表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

362/466

364 ヨグ・オトーコに蹂躙されます

「涼姫、お風呂行きましょう、お風呂。大浴場がとても綺麗らしいですよ」

「私、いかない」

「だ、駄目ですよ、海に入ったんですから綺麗にしないと!」

「部屋のユニットバスでくつろぐから」

「なんでですか!」

「他人の前で裸になるのが恥ずかしいからに決まってんじゃん!」

「・・・・みずき」

「応」


 捕まらないぞ――〖飛こ――


「!!」

「立花流、隠形」

「既に後ろにいた!?」


 みずきが私の足を膝カックンして、腕を捻ってきた。

 アンタは忍者か!? 侍の方じゃなかったのか!?


「誰か助けてー!」


◤しかし だれも あらわれなかった◢


「皆さん、お風呂でお待ちですよ」

「味方が居ない!?」


 このままじゃ裸にされる。


「〖超怪力〗! ――って、イタタタタ! 肩が抜ける!!」

「力なんかで抜けられるような、ヤワな技は立花にない。諦めてお縄につけ」

「そっちがお縄につけ! 誰かタスケテ!! 拘束されて、拉致られて、裸にされそうです!」

「犯罪みたいに言うな」

「ほぼ犯罪だろ! 〖念動力〗!!」

「せいっ」


 私がみずきを〖念動力〗で掴もうとすると、みずきが空いてる方の腕を一回転させた。

 え、なに?

 なにが起きたの?

 というかむしろ、なんでなにも起きないの? 〖念動力〗が変なことになってるんだけど。

 すると、みずきが淡々と説明しだした。


「触れられる物なら、技は通じる。ならば、投げ飛ばせるのは道理」


 え、みずき、〖念動力〗を投げ飛ばしたの!? なんなのこの子!?

立花さんちの技、ちょっとおかしいよ!?


