもやっぱり色々お世話になってるんだよ。


「一緒に居てくれるだけで、私には有り難いので」

『スウたん・・・ボッチだもんね』


 私は、タズマさんの言葉に胸を突き刺されて、コックピットで吐血しかけた。


 その後、採掘を開始。


 グラファイトやらダイヤモンドやらロンズデーライトやらが大量に手に入った。


 そうしてハイレーンに帰って、盾の作成。

 素材は単純なので、連合で買った。ミスリルと取ってきた炭、チタン。あと装飾用にタングステン。それから運良くゲットした〈忍耐のロンズデーライト〉を、大型レプリケイターにフェアリーさんで放り込む。

 あとは設計図を入れたMicroSD(地球製が使える)を入れて、バーサスフレーム用の巨大ボタンを押せば、しばらくして。


 チーン


 と出来上がり。


 真っ黒に銀の縁取り、中央に巨大な忍耐のロンズデーライトをハメ込んだ、結構カッコイイ盾が出来た。

 なかなか良いと思う。


 ダーリンが銀色の騎士みたいな感じなんで、これを胸に貼り付けると似合うと思うし。


 シールドバッシュで叩きつける部分がロンズデーライトだけど、忍耐のロンズデーライトは衝撃にも強いみたいなんで多分大丈夫。


 で、もう一つ作ろうと思ってる物、こっちはフェアリーさんの装備。


 私は、40層攻略でアリスがガス惑星に落下していくのを止められなかったのを悔やんでいる。だから過去の自分と同じ(てつ)は踏まない。

 そこで釣り竿を作ろうと思う。それも滑車をバリバリに使った、平均150トンのバーサスフレームでも18トンくらいの力で引き上げられる物。


 要はクレーンなんですけどね。

 ただリールで巻き上げる部分が有るので、釣り竿と思っている。

 なによりこの釣り竿はすごいのだ。


 クレーンはかのアルキメデスがローマからカルタゴを守ったという、伝説の武器。

 しかもリールってテコの原理を使って巻き上げられるんで、輪軸――つまり、コンパウンドボウの滑車の仕組みと同じ。

 コンパウンドボウも弓としてチート。

 ちなみにテコの原理もご存知アルキメデス。

 つまり伝説とチートを組み合わせた、スーパーアイテムを作ろうってわけ!


「アルキメデスの知恵より生まれた竿、〝賢者の竿〟と名付けよう」


 壁に向かって熱く語りながら、集めた材料をレプリケイターに入れて暫く待てば。


 チーン


 はい出来上がり。




 早速私は、配信しながら39層の海洋惑星で釣り竿クレーンを垂らしてみる。


❝スウ、なにしてん?❞

❝バーサスフレームで釣り❞

❝バカだろwww つか釣り竿じゃなくて、どう見てもクレーンじゃんwww❞

❝でも、あそこ39層――下層だぞ・・・❞

❝・・・なにそれ怖い❞


「ヒット!」


❝えwww❞

❝ちょwww❞


 私が「フィッシュオーン!」と叫んで釣り竿を引くと、なんかフェアリーさんの身長の二倍はあろうかという白いサメが、海から飛び出した。


『マスターMoBです。ユニークモンスターです。分類名ミュータント・カリュブディス。種族名モータル・シャーク。個体名ホワイト・キング』


「え、ユニーク?」

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