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416 新型機を考えます

   ◆◇◆◇◆



 66層が何事もないらしいので、その日私は、アテナとの戦闘があった宙域でやるケイドロ配信をしていた。

 ――ケイドロとは、昔、子どもがよくやっていた遊びで、鬼ごっこの一種。助け鬼とも呼ばれる遊びである。


 追いかけ回すだけではなく、捕まえられた人は牢に入れられる。

 今回は音子さんの地元のローカルルールで、逃げる側の仲間が牢の前の缶を蹴れば、捕まっていた人は全員逃げられる。つまり缶蹴りが混ざった感じ。

 鬼は缶を元の場所に戻すまで逃げる人を追いかけられないという、高度なテクニックと駆け引きが要求される、複雑なゲームに仕上がっている。


 このアテナ戦場跡地、近くにワープ港もあるしデブリだらけだし、かくれんぼとかに最適なんだよね。

 よく、ここでかくれんぼしてるプレイヤーがいるんだ。


 私も今日は音子さんたちに誘われて、ケイドロ配信とあいなりました。

 ちなみにスキル使用と空気噴射で移動するのは、今回は緊急時以外無し。


 アリスがエリア中央に設置された缶々を蹴る。すると物凄い速さで減速無しで飛んでいく缶々。

 一応あまり遠くまでいかないように、缶を鎖で繋いであるけど、警察役の音子さん涙目。


「アリス、アンタ(じぶん)思いっきり蹴りすぎやぁぁぁ!!」


 鎖で繋いでるって言っても、100メートルくらいは鎖の長さがあるからね。よく飛ぶ。


❝音子大慌てで草❞

❝缶が一瞬でみえなくなったワロw❞

❝アリ氏の脚力凄すぎだろwww❞

❝おっそろしい加速掛けて、缶に突っ込んできたからなwww❞


 少々勢い付けて人間同士で衝突しても、超科学の超防御なパイロットスーツがあるから大丈夫。


 檻の中に居た私とリッカ、さくらくん、オックスさんが、アリスに救い出された。

 私達は檻から出て、大急ぎで逃げながら伸びをする。


「シャバだー!」

「シャバの空気は旨いぜー!」


 綺怜くんは「空気が旨い」と言うけれど、酸素タンクから供給されてる空気だから、なんも変わらんのです。


 叫びながら、私達はワラワラ散り散りに逃げていく。


 ゲーム終了時に鬼だった人は終辛ヤキソバを食べる配信をするという刑が待っているんで、負けたら大変。


 負けられない戦いがここにある。


 私は「たとえシャバ僧と言われても、やはりシャバがいい」と思いながら、そらこら中に浮いているデブリを蹴って跳んで、音子さんから逃げていた。

 すると、いきなり目の前に大きなウィンドウが開いた。


 この開き方は・・・・。

 フェネックの垂れ耳に幼い顔。

 アイビー・アドミラー提督だった。

 ほんと、この人は・・・・。


『スウさん』


 私は、ウィンドウを小さくして視界を確保。


「どうしたんですか?」

『4章開放プレゼントが決まりました』


 えっ!? ――若干怖い。


「ま・・・また地球の命運を握るようなプレゼントは要りませんからね!?」

『あ、違います。――今度スウさん専用の16世代の試作用、新型機を作ることになりまして。なにか要望はないですか?』


 よ、良かった今回はマトモそうだ。


「新型のアイデアですか?」

『なにか欲しい機能でも良いですよ!』


❝うわっ、とうとう専用機きたかぁ。羨ましいけどスウなら納得するしかない❞

❝なんかスウ、アイデア求められてるしw❞


 私は近くに浮いていた、ロブのワンルームに隠れてアイビーさんに欲しい物を告げる。

 この前みた命理ちゃんの武装カッコ良かったなぁ。

 ああいうのが欲しい。


「じゃあ、ロケット・パ――」『それ要りますか? 必要なら付けますが、ほんっとーに、要りますか?』

「すみません・・・要りません」


 でもなぁ、フェアリーさんの性能には文句ないんだよなぁ。


「なんか必殺技が欲しいです」

『有るじゃないですか、アイアン・ノヴァ』

「あんな危ないものは、使えません」

『でも、カッコいい必殺技って危険な物では?』

「それはそう」


 サブカルでアイビーさんに言い負かされた。


「もっとこう気軽に使える、ドリルとか、杭打ち機とか」

『ドリルにパイルドライバーですか――なんだか工事現場みたいな武器ばかりですね――じゃあショベルカーでも付けますか?』

「ショベルカーで、どうやって戦うんですか」