 投げ技に負ける、私の〖念動力〗。


「スウさん、ここってかけ流し天然温泉の露天風呂ですよ」

「え、まjd。――それはちょっと気になるかも。じゃあバスタオルとか着替えとか準備するから一旦部屋に戻らせて」

「その言葉に嘘偽りはありませんね? 開放した瞬間、部屋のドアに鍵を掛けて出てこないとかありませんね?」

「ギクッ――や、やだな、そんな事考えてないよ?」

「・・・・まあ良いでしょう。鍵を掛けたらマスターキーで開けてもらいます」

「―――くっ」


 その後、私はちゃんとお風呂の準備をして二人に合流しました、渋々。

 で、廊下を歩いていると、アリスに首を傾げられた。


「あの。ところでスウさん、その飛行機の玩具はなんですか?」

「え? お風呂で遊ぶ玩具だけど」

「え」

「え」

「そ、その歳で、お風呂に玩具を持ち込んでるんですか?? ふ、普段から!?」

「えっ、みんなお風呂は玩具で遊ばないの!? ――昔、私がお風呂に入りたくなくてグズった時に両親が玩具を一緒に――その頃からずっと」

「いえっ、その・・・・」

「まあ、なあ――」


 リッカまで歯切れが悪い。


「・・・・あ、遊びますよ?」

「――あ、遊ぶなあ」

「ふたりともなんで目を逸らすの!? 私の目を観て言って!!」


 そっかぁ、みんな玩具で遊ばないのかぁ。衝撃の事実でした。


「で、でも玩具があったから・・・・シャドウ・サークルが生まれたんだよ」

「マジですか――その節は姉を助けてくださって。スウさんの玩具遊びは良いものですね」

「なるほど」


 アリスが言うと、リッカも納得してた。




 私はあかんやつ等に抵抗できないまま引っ立てられ、脱衣所へ。そうしてあっさり裸に剥かれる。


「お母さんに、人前ですっぽんぽんになっちゃ駄目って言われてたのに」

「ここはお風呂ですから良いんですよ」


 言ったアリスが首を傾げた。


「でもおかしいですね」

「なにが?」


 アリスの視線が、私の下半身に向かう。

 私は手で隠す。


「玉がないです」

「あるか、ンなもん! ――てかドコみとんじゃ!」

「それじゃあ、どうしてお婆さんはスウさんとわたしの子が生まれると予言したのでしょう?」

「アンタの勘違いだそれ」


 お風呂は本当に源泉かけ流しの温泉だった。


「うぉぉぉ、違う惑星の露天風呂!」


 海の水がちょっと入ってくる石の湯船を観ながら、私は感動。

 空も満天の星空、眺めていると星が多すぎて眼が回りそう。


 この温泉の水質は〝炭酸水素塩泉〟らしい。

 つまり美人の湯だ、奇麗になれる温泉だ。

 そういえば、崖に石灰層が見えてたっけ。

 あとは近くに海底火山でもあるのかな。


 せっかくの美人の湯だし、己を磨こう。


「ごしごし きゅっきゅ♪」


 私は『銀河旅行会社』と宣伝が書かれた椅子に座って、『銀河鉄道公社』と書かれた桶で体にお湯をかける。

 そうしていると、湯船の音子さんが温泉の縁に、腕と頭をあずけながらこっちを見た。

 やおら、名状しがたい事を言う。


「なんやスウ、洗ったら味がなくなるやんか」

「『お、お前は、何を言っているんだ?』」


 私は油が切れた歯車みたいに、音子さんへ首を巡らした。


「スウは、そのまま入ってええんやで。出汁(だし)とろうや」

「―――ゴシゴシキュッキュ!! ゴシゴシキュッキュ!!」


 そうして身体を洗い終えて、さらにスキルの〖洗う〗をして湯船に飛び込む。


「ふーっ」


 身体の空気が抜けていくみたいに一気に疲れが抜けていく。

 空を見上げると、視界一杯に吸い込まれそうな星空。

 さすが地球から10000光年以上も銀河の中心に近い場所、星の数がやばい。


 感動しながら星空を堪能していると、背後に気配を感じた。

 なので振り返ろうとした瞬間、音子さんが私の胸を揉んで来た。

 浴室中に響き渡る、私の大絶叫。


「ギャアアアーーー!」


 お風呂でも、じゃれ合っておっぱい揉むの!?


「でかっ! 衝撃的なんやけど! なんなんこれ!? こんなん高校生がぶら下げてて良いものじゃないで! 法律で高校生のバストサイズは定めるべきや!」


 ねえ、なんでみんな私の胸を、法律で罰そうとするの?

 アリスとリッカまで揉んできた。


「スウのおっぱい、でけー」


 リッカまで揉んできた。

 常識に慣れない私は涙目で「ギャー、ギャー」騒ぎまくり。

 だって直接だよ!? ダイレクトタッチだよ!? 多分MPとか減るようなドレインタッチだよこれ。


 ヒナさんが私を指差す。


「――あー、若い素肌が水を弾いてる、ズルい!」


 んなこと言われても。


「てか、おっぱいがマジに湯船に浮かぶ光景初めて見たかも。噂では聞いてたけど」

私がお湯を掬って肩に掛けて、疲れを吐くように息を漏らしていると。






 するとリッカがまた余計な口を叩く。


「アリスは、胸さえあればなあ」


 これにはアリスさんおかんむり。


「だまりなさいチビッ子」

「なんだと、スモールバストガール」


 リッカが、なんかわざとらしいアクセント付けて「スゥモぉる バぁスぅトぅ がぁる」とか発音してた。


「わざわざ下手くそな英語で! そっちだって、胸はないじゃないですか!」


 二人が子供みたいに水を掛け合い出した。

 ついにはやおら立ち上がり、エスカレートしていく。


 流れ弾で飛んでくる水しぶきが、実にうっとおしい。


「やめなさい小学生ですか恥ずかしい!」


 私が仲裁すると、なぜか私に飛び火する。


「だいたい、スウさんの胸がそんなに大きいから悪いんじゃないですか!」

「そうだ、スウのせいだ」

「どんな理屈だよ!」


 何たる理不尽。


「屁理屈だよ!」

「開き直るな!」


 私よりさらに若い綺雪ちゃんが、首を傾げる。


「本当に大きいですスウさんのおっぱい――高校生になったら、大きくなるんでしょうか?」


 やっとの思いで音子さんの魔の手から逃れた私は、胸を隠しながら綺雪ちゃんに答える。


「どうかなあ・・・・? 私、中学からすでにそこそこ大きかったし」

「腰もくびれてますし、スタイルいいですよねぇ」

「パイロットスーツのスタイル矯正のお陰かな? というか私なんか全然、アリスの方が」


 綺雪ちゃんがため息を吐く。


「あれは別世界です」


 やがて、まったり湯船に浮かぶターンが訪れた。

 若干一名みずきが泳いでいるけど、あの子は別として。


 私が、湯船でぷかぷかしていると、頬を赤くして艶やかになったアリスがお湯を肩に掛けながら、私に話しかけてくる。


「スウさん、このホテルの見る夢の話は聞きましたか?」

「え、このホテルで見る夢? 知らない」

「なんだか、このホテルに泊まると最終日の前の夜に必ず見ると言われる夢があるんです。銀髪――いえ、アッシュブロンドの少女が出てきて、泣いている夢」

「初耳だけど・・・・銀髪――アッシュブロンド、泣いてる少女・・・もしかして、初めてこのホテルに来た時の幻影?」

「あっ、スウさんが見た女の子ってアッシュブロンドだったんですか?」

「うん、そうなんだけど・・・・」


 明日が最終日だし、私も今夜、同じ夢を見るのかな?

 なんて思っていたら――私は〝女の子が泣いているどころではない夢〟を見ることになる。




◆◇◆◇◆




 アリスとの同室になり、隣に眠るアリスの寝顔を見ていたらうとうとしてきて――いつの間にか夢を見ていた。

 でも夢の中に入る寸前、大正時代風のデパートの屋上のベンチに座る無垢な少女の姿が見えて、声が聞こえた。


『涼姫、みんなが死なない方法を見つけてくれて―――本当にありがとう』


 少女は眩しそうに目を細め、歯を見せ笑い。陽だまりのような笑顔で笑っていた。


『お礼に、シュネの力を借りて。今から、貴女だけに()()を見せるね』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