412 アーマードミオと戦います
――というわけで、私は1000人くらいいた人垣を抜けて、一人でポツポツと歩いていく。
また、すり鉢状のフロアだ。防衛し易いのかな、この形。
私は「ずざぁ」っと一筋の土埃を上げながら、すり鉢を滑り降りていく。
すり鉢の上から、2000個以上の瞳が見詰めている。怖い。
アーマードミオはすり鉢の中央で、静かに立っていた。目をつむっている。
私がアーマードミオから半径10メートル付近まで近づくと、ヤツの目が開いた。
アーマードミオの背中のロケットが噴射されて、コッチに迫ってくる。
いきなり来たなあ。
これ、遠くから攻撃したら反撃無かったのかな? んなわけないか、みんなの攻略が停止したんだし、試した人は当然いるだろう。
私は、〖超怪力〗〖怪力〗〖念動力〗で相手を押し止める。
今回は敵が一匹なので、アーマードミオに〖テレパシー〗で〝叫ぶ〟。
あ、さすがドミオ――耐えた。
アーマードミオが私に右腕を向ける。腕がガトリングになっている。
私は魔術を発動。ガトリングの銃口を、鉄で埋めた。
銃内部で発生したガスがガトリングの内部機関を破壊して、弾丸が飛ばない。
弾丸が飛ばないまま次の弾丸も爆発して、とうとう銃身が変形したようだ。
もうあのカトリングは使えない。
「そろそろ良いかな、【仲――」
アーマードミオの腹が開いた。――あれは、レーザー!
私に向かって飛んできたレーザーが爆発して、土埃を挙げる。
すり鉢の上が騒がしくなった。
「おいおい、今のレーザーだぞ――パイロットスーツで防ぎ切れるのか? ――スウって子、大丈夫か!?」
あー、大丈夫大丈夫。
土埃が消えると、すり鉢の上がまた騒がしくなる。
「なんだあれ、――黒い・・・触手?」
「・・・あれ、黒体らしいぞ」
「まじかよ・・・・スウって、黒体出すスキルまでもってんのかよ」
雪花が有るから、レーザー食らっても大丈夫だろうけど、一応〖触手〗で自分を覆っておいた。
とりあえずアーマードミオを取り出したショットガンのヴァンダルでボコボコにして、
「よし、頭が吹き飛んだ。――再生される前に、〖仲間〗!」
ん・・・光らないな――そういえば対象が強過ぎる場合〖仲間〗にならないんだっけか。
「んじゃぁ、倒すしか無いか」
ただ、私はレーザーとか大丈夫だけど、今から呼ぼうとしている私の〖仲間〗のタイニー・ヒドラにはキツイ。
私はアーマードミオに近づきながらショットガンのヴァンダルで、奴の胴体を連射。レーザーを発射するガラスみたいな部分を破壊した。
レーザーは当てやすくて強力だけど、武器自体が脆いのが弱点だね。
「よし、今度こそ――〖仲間〗!」
私がスキルを使うと、ゲートが空中に浮かんで、そこからタイニー・ヒドラが降りてくる。
すり鉢の上の人達が、指さしてる。
「おいおいおいおい、ヒドラじゃね!?」
私はアーマードミオを撃ちまくり、〖仲間〗にしておいているタイニー・ヒドラに止めを刺させた。
よし、アーマードミオが砕け散った。
『アーマード・ドミナント・オーガを倒しました。連合クレジット150万、勲功ポイント300万手を手に入れました』
初めてドミナント・オーガ倒した時みたいな量の報酬が入ってきた。
「すっげぇ、あっという間だよ」
「誰も倒せないドミオで、しかも強化版があんなにあっさり」
❝塩ラーメンよりあっさりだぜ❞
❝こってり濃厚豚骨スウプも飲んでみたいなあ❞
❝まだ中層だから無理だろ❞
❝いいから誰か、スウプに突っ込め❞
❝そういえば、まだ中層なんですね――でも外の戦いの様子も激しかったし、ドミナント・オーガとか出てくるし、中層でも結構大変なんですね。下層はどうなっちゃうんだろう❞
❝下層は油断すると死ぬで、普通に。いやどこでも死ぬけど、下層はガチの上澄みプレイヤーしか行けない❞
❝・・・・まじですか❞
❝流石に同じ中層でも26層でドミオがでてきたりはしないけど。一番最短で出てくるのが30層だし。ドミオは元々、下層のMoBなんだけど。それがとうとう、中層で出てきだしてる訳だ❞
❝2層のリゾート惑星で出てきたけどな❞
❝あれは特殊❞
「おわったよー」
私がみんなの所に戻ると、アリスが、なんか用意していたらしいタオルをくれた。
なにこれ甲斐甲斐しい。
私はヘッドギアを取って、一応汗を拭くフリをする。うん汗一つかいてないよ。
「スウさんにはもう、ドミオは敵じゃないですねー」
「んだねぇ。タオルありがと」
「いえいえ」
❝いい値で買おう❞
❝ごくごく❞
「コメント黙れ」
❝スゥ・イエッスゥ❞
❝タオル、ハー スウ ハー スウ❞
「マジで黙れ」
「うおっ、スウもうこんな場所まで来てたんか! でも追い付いたで!」
「あ、音子さん」
音子さんたち、クラン・ストリーマーズの人達が追い付いてきたみたい。
音子さんが、周りの人だかりを見回して首を傾げる。
「ん、なんかあったん?」
答えたのは、リッカ。
「今スウがアーマードミオをぶっ飛ばしたトコだぞー」
「アーマードミオ?」
音子さんの疑問に、リッカが元気よく答える。
「サイボーグのドミナント・オーガだぞ」
「なにそれ、こわい」
音子さんが呆然としたあと、体を抱いて身震いした。
・・・音子さんはドミオに吊り上げられたり、殺されかけたりしたし、ガチのトラウマMoBだろうしなあ。
その後も「ホンマに倒したんやな? 絶対やな? もうおらへんねんな?」と念を押した後、背中の銃を触って唸った。
「にしても洞窟やと、アサルトライフル使いにくくてあかんな・・・もっと短いの持ってくればよかったわ」
「あー、じゃあ、」
言って私は倉庫の中からハウスキーパーと、リガルドと、ブレビス2丁を取り出す。後方機関式と、マシンガン。全長の短い銃達
「どれか使いますか?」
この子たちは狭い場所や、近い距離で力を発揮する。
私が4丁を並べると、音子さんが眼を ぱちくり させた。
「なんか、スウっていっぱい銃持ってるねんなあ・・・(笑)」
引き気味の声色に、私はちょっと怯える。
「えっ、変ですか?」
「うーん・・・・」
音子さんはちょっと考えて、結論を述べる。
「・・・・変やな(笑)」
「・・・へ、変ですか」
「変やな(笑)――まあ、そういう所がウチは好きなんやけど」
「えっ」




