407 作戦を聴きそびれます
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『集まってくださったプレイヤーの皆様、大尉から少佐になりまして、今回初めて中層で指揮を取らせていただくことになりましたタタセ・アルジェントです!』
「おータタセさん階級上がったのかあ」
❝スウたんが鍛えたお陰だな❞
❝ワシが育てた❞
「というか、訓練した時は配信してないのに、なんでみんな知ってんの」
❝本人が、他の人の配信にちらっと映った時『スウさんに指導を受けた』って言ってた❞
「・・・まじか」
私が部屋で一人の時に出るような、素の低い声になっていると、ちょっぴり懐かしい声がした。
「あら、スウちゃ~ん」
この声は、
「タマさん!」
おねぇ系な男性、タマさんの声だった。
「俺もいるぜー」
「私もいるわよー」
「エレハントさん、レナさん!」
❝おお、この間の3人❞
「誰だー?」
「どなたですか?」
3人を知らないリッカとアリスが、私に尋ねてきた。
アリスがまた変な勘違いしたらどうしようとか若干不安だったけど、そりゃ毎回おかしな事にはならないよね。
アリスは友達多いんだし、そこまで気にならないよね。
「この間デブリ掃除した時、出会ったの。リッカはめんどくさい、アリスは撮影って帰った時」
「なるほどー」
「あー、あの時ですか」
「でも、みなさん『中層には来れない』みたいに言ってたのに、来たんですね」
『実はバーサスフレームの機体とか、改造が安くなったの。それで奮発してみたのよねぇ。そしたら中層でもやっていけそうって3人でなったの』
「なるほどです」
私が納得すると、アリスが思い出したように言った。
『あー、スウさんが連合に割引させたあれですか』
「別に、私はさせてないよ」
あれはユタさんが前から計画してたらしいし。
言うと、御三方が不意打ちでも受けたみたいな声を出した。
『え、これスウちゃんが割引させたの!?』
『あー、まじか。でもそうか、割引させた人物がいるって噂があったけど、あれってスウの事かあ』
『――なるほど、そういう裏事情があったの』
勘違いしてるみたいなので、訂正しておく。
「いや、本当に私は何もしてないですよ。向こうが勝手にしただけですよ」
私が訂正したのに、アリスはそうじゃないと指摘してくる。
『でもクナウティアさんがスウさん推しだからって、ユタさん言ってましたよ?』
あれ? じゃあ私がやらせたのか。
『やっぱりかよ。――お陰で新しく買ったロブ・カスタム、いい感じだぜ。スウ、ありがとな。安くなってたから、前のやつを下取りしてもらって、なんとか買えたぜ。コイツで勲功ポイントを貯めて、もうすぐリリースされるらしい高性能機に備えるぜ』
エレハントさんの納得の声。
ロブ・カスタムかあ。見た目はノーマルとあんまり変わらないんだね
――で、リッカはまた要らないことを言い出す。
『そうそう、スウが銀河連合を脅して恐喝したやつ』
「人聞き悪いよ!? ――皆さん、私は脅してないですからね!?」
あと、レナさんもなかなか要らないことを言い出す。
『流石は連合に、銀河の妖精って呼ばれてるだけ有るわ』
すると、リッカが直ぐに反応した。
『え、スウ、銀河の妖精とか呼ばれちゃってるの(笑)?』
「リッカ、半笑い声やめよう。私だって望んでないんだから!」
『でもフェアリーとか、妖精とか(笑)』
「あー、笑うんだ。――分かった。じゃあもう、無料補給権更新してあげない。私が銀河連合から良く思われてるから無料補給権とかゲットできるチャンスできたのに、そこを笑うならもう無料補給権買ってあげない」
リッカは万年勲功ポイント不足なので、勲功ポイントが余ってる私が無料補給権を買ってあげる事になってたんだけど、もう知らない。
ちなみ無料補給権はカード式で、受け渡しができた。
『えっ、それは困る!! ほ、ほらスウは可愛いから、妖精とか呼びたくなるんだって!!』
「女 の 可 愛 い は 信 用 で き な い」
私はいつも通り、目を剥いて反論しておいた。
『アリス、助けて! スウがボッチをこじらせてる!』
『これはリッカが悪いので知りません。わたしはスウさんのかわいい妖精姿が大好きですから、それを笑ったんで、許しません』
私の妖精姿が大好きな人は、大好きな人で、絶妙に困るんだけども。
リッカが何回も謝ってくるので、3回目で折れてあげた。
ずっと謝られても困るし。
『ちょろい』
「このチビ・・・」
とか私達がじゃれ合っていると、タタセさんの作戦説明が終わった。
(やばい、まるで訊いていなかった)
「ねえ、みんな・・・作戦訊いてた?」
『き、訊いてない』
『まずいですね。わたしも訊けませんでした』
リッカとアリスが、首を振ったので、私は二人に向かって頷く。
「よ、よし、私達は特別権限ストライダーの小隊として遊撃をしよう!」
『そ、それだ! わたしは今からスウの小隊に入隊したぞ!』
『それでいきましょう! わたしも今からスウさんの小隊員です!』
するとエレハントさんたちが焦る。
『あ、スウたちだけズルイ! 俺等も聴きそびれたのに!』
『あたし達も小隊に入れてとお願いしたいけど、あの3人についていけないわ~』
『私等は私等でなんとかするしか無いかぁ・・・』
というわけで海賊たちとの戦いが始まった。
『プレイヤーの皆さん、特殊部隊の進入路を確保してください!』
タタセさんの司令が、通信に響き渡る。
「なるほど、まずは特殊部隊を侵入させるんだね。イルさん。特殊部隊の侵入場所ってどこ?」
『小惑星のこの辺りです』
ウィンドウを開いて、3Dマップにカメムシみたいな形の小惑星を映し、カメムシの左脇腹辺りを示すフェアリーさん。
「ありがと、アリス、リッカ――腹側に回るよ」
『おっけ』
『はい!』
それはそれは巨大な小惑星だから、簡単には回り込めないけど、そこは宇宙。
どんどん加速して行けば、カメムシの背中からそこそこの時間で腹まで回り込める。
ただ途中、激しい砲撃に曝された。
『砲撃が激しくて、躱しきれません!』
『こんなの躱せるの、変態組だけだぞ!』
(リッカ、変態組って誰と誰かな?)
「簡易合体行くよ。私が二人を掴んで、躱すよ」
『なるほど、助かります!』
『それなら楽だー』
「リッカがメインで射撃してね」
『えーーー、楽じゃないー』
文句を言いながらも、アリスとリッカの乗る機体が、ルミライト・ムシャ・リッカになる。黄金のボディが宇宙と照らし出す光を映して、陰影濃く現れた。
ていうか黄金の機体って、宇宙だと周囲を鏡みたいに映して、ほとんど視えないな・・・。
私は戦闘機のまま、フェアリーテイルから腕を伸ばして合体している二人を背中から掴んだ。
そのまま宇宙を泳いで、砲撃を躱しながら飛ぶ。
正面から、宇宙での利用しか考えてないような歪な形の敵機が、こっちに向かってくる。
これを私達は、私のバルカン、リッカの弓、アリスの遠隔腕で撃破しながら突き進んだ。




