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401 裸の男性がいます

 ファンタジー世界でソロキャン配信を終え、数日後。

 遭難したプレイヤーを救助するクエストを終えて、ハイレーンに戻っていると、なんだか急にワンルームの方から ドサッ という重いものが落下する音がした。



 「なにごと?」と思いながら、恐る恐るワンルームに降りていくと、裸の男性が倒れてた。

 〝裸の男性が倒れてた〟


「ぎええええええっ!!」


 私は悲鳴を上げた。

 私の大声のせいか、男性がゆっくりと起き上がる。

 何かを見た気がするが、私は〖サイコメトリー〗を使ってその記憶を引きちぎった。


「ここは・・・・? 一体・・・」


 男性の困惑の声。

 私はワンルームの収納からタオルを取って、男性に投げる。


「今、連合の通販で服を買うんで、そのタオルを腰に巻いてて下さい!」

「お、女の子!? ――す、済まない!!」


 でもあの男性の顔、見覚えがある。面影が有る。

 すぐさま届く、紳士服。

 似合うかとか、センスとか知らん。

 とりあえず適当にシャツとジーンズだ。あとパンツ。

 シャツにはなんか『ナイスバディ』とか書いてた希ガス。


「それ着て下さい!」

「お、おう、済まない」

「あとタオルは返さなくて良いです! あげます!」


 tntnに触れたタオルとか、返してもらっても困る。

 とりあえず落ち着いた所で尋ねる。


「貴方は一体、何者ですか?」

「ああ俺は沖田 海斗――多分、MoBだ」


 やっぱりか。

 なんとなく察してるんだけど、鷹森くんもMoBだよね?

 鷹森くんは多分、連合がMoBを人化させたものだと思うんだけど。


「MoB名はオキタ・カイト」


 ――ん?

 ちょっとまって、私の常識というか思い込みが今、思いっきりぶん殴られた。


「ま、待って下さい。え・・・・どういう意味ですか?」

「ああ、俺はどうもアイリスがオキタ・カイトとして作り出したMoBらしい」


 ちょ、ちょっとまって、頭が混乱してきた。

 話を整理すると。

 眼の前の沖田 海斗さんはMoBで、アイリスが直接オキタ・カイトとして生み出して・・・・――いや、説明された事まんまやん。でも・・・・そういう事?!


「じゃあ、鷹森くんもそんな感じだったりするの―――!?」


 私が思わず言った言葉に、沖田さんが驚く。


「タカモリ!? コウヤ・タカモリか!?」

「あ・・・・そうです。オキタさんたちの部長さんです」


 この沖田 海斗さんより、ずっと鷹森君のほうが若く見えるけど。


「私もちょっとビックリなんですが、彼、私の同級生になってます」

「そ、そうか・・・鷹森部長も、俺と同じ状態なんだろうか――」

「多分だけど、そうだと思います」

「――しかしそれなら、自分の状態が分からなかったから、少し安心した」


 というか――そうだ・・・・アイリスがなんで私の機体のワンルームに海斗さんを生み出したのかは、分かる。――だいたい分かる。

 機体の中にMoBを送り込めるという超危険な事実の発覚はともかく、私が今やるべきことは、


「海斗さん! ネモさんに会いに行きませんか!?」


 私の勢い込んだ言葉に、海斗さんが困惑する。


「ネモが復活してるのか? 俺達の住んでいた惑星ユニレウスはMoBに占領されて――」

「取り返しましたよ! ユニレウス! プレイヤーで!」

「ほ、本当かい!? プレイヤーというのは分からないが、ガス惑星に潜む超巨大MoBは・・・」

「倒しました!」

「ユニバーサルシティもかい!? あそこは入れないし、入っても数え切れないキューピィが」

「大丈夫です! 開放しました!」

「本当に? ・・・・どうやって・・・」

「えっと・・・プレイヤーの皆さんが10万人集まって頑張りました!」


 私は、海斗さんにプレイヤーの説明をしながら、ユニレウス攻略の時の生放送のアーカイブを見てもらう。


「いや、10万人云々ではないじゃないか。君が八面六臂の大活躍している――凄まじい腕のパイロットだ。俺なんか足元にも及ばない――こりゃ君がユニレウスを取り戻したようなもんだ! ありがとう・・・!」


 私はやっぱり感謝されるのに馴れてない。


「そ、それよりネモさんですよ! 会いに行きましょう!」

「あいつが今、何処にいるとか知っているのか?」


 それはもう、知ってます!

 私が譲渡したマンションに住んでる筈。


「バッチリです! 行きましょう!」

「ありがとう! 案内を頼む!」


 では早速ユニレウスに――と、コックピットに行きかけて気づく。


「あっ! 奥さんに会いに行くなら、もっとちゃんとした格好がいいですね!」


 私は連合通販で男性用のスーツやネクタイやらを注文して、海斗さんに渡す。

 海斗さんが頭を下げてきた。


「何から何まで済まない」

「いえいえ!」


 だって、海斗さんが買い物できないのは仕方ないじゃん。いきなりMoBとして転生させられちゃったんだもん・・・・生前に積み重ねてきた資産的な物が、何も使えないんだから。

 私達はフェアリーテイルで一路、ユニバーサルシティの発着港へ。


「着きました。ユニバーサルシティです!」

「おおっ、変わらないなここは」


 確かに私が初めてこの街に侵入した時と同じ光景――ボロボロだった街並みは見る影もない。

 すっかり、高層ビルが立ち並ぶワルシャワって感じ。

 私が衝突して倒壊させたでっかいビルも、元通り。


「ネモさんとミサキちゃんが住んでいるのは、あのマンションの上の方ですね」

「別の面か――歩いていくには、少し遠いな」


 海斗さんが言ってるのは、この街って正十二面体の街だから面が一杯有るんだけど、ネモさんたちが住んでるマンションは今いる隣の面なんだよね。確かに遠い。


「じゃあ、タクシーで行きましょう! 私が出します!」

「俺、情けないな――すまない」

「仕方ないですよ」


 データノイドですらないから資産の引き落としすら無理だろうし、というか資産はネモさんに移ってるし。

 という訳で、タクシー乗り場で、タクシーにライドオン。

 間もなくネモさんの住んでいるマンションに到着。

 私が来ることは、ネモさんに電話しておいたので、マンションの1階の入口前でインターホンを鳴らせばネモさんの声が直ぐに返ってきた。

 海斗さんが一緒にいることは言ってない。

 電話で話せる内容ではない気がしたので。


『こんにちわ、スウさん!』

「はい、お久しぶりです!」


 ネモさんの後ろから、なんだかソファの上で子供がジャンプする音がする。

 ミサキちゃんかな。


『ミサキもスウさんが来るって言ったら、はしゃいでまして。すぐ開けますね』


 マンションの扉が開いた。

 私たちはエレベーターで20階へ。

 海斗さんが首を傾げる。


「なんだかここは、プレイヤーとかいう人たちらしき人々が多いみたいだけど」

「ここはプレイヤー用のマンションらしいです」

「ん? ――なぜそんな場所にネモとミサキが・・・?」

「ま、まあ、色々ありまして」

「ふむ」


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