391 コラボします
なんとか地味な、目に刺激の弱い水着にしてもらう約束にして、とりあえず配信でも爽やか炭酸を宣伝して欲しいと言われているらしく、私は配信するために宇宙へ。
早速、配信を初めて爽やか炭酸の宣伝を開始。
いつもは始まりの挨拶なんて「こんばんわ」とかなのに、調子にのって一回使ったきり、再利用したことのない始まりの挨拶を入れてみたり。
「こんスウ~。みなさん今日は始めての案件配信です!! なんと私の大好きな八街じ――じゃなかった。爽やか炭酸様にプロモーションをしてほしいとお願いされました!!」
危ない。案件で八街汁とか言ったら、違約金レベルじゃないか。
と、焦ったけれど。私のミスはこれだけじゃなかった。
自分のスペックの低さを、すっかり失念していた。
――私は本当に調子に乗っていたのだ。
みんな、炭酸ジュースを無重力で開いちゃ駄目だぞ。
「爽やか炭酸、好評――ぎゃーーー!!」
こうなるから。
意気揚々だったんだ。
嬉しくて・・・すぐさま配信を初めて、すぐさま宣伝しようとキャップをひねったんだ。
重力制御装置を切っていたのを忘れたまま、ペットボトルの爽やか炭酸を開いた所、中身が吹き出して透明な泡になった。
まるで人魚姫だね・・・・とか現実逃避してから、重力制御装置をオンにして、甘くなったそこら中を泣きながら拭く私でした。
❝・・・・スウさん❞
❝なにやってんの❞
「・・・・炭酸を無重力で飲める宇宙用の爽やかタンブラーも、好評発売中です」
❝1985年の奴が復活したんだっけ? チャレンジャー号の宇宙で炭酸を飲めるかの実験したやつ❞
❝その宣伝だったんだな?❞
❝んなわけ❞
❝・・・・言ってやらないで❞
ちなみに無重力で炭酸飲料を飲むと、結構気持ち悪くなります。あんまりシュワシュワしないし――爽やか炭酸を飲むなら、やっぱり重力は必須です。
で、ここからは普段コラボしない人とのコラボ13連発。
毎日2回行動。
例えば、タンク先生とのコラボ。
「なんと今日のゲストは、スウさんです!!」
「こんタンク~。タンク先生の視聴者の皆さん初めまして、スウです」
例えば、音子さんとのコラボ。
「驚いたらあかんで、今日はスウが来てくれてるんや!!」
「こん音子~。音子さんの視聴者さん、お久しぶりです。スウです!!」
例えば、からあげレモンちゃんとのコラボ。
「なんと今日のコラボ相手は、あのスウさんですー! やっとコラボが成立しました!! 長かったーーー!」
「こんラゲー。からあげレモンさんの視聴者さんはじめまして、スウです~」
「早速、お尋ねしたいのですが、スウさんは柑橘類が大好きな酢酸クイーンなんですよね?」
「まあ・・・うん」
柑橘類の酸っぱさはクエン酸だけどね。
「では、唐揚げにレモンは!?」
「それは―――当然、かけるよ! 美味しいし、胸焼け防止にもなるし、無ければ胡椒」
「どうですか、レモン掛けない派の皆さん! 我々の勝利です」
❝ぐぬぬ❞
❝スウが掛ける派――だと・・・? こっちが不利すぎる❞
❝おのれ・・・かける派め・・・❞
え、き◯こたけ◯こ戦争みたいに、掛ける掛けない戦争が勃発してたの・・・?
私はレモンちゃんの配信に若干怯えながらも、何とかコラボを終えた。
例えば、リッカとのコラボ。
「みんな~、今日のコラボ相手はスウだぞ~」
「こんリッ――」
・・・・いや、まて。
「――なんでサラっと、今まで散々コラボしてきたリッカまでコラボ相手に混じってるんよ。今日のコラボ相手がリッカだって甘利さんに教えて貰った時は、ビックリしたわ」
コラボ連発は、今までコラボできなかった人達への自責強めコラボ達だったんだけど。
「だって、最近スウと遊んでなかったし」
「それは、最近忙しくてごめん」
なんか自責が生まれた。
――てかリッカ、私と遊ぶためにコラボ依頼までしてくるとか、どんだけ遊びたかったん。
なんかリッカに嫉妬みたいなのされて嬉しい、ゴメン。
リッカが伸びをしながら大きな声を出す。
「今日はいっぱい遊ぶぞー」
「なにするの?」
「ソルダートで勝負コラボだ!!」
「もう中層とか関係ないじゃん」
プラモバトルかあ。
相変わらずリッカは、野放しだなあ。
フーリも、桂利さんも、甘利さんも、誰も彼女を制御できないらしい。
さてリッカとのバトルに完勝して、64層。
ここは空間の裂け目が隠されてしまっていて、それを発見する攻略になってたんで攻略に時間が掛かっていた。
で、コラボラッシュの最後になったのが、さくらくん。
「こんヒラ~、さくらくんの視聴者さんお久しぶりです。スウです!!」
「僕の目標の人である、スウさんが来てくれましたー!! 今から一緒に64層の攻略で、空間の裂け目を探しに行きますー」
今はさくらくんのスワローテイルのワンルームで、配信をしている。
私が昔使っていたワンルームを思い出させる部屋構成だけど、和風にアレンジされていて目新しい。
「で、さくらくん――私空間の裂け目を探すのは初体験なんだけど、空間の裂け目ってどうやって探すの?」
「およそ半径1万キロを探索できる長距離サーチでしらみ潰しにやって、反応があったら短距離サーチで細かく探します。まあ皆さんずっと長距離サーチ使ってるんですけども。ちなみに長距離サーチには、一回に10分ちょっとかかります」
「一回に10分!? えっと・・・・その間はコラボ中、何をしたらいいの?」
「お話でしょうか」
「このコラボ、ここで終わらない?」
「なんでですか!?」
「だって間がもたないよ!! 私、スウだよ!?」
「スウだからという理由の意味がわかりませんが、会話デッキは僕が構築しますんで、コラボは続けて下さい―――!」
「会話デッキ作ってくれるなら、なんとか」
「良かった。・・・スウさんとのコラボ中止とか洒落にならないですよ」
「・・・・そんな大げさな。あ、受験合格おめでとう!」
「すんごく唐突ですけど、ありがとうございます!」
「これ入学のお祝い! ――」
私はお祝いに、のしを付けて渡す。
「――おねーさん成金だから、期待していいよ」
「あはは、自分で言っちゃうんですね」
「うん、もう揺るぎない事実だからねー。あと、ウチ指定の水着も買っておいたよ――間違って女子用買わないように」
「どういう意味ですか」




