409 口をすべらせま・・・せん
タタセさんは何をいってるんだろう。
とりあえず、相手側にウィンドウ開いて無くてよかった。
今の私はおそらく、相当混乱した顔をしているはずだもん。
『一見は自由に動いているように見えるのに、連合との完璧な連携が素晴らしい! 作戦を完璧以上に理解してらっしゃる』
(作戦を全然訊いてないから、理解しようもないんだけど)
でもとりあえず、否定するのも怖いから『乗るしかない、このビッグウェーブに』。
「は、はい! 皆さんの通り道はお任せ下さい!」
❝なんか滅茶苦茶感謝されてて草www❞
私が若干慌てながら返すと、リッカのジト目が返ってくる。
『悪い子がいるー。タタセ少佐、この人なにも――』
「リッカも訊いてなかったでしょぉ!?」
すると、タタセさんが首をかしげた。
『訊いてなかった?』
「いえっ、なんでもないです!」
リッカも、流石にもう何も言わなかった。
そうこうしている間に、突入口の砲台は全部片付いた。
「よし、突入口確保。あとは戻りながら砲台を潰していこうかな」
私達が引き返し始めると、通信が入った。
『スウ連れてきたわ』
「あ、命理ちゃん!」
『スウ、久しぶり』
「ティタティー!」
今回は生身メインになるという事で、ティタティーにも来てもらった。
命理ちゃんも生身が強いので、凄く助かる。
私達が命理ちゃんや、ティタティーと合流する。
ティタティーも彼が買った機体に乗ってきている。
私達は命理ちゃんがフェアリーテイルの上に乗って、4人合体だ。
さらにティタティーも組み付いて、5人合体。
4機プラス一人のロケットエンジンで加速力も凄いことになった。
まあ、全員が全力で噴かしたら重力制御装置があっても中の人がぺしゃんこになりかねないんでやらないけども。
でも、3択ブーストが節約できてピンチの時は誰かが盾張ったり加速したりできる。
「やっぱパーティーは強いねえ。ピンチの時は3択ブーストでカバーしあえるから」
『え――ピンチ? あったか?』
『―――いえ、一回もブースト掛けてません。というかスウさんが全部避けるんで、バリアすら張ってません』
「ま、まあ・・・そうなんだけど。ティタティーの機体って、初めて見るね」
全体が黒っぽい、とんがり帽子にマントをつけた魔法使いっぽい機体だった。
変形機構は――昔戦った、プラモデルのメイガスみたいな感じかな?
ロケットになって緊急回避、みたいな使い方をするんだろうか。
「確か魔術のブースト効果があるんだっけ?」
『うん。魔術量子を大量に散布してくれて、感応も拡大してくれるから、魔術が大型かつ強力になる。【アイスランス】』
「ティタティーが、すでに超科学をだいぶ理解してる件」
この子、この前まで中世ヨーロッパみたいな世界にいたんだよね?
私がティタティーの理解力に若干震えると、彼はこともなげに返す。
『ボクの経験と、連合にある本当の魔術の知識をすり合わせることで、さらに魔術への造詣が深まった。スウが連れてきてくれたお陰、本当に嬉しい』
「い、いや、私の手伝いしてもらうために連れてきたわけで」
私が言っている間にティタティーが魔術を使うと、彼の機体から超大型の氷の槍が放たれ、敵機を穿った。
相変わらずとんでもない魔術の腕である。
しかもティタティーは沢山の魔術を知っているし、多重詠唱も可能だから、無数の武器を同時に持っているようなものなので。
とんでもない数の敵を一斉に相手していく。
MoB海賊が作り出す、歪な形の敵機が次々と宇宙の塵に変えられていった。
やがて、特殊部隊が突入口に入っていく。優秀なプレイヤーや、地球でも軍人やってるプレイヤーと銀河連合の混成部隊らしい。頼もしい。
――地球側の特殊部隊には、立花家と縁のある忍者の末裔も居るんだとか。怖い。
地球の軍人と銀河連合軍人の連携は観てみたかったし、それについていける優秀なプレイヤーっていう人達にも興味は有って、特別権限使えば着いていけるけど、流石に特殊任務事態についていける気がしないので、一緒に行こうなんてことはしない。
私達は彼らを見送った後も、基地の周りの砲台や敵機を潰して、一般のプレイヤーと一緒に敵の港に突入した。
小惑星に開いた、長方形の形をした港に入る。
四角くて機械的なトンネルを暫く行くと、明かりが見えてきた。
『マイマスター、ここから先は生身でないと入れません。駐機して入って下さい』
「はーい」
港といっても海などがあるわけではなく、機械に覆われている。
見上げるような鉄骨の塔が乱立していたり、4メートルは有りそうなコンテナがそこらに配置されている。無重力だからって散乱しないで、鎮座してる。
私は、周囲の地球では見られない光景を眺めながら、フェアリーさんから降りた。
うへ、重力が小さいなあ――VRにGを表示してみると、地球の1/10程度だった。
さらに周りを見れば、広い港に沢山のプレイヤーがバーサスフレームから降りてくるのが視えた。
結構な数のプレイヤーが私達の到着前にすでに駐機してるし、なんなら基地の奥に突入していくプレイヤーも見て取れた。
アリスたちも、思い思いの銃を持って自機から降りてきた。
私はカービン状態のニューゲーム。
アリスは、ハウスキーパー。と、蛍丸。
リッカは、ジェネラルP16を両手持ち。と、小太刀。
命理ちゃんは、内蔵の武器があるから素手。
ティタティーは、杖。
あれ? でも実弾系の銃とか低重力で使っていいのかな?
まあ全員ダンジョン攻略者なので、視線を交わすだけで、意図が共有されたかのように頷ける。
本当にダンジョンはヤバかったからねぇ。
視線で準備万端かを確認していると、声がかかった。
「おー! スウたち、やっとんねえ」
「あ、音子さんも来てたんですね」
「せやでー!」
音子さんだ。クニトモ21を持ってる。
アサルトライフルかぁ。これから行く場所は結構狭いみたいだけど、大丈夫かな。
あと、こんなに重力弱いのに。
❝音子さんだ! 突発コラボ来る?❞
コメントも嬉しそう。
うちの視聴者には、音子さん人気なんだよね。面白いから。
「あ、スウじゃん!」
「スウさんお久しぶりです!!」
「スウさんだ!!」
ヒナさんに、からあげレモンくんに、ダンくんもやって来た。
更に後ろからタンク先生や、エンタートラブルさん、杏桃ナイトさんも来てる。
にしても、他のみなさんも普通に実弾銃を持ってる。
「あの、音子さん」
「なんや?」
「みなさん炸薬系の銃を持ってますが、大丈夫なんですか?」
「ん? 奥の方は重力があるって作戦で言ってたやないか」
「あっ! そうでしたね!」
「んー? もしかして」
ま、不味い作戦聞いてなかったのがバレ・・・、
「ウチの事心配してくれたんやな! 確かに途中までは低重力やもんな! 吹っ飛びかねんもんな! スウは優しいなぁ。気ぃつけるわ!」
「え、えっと――はい、気をつけて下さい!」
ここで音子さんが、急に不敵な笑みになった。
「さて、今回の作戦は、最奥にいるトロールキングを倒す。やろ?」
「そうなん――そうですね」
危ない。「そうなんですか?」とか言いそうになった。




