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419 プレゼントを作ります

◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆




 その日――私は、今日ものほほんと、ハイレーンで生産活動をしていた。

 今日はハイレーンの月が低い位置にあり、丁度夕日が赤くなるように月も赤く燃えている。

 ちなみにハイレーンでは午前0時を回っているけど、地球時間ではまだ午後6時であり、夜型の私が最も活動的になるのはこの後。

 私は赤い大きな月をバックに、顎に手を当てて呟く。背後の月は地球のものとは比べ物にならないほど、大きな月だ。


「またレプリケイターを使って、作りたいものが有るんだよね」


 一つは盾。リッカは西洋ファンタジーが大好きだから、カイトシールドを使っているんだけど、元々盾を使わない戦い方に慣れているせいか、視界不良とかの影響をモロに受けて成長を妨げてるんだよね。


 透明なシールドはバリアとして既に存在してるので、普通の盾で、もっと小さな物を作ってあげたい。


 小太刀でも相手を制する彼女なら、手のひらより少し大きい程度の盾――小盾(バックラー)があれば十分だと思うんだ。

 ただ、リッカは合体変形する機体に乗ってるんで、どこに設置すれば邪魔にならないんだろうと考えた。

 その結果、ダーリンの胸の装甲の上にさらに被せるように収納すれば良さそうなので、胸の装甲にも見える小型カイトシールドを作ってみようと結論。


 カイトシールドなら盾として使っても上面の形が視界の妨げになりにくいし、凄く幅の広い剣にも見えるし、なんかだかリッカに向いていそう。


 素材は、ミスリル(MysLill) + 六炭化ホウ素 + 窒化チタン合金の複合装甲。

 これは、バーサスフレームの盾に使われる素材。


 六炭化ホウ素は、六炭化チタンより更に硬い。

 その代わりダイヤモンドみたいに衝撃に弱いので、合金にすることで、硬度と靭性を兼ね備えさせているらしい。


 六炭化ホウ素は、ダイヤモンドより硬いというロンズデーライトと同じ構造になっている炭素に、ホウ素を加えた物。


 さて、チタンの材料を採掘に行こう。前にアリスに教えてもらった場所で採掘ーというか、チタンの雨が降ってくるので硬いお皿を置いてるだけでモリモリ溜まった。

 さらに以前アリスに教えてもらった、ダイヤモンドで出来た惑星にGo。


「真っ黒な星だ」


 カットされたダイヤモンドみたいにキラキラ輝く惑星なのかと思っていたら、真っ黒の惑星でした。


 暗い宇宙だと、見えにくい見えにくい。黒い惑星の衛星軌道に惑星を覆う檻のように張り巡らされた巨大構造物が見えたので、それでなんとか遠くからでも目視できる感じ。


 あの星はかつて恒星だったらしい。あの元・恒星のエネルギーをダイソン球でチューチューしたところ、温度が足りなくなって炭素の核融合ができなくなって白色矮星になったんだとか。


 白色矮星になった後も重力収縮のエネルギーを吸っていたら、とうとう冷え切ってあんな事に。


「フェアリーさん、あの黒い地表ってもしかしてグラファイト?」

『マイマスターあの惑星の表面の主な主成分は、グラファイトや無定形炭素です』


 無定形炭素は鉛筆の芯にも使われる材料。グラファイトは確か、ダイヤモンドになりきれなかったダイヤモンドみたいな奴。

 こっちも、凄くいい鉛筆の芯に使われたりもする。


「なんかほんと、真っ黒な星だなあ。――じゃあ大気圏突入をお願い」

『大気密度が高いため、速度を遅くしながら降下します。時間がかかるかも知れません』

「なるほど。でっかくて高密度な星だし、重力が強くて大気が圧縮されてるんだね。りょ」

『はい、あの惑星の大きさは木星程度ですが、密度が非常に高いので重力も強いです』


 元・白色矮星だもんね。


「う、これ・・・Gが重力制御装置でも抑えきれてない?」

『この惑星の重力は、おおよそ50Gになります。当機の高性能な重力制御装置でも3.3G程までにしか抑えられません』

「ヤバイね、外出たらペシャンコだね」


 これ、もし戦闘になったら動きづらいだろうなあ。


『絶対に出ないで下さい、重力もですが、表面温度もまだ3000度を超えています』


 そんな場所に出たら、涼姫のペシャンコバーベキューができちゃう・・・。


「これバーサスフレームは飛べるの? 惑星の重力から脱出できる?」

『どちらも可能です』

「良かった」


 私は「ホッ」と胸をなでおろした。まあ、沢山のプレイヤーが訪れてるんだから大丈夫に決まってるか。


 大気圏を抜けて降りていく。空が赤い。

 ――この大気、ほぼ二酸化炭素らしい。

 窒素はあんまりない。

 窒素は恒星が核融合する際にすぐに酸素に変わってしまうんだとか。


 二酸化炭素と酸素だらけとか、人間に優しくない惑星である。


 地上が見えてきたんだけど、炭素が砂とか粉みたいになって黒い砂漠のような物を形成してる。

 遠くを見れば、黒い嵐。雲はあまりないけど、空が赤いし――赤と黒の世界でなんだか禍々しい。


 私は、空気を取り込むタイプのエンジンからロケットエンジンに切り替える。

 こんな場所をジェットエンジンで飛んだら、絶対粉塵でメンテナンスが大変になる。


 メンテナンスは無料だけど、整備士さんを無駄に泣かせる必要はない。


「フェアリーさん、第一採掘場へ飛んで」

『イエス、マイマスター』


 どこでも適当に掘ればダイヤモンドがでてくるんじゃないかって思ってたんだけど、そんな事はなくて。アリス曰く「適当に掘ったら、ダイヤモンドはなかなか手に入らないんですよ」って。

 この惑星でも、そこそこ大地の深い場所でダイヤモンドは生成されるので、それほど簡単に採掘できない。

 ただ、地球に比べたら全然地表付近にもあるし、埋蔵量が段違いらしいので、採掘場はたくさんある。


 アリスに教えてもらった通り、プレイヤーがよく採掘している一番大きな第一採掘場に行ってみる。


 すり鉢状の採掘場が見えてきた。何人かのプレイヤーが採掘してるみたいだ。


 深い部分が白くなっている。

 あれがダイヤモンドだろうか。


 底の方へ行くと、流石にちょっとキラキラしてた。光があんまり届かないので、それほど反射していないけれど。


 ライトを付けてみよう。


「うおっ、まぶしっ!」

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