『それはそう』

「視聴者さん、なにかアイデアはないですか?」


❝ロードローラーでも付けたら?❞


「だからどうやって戦うんですか」


❝時間を止めて、上から落とす❞


「時間が止められません。――いいアイデアないですかねぇ。命理ちゃんの〈パイルフィンガー〉も良いんですが、あれだとドローンを入れる場所が無くなっちゃうんですよね」


 最悪〈時空倉庫の鍵・大〉に入ってもらっても良いんだけど。


❝じゃあ、あれは? アスタコの腕みたいなので握りしめて、ベキベキベキーと❞


 私はアスタコというのを調べてみる。

 おお、ザリガニみたいな腕で握って物を運べる重機みたいだ。

 というかこれロボみたい。――地球に既に搭乗型大型ロボが存在していた・・・だと?

 アスタコに似てるこの「四脚式クロウラー双腕コンセプトマシン」とか、もう本当に搭乗型巨大ロボじゃん!


「これ良いですね! 腕部に追加で爪を取り付けて、握りしめて、炸薬の力で ドンドンドン と爆発させて握り締めていく」

『〈アイアンクロー〉ですか』

「いや、名前がまんますぎますね」

『スウさんに、名前がまんまとか言われました』

「どういう意味ですか。名前、名前――〈デストロイ・フィンガー〉とか」


❝悪くはないけど、もうちょい欲しいなぁ❞

❝〈だいしゅきほーるど〉❞

❝そんな殺意の高いだいしゅきホールド嫌すぎる❞

❝モデレイター(アリス):〈握りしめテイル〉とかどうでしょう❞


「アリスは、ちょっと黙ろう」


❝モデレイター(アリス):酷いですスウさん❞


 アイビーさんが小さなウィンドウのなかで、可愛く唇に指を当てる。


『励起機能でも付けて、〈励起クロー〉とかどうでしょう』

「それだとハクセンの機体の爪と名前が被りますね――〈終炎(しゅうえん)のラスト〉とかどうでしょう」


❝マジなのかギャグなのか❞

❝厨二病すら霞むネーミングセンスの無さ❞


「じゃあ〈終炎(しゅうえん)のエンド〉。エンで韻を踏んで――」

『試作機ですし〈終炎・試作型〉でいいですね』

「なんでエンドを取るんですか!? 韻という私の高度なテクニックは!?」


❝ネーミングセンス、本当に終わってるなぁ❞


 まあ、試作型が名前についてると、ワクワクしちゃうタイプなんでいいけど。


❝終炎プロトタイプ・・・・始まりなのか、終わりなのか❞


『超臨界・励起機能を付けましょう』


 しれっとエンジンがとまる仕様にする、鬼畜ロリ。


『あとは飛行形態用に、〈超臨界・励起翼〉もつけて、と。他にはなにかありますか?』


 しれっとエンジンがとまる武器を増やす、鬼畜ロリ。


「あとは宇宙用の弾丸ですね」

『宇宙用の弾丸?』

「はい、宇宙では空気抵抗がないじゃないですか」

『ですね』

「それだと、先端が尖った流線型の弾丸は必要なくないですか? そして先端が平らな弾丸の方が、相手に大きな破壊を与えられる事がある」


 ホローポイント弾みたいなのとか。


『ああ・・・確かに――なぜそんな簡単な事に誰も気づかなかったのでしょう・・・? いえ・・・昔は有ったのかもしれませんね。我々は文明を取り戻し始めて100年ほどなので――一番長生きなクナウティア様も何度か破壊され、3代目ですし』

「連合の弾丸は人間に撃つわけじゃないので、ホローポイント弾みたいなのも多いですが、宇宙ならもっと先端が平らでも問題ないと思うんですよね。あと加速さえできれば、重力がないので重量も気にしなくていい訳で」

『なるほど―――分かりました。そういった弾丸も開発しましょう』

「お願いします!」


❝確かに先端が真っ平らでも、宇宙空間では問題ないな❞

❝弾丸の重さも、加速さえできればどんなに重くても偏差とか発生しないもんなあ。そして連合には光崩壊炉があるから滅茶苦茶加速できるかも❞

❝モデレイター(アリス):スウさん・・・・まさかの威力不足だった実弾兵器まで強化してしまうなんて❞

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 弾丸ですか…ホローポイント(ソフトポイント)弾は確かに強力ですね。 地球では禁止されてるダムダム弾も、銀河連合なら効率の良い弾丸に仕上げてくれるかもしれないですね…相手に毒になる…
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