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410 巨大小惑星のアジトに乗り込みます。(大なのか小なのか)

(・・・・なるほど、そういう作戦だったのか)


「どっちが先にたどり着けるか、勝負しーひんか?」


 音子さんが言うと、ヒナさんがため息を吐いた。


「また無茶を、スウたちに勝てるわけ無いじゃん」


 でもMoBと戦うのに競争は怖いかもなあ。相手は人じゃない、こっちを本当に殺しに来る。


「えっと、危ないことはしませんよ?」

「そらそうや、命あっての物種やからな。負けたほうが『終辛やきそば』を食べるでどーや?」


 噂の終辛かあ。食べたこと無いんだよね。

 私が迷っていると、リッカが食いついた。


「それいいな! やろう!」

「おっ、流石リッカ。やる気やな!」

「まけないぞ!」

「ウチらも負けへんでー! スウにアリスに命理に、あと――そうそうティタティーって人も覚悟しいや!」


 なんか勝手に決まってしまった。


 音子さんの後ろで音子さんのクラメンが青ざめている人がいるのは、終辛経験者だろうか?


 ヒナさんが「あんた、なに馬鹿な勝負初めてんのよ!!」って叫びながら、音子さんのお尻を蹴っている。

 重力が弱いのでほとんど威力がないし、音子さんがふわ~と浮いただけだし、蹴った方のヒナさんまでふわ~っと反対側に飛んでいってるけど。


 アリスが、無重力の中を とーん とーん と飛んできて、私にひそひそと話しかけてくる。


「スウさんスウさん。終辛は結構ヤバイですよ」

「えっ!? そんなにヤバイの?」

「以前スウさんが〖味変化〗を自分に使って、辛さで悶えたじゃないですか。わたしは興味本位で食べた時、あんな感じに悶えました」


 私は〖味変化〗の実験時、口内に火が放り込まれたと思って、地面を転げ回ったんだけど。


「えっ、あれ相当だよ!?」

「・・・リッカは、終辛食べたことあって勝負を受けたんでしょうか?」


 私はリッカに尋ねてみる。


「リッカって終辛食べたこと有るの?」

「ないぞ?」

「だ、だよねー?」


❝草❞

❝アレ、ガチでヤバイからなワロwww❞

❝舌をライターで炙られるような感覚だぞw❞


 舌を炙られる!?

 これは・・・ちょっと、負けるわけには行かないな。


 ティタティーとか、そんな辛いもの食べさせたらトラウマになりそうだし。


 というわけで競争が始まった。


 微弱な重力の中、横向きのアリの巣のようになった洞窟を、沢山のプレイヤーたちが駆けていく。というか無重力に近い中を、ほとんど飛んでいく。

 しかし、分かれ道が沢山あるので、どれが最奥に繋がっているかは運次第だ。


 私達は、音子さん達とは別のルートを選択した。


「ほな、頑張るんやでー。最奥で会おうや」

「そっちも頑張ってくださーい」


 という感じでアリの巣を進む私達5人の前に、まず現れたのはコボルトだった。


 相手にならなかった。


 次に現れたのはゴブリンだった。


 一瞬で全部、蜂の巣になった。


 次に現れたのはオークだった。


 全て、瞬く間に砕けて消えた。


「楽ちんですね」

「敵が3層から6層に出てくる奴らなんでしょ? 流石に弱いね」

「でかでかダンジョンの時のヤバさに比べたら、歯ごたえがなさ過ぎるなー」


 リッカとアリスと会話しながら、3枚目の隔壁を抜けたところで、ふと気づく。


「あれ? そういえば重力が、いつのまにか強くなってる」


 VRに表示してみれば地球と同じ1Gになっている。


 VR に映る数値を見れば、酸素もある。


「本当ですね。酸素も有るみたいですし」

「重力制御装置が働いてる区画なのかもなー」


 という感じでどんどん進んでいけば、かなり広めのホールに出た。

 なんというか、すり鉢状になっている地形で。

 私は呟く。


「嫌な感じのする地形だなあ」


 すり鉢の上の方には段差があって、その奥に沢山の穴があいている。

 これ、完全に囲まれる形だ。

 さっさと通り抜けようと走ると、すり鉢の正面の穴からゴブリンが現れた。

 ――人質を連れている。女性のアニマノイドさんだ・・・・服とかボロボロ。

 アニマドイドさんの猫耳が、恐怖でイカ耳みたいになって垂れて、震えている。

 人質にアニマノイドさんを選ぶのとか。


「・・・さすがゴブリン、やることが汚い」


 さらに、すり鉢の上に現れる無数のゴブリン、コボルト、オーク。300匹はいる。

 全部、銃を構えている。

 結構ピンチかも知れない。

 私達は5人で背中を合わせ、油断なく敵を睨んだ。


「スウさん、ちょっと不味くないですか?」

「うん、でも――」


 人質を連れたゴブリンが、こちらに銃を捨てろというジェスチャーをしてくる。

 ゴブリンがジェスチャーをしてから、アニマノイドさんのこめかみにイモムシを想起させるデザインの銃を突きつけた。


「スウ、どうする?」


 リッカが敵を睨みながら、尋ねてきた。私は答える。


「みんな一旦銃を捨てて、合図をしたら一斉に攻撃」

「考えがあるんだな? ――分かった」


 私達は銃を投げ捨て――るとみせかけて〖念動力〗で、宙に浮かんだカービン・ピストル・ニューゲームの引き金を引いて、人質を連れたゴブリンの眉間を貫く。

 すると周りのゴブリンが人質を撃とうとしだした。

 だからみんなに警告。


「みんな、ビックリしないでね!」


 周りのMoBが一斉に銃を人質に向ける――前に、私は〖テレパシー〗で周囲に向かって思いっきり〝叫んだ〟。


 精神に直接声を送るスキルの〝大絶叫〟を食らって、周りのMoBたちが、立ち眩みでもしたかのように、朦朧(もうろう)とする。

 昏倒(こんとう)する奴もいた。


「反撃開始!!」


 私の声に反応できたのは、命理ちゃんだけだった。

 他のみんなは、私の叫びで朦朧としてしまっているようだ。

 私は命理ちゃんと共に、MoBたちを殲滅していく。


 ――の前に、先ずは人質にされていたアニマノイドさんを〖念動力〗で、こっちへ引き寄せた。

 あ、昏倒してる――ご、ごめんね。

 コメントには私の叫びは聴こえてないので、事態が分からなくて混乱している。


❝スウ、今なにしたの?❞

❝わからない。なんかスウさんが無音で叫ぶような姿勢になったら、周りがフラフラしたり倒れたりしたけども・・・?❞


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