396 みんなで料理を開始します
「そろそろ弱火にしようかな」
私はまだ燃えている薪をトングで掴んで、小さめのBBQ台に移動。
炊いているメズティン側の焚き火の薪を減らして、火を弱くする。
というか、こちらはもう、ほぼ炭火。
そろそろ日が暮れて、辺りは真っ暗。
さすが、地球より銀河の中心に近い惑星。星の量が半端ない。
あまりの星の数に、空が迫ってきそう。
見上げていると、平衡感覚を失う。
それに月も2つ出てるし、結構明るい。
いや、全然暗いけども。
そうしていると、アリスとリッカの方から声が。
「あああ、お米に芯が残りました!」
「ぎゃーーーゴリゴリご飯に! 吹きこぼれたから出来上がりかと思った!」
「し、浸水時間が足りなかったのでしょうか」
私は、声に二人を振り返る。
二人共「せっかくのキャンプなのに」と、ガッカリしてる。
「あちゃあ」
❝ちょっと可哀想❞
❝んだぬ❞
❝でも、スウたんなら何とかしそう❞
❝流石に無理じゃろ❞
私は、〈時空倉庫の鍵〉に入れている大きめの鍋を2つ取り出して、水を入れて、さっきメスティンの下からどけた薪で沸かし始める。
私は二人に声を掛ける。
「アリス、リッカー」
「なんですか、スウさん」
「んー(泣)」
「そのご飯美味しく食べれるようにするから、もってきて」
「ほ、本当ですか!?」
「マジで(泣)!?」
「うんうん」
❝おいマジかよw❞
❝ほんと、なんでも出来るなこの子www❞
二人が へにゃん と崩れた涙目で飯盒を持ってくる。
見事に眉尻と目尻が崩れ去っている。
「お、お願いします」
「うちのコを助けてくれ」
「飯盒で炊いてたのね」
「はい」
「キャンプと言えばこれだろ・・・?」
「最近のアニメとかはそうでもないけど――飯盒は縦に長くて火の入り方が偏るから、難しいんだよね」
「そうなのかあ・・・」
「まあ、飯盒は基本黒いから煤も目立たないし、内皿も便利だし、お焦げも美味しいから問題は無いんだけど――一応私、〈時空倉庫の鍵〉に非常用食料でお米入れてるけど、自分で炊いたご飯を食べたいよね?」
「ですねぇ」
「わたしは、どっちでもいいぞ!」
リッカは流石、色々気にしない。
「よし、お湯が沸いた」
私は二人の飯盒を逆さにして、それぞれお湯に投入(別々のお鍋)。
「えっ、そんなに沢山のお湯で炊くんですか!?」
「それじゃ、粥にならないか?」
「お粥にはしないよ。――もう、炊く時間が分からないからね。外国のお米の炊き方で行くよ」
私は、二人のお米をひと粒ずつ食べながら、芯の確認――同時に自分の料理の火加減も見る。
私のメスティンのご飯はもう良さそうなので、蓋をきっちり締めて逆さにして蒸らしておく。
すると、右からリッカの声。
「スウ。このすき焼き、肉が入ってないぞ?(もぐもぐ)」
「君は・・・・何を当たり前に私の鍋を、先に食べてんの」
「だって美味しそうな匂いがしたから」
「せめて、答えを言う努力をしようよ、」
しかも、私のアウトドアチェアに座ってるし。
腰が深く根付いている。
「まあもう、あれだ。みんなで一緒に食べる? 私のすき焼きも、BBQもみんなでつつこ」
「やったです! スウさんのご飯が側にあるのに、お預けが辛かったんです!」
「わーい! スウ大好き!」
立ち上がり、両手を上げて一回転したリッカが、自分のベースに走っていく。
そして直ぐに戻ってきた。
右手に兎、左手に海鮮。
「兎! わたしの獲った兎も食べよう! ――あと、海の幸!」
「いいね! このあとBBQもするから、兎肉とハマグリをそこで焼く?」
「兎肉は、すき焼きにもちょっと入れないか?」
「確かにジビエすき焼きも良いね」
リッカが自分の食材を持ってきたので、アリスが「わたしも!」と自分のベースに走った。
私はアリスの後ろ姿を見送って、リッカが私のクーラーボックスの上に置いた食材を見る
「――にしても食材が全部、まだ生なのね」
「わたしは切るくらいしか出来ないからなー、刺し身にしようかと」
「いやぁ、だいぶ食材の時間が経ってるし、生食は怖くない?」
リッカは〈時空倉庫の鍵〉をファンタシアに持ち込めないし。
「あー、そういう事まで頭が回ってなかった」
「キャンプで生食は難しいよ、その場で釣った魚とかならともかく。――せめてしゃぶしゃぶにしよう。表面に火を通せば行けると思う」
「! ――なるほど!」
「まあ私ら、〖毒無効〗でしかも〖強靭な胃袋〗なんだけどね」
「――キャンプの風情も何もかも、ぶち壊しだな」
「いや、お腹壊す風情はあんまり・・・」
話していると、アリスが帰還。
おお・・・・肉だ。肉塊だ。
サシが多い。――多分、私のお肉より高い。
あとはハヤシライスをするつもりだったのか、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、ハヤシライスのルー。
「こっちにもお肉があるので、これも焼き肉や、すき焼きにしませんか? ハヤシライスは・・・・要相談」
「あー、ハヤシライスは作ったほうが良いかも。二人のお米は、今やってる方法だと、ふっくらはしないんだよね。――ただ、ハヤシライスとかには合うよ。あとチャーハンとかピラフとかにも」
という訳で、アリスとリッカのお米から芯が取れたので、私は二人のご飯を順番にザルに移す。
そうして素早く湯を切って、水分を取ったら、お鍋に戻す。
あとは予熱で水分が飛ぶのを待つ。
「な、なるほど・・・・余分なお湯を捨ててしまうんですね」
「そうか、それなら炊き時間が分からなくても問題ない」
「ただこの方法だとやっぱ、パサパサ感は出ちゃう」
「わかりました。じゃあ、わたしとリッカはハヤシライスを作る作業に入りましょう」
「よし、野菜を切るぞ――なんか、小学校の林間学校を思い出すなあ」
二人が薪を自分のベースから、私のベースに持ってきて、ハヤシライス作成に取り掛かった。
んだけど、
「スウ」
「ん? どうしたのリッカ?」
「風が強くて、火がつかん」
「・・・・。――そこの薪使うと良いよ」
リッカが、私の指さした方を見る
「ん? なんだこの黄色い木」
「ファットウッドっていう、脂まみれの木かな」
私が言うと、アリスが ピクッ と反応した。
「・・・fat太い」
「いや・・・・脂まみれなだけだから!」
太りやすい人は、大変だなぁ。
「なるほど・・・スウさんの胸も脂肪まみれですもんね――そんな感じと考えましょう」
「やめてくれ野菜」




