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360 みずきに自慢されます

「この人、禅みたいに静かなんじゃなくて、寝てる!?」


 急いで私が揺り起こそうとすると、なんか私の視界の景色が反転した。

 えなにこれ!?

 あ、投げられたの!?

 ――寝ながら人間を投げたよ、このコ!

 どんだけ達人の領域に足を踏み入れちゃってるの!!

 私は〖飛行〗で浮いて、海に落下するのを避ける。

 そのまま海の上に浮遊しながら、


「なにすんじゃー!」


 と、念動力でリッカにチョップすると、奴が目を覚ました。

 目を覚ましたリッカは海の上に浮かぶ私をキョトンと見詰めてから、のたまう。


「スウ、なに浮いてんの? 存在が浮いてるからって、意味もなく」

「貴様! 魚が食いついてるよ」

「なんで早く起こしてくれないの、逃げちゃうじゃん!」

「私は起こそうとしたの! そしたら貴様が寝ながら、私を海に投げたんだよ!」

「まさかー、いくらわたしでも寝ながら人を投げたり出来ないよー」

「投げたんだよ! いいからさっさと竿を上げて!」

「そうだった。この引きは大物だー!」


 リッカが激しく振動する竿を上げた。

 すると釣れたのは――


「アンモナイト・・・?」


 リッカが首を傾げる。釣れたのは、アンモナイトみたいな貝だった。


「ダーリン、これ食べれるの?」


 リッカの質問にダーリンが答える。


「姫、問題なく食べられます。タコやイカのような味であります」

「蛸かあ」


 リッカが釣果を掲げて、みんなにアピールする。


「一番に釣り上げたどー!」


 みんなが「おーっ!」と歓声を挙げた。

 アンモナイトを食べる気なんだ?

 ちょっと食べるの怖いな。


 リッカが嬉しそうにアンモナイトみたいなのをクーラーボックスに入れるのを眺めていると、リイムが私の釣り竿をクチバシではむはむしだした。

 おっ、今度は邪魔か? と思ったけど違うみたいだ。


「リイムも釣りしたいの?」


 私が尋ねると、うんうんと頷いて。


「コケッ」っと鳴いた。


「じゃあまってて」


 私はクルーザーまでスキルでひとっ飛び。

 予備の釣り竿を借りて戻って来る。


「貸してもらったよ、どうぞ」


 と、リイムに釣り竿を渡すと、嬉しそうに「コケコケ」鳴いて、釣り竿を咥えた。



「釣れるといいねー」


 リイムが無言でうなづく。喋ったら竿落としちゃうもんね。

 やがてリッカが、再びアンモナイトを釣り上げる。

 さらにその後、リイムが魚を釣り上げた。

 さらにまたリイムが魚を釣り上げる。

 その後リッカがまたアンモナイトを釣り上げる。

 ・・・・あれ?


 クルーザーの方を見れば、みんなも魚をどんどん釣り上げていっている。

 流石、釣りの穴場。


「でも、なんで私だけ釣れないの?」

「スウは、またボウズかあ。毒電波でもでてるんじゃないのかー?」

「ぬぐぐ、言い返せない」

「いや、そこは言い返せ」


 リイムが自分の釣った魚をクチバシで咥えて、「ママにあげる」と押し付けてくる。

 なんて優しい子なんだろう。でもゴメンねリイム、それではママの胸の悲しみは解消されないんだ。

 あと、滅茶苦茶生臭いから顔は止めて。

 だけどリイムの優しさで、心の穴は埋められたかも。

 私が苦笑いしていると、リイムが私のクーラーボックスに魚を入れてくれる。

 というかリイムのクーラーボックス、なんか海水入ってるし餌のゴカイまで入ってるし。あ、私のクーラーボックスまで同じ仕様にし始めた。

 この子もしかして、魚を飼うつもりなんだろうか。

 

「コケー」


 とか、お魚さんに話しかけてるし。

 そのお魚は、食べるんだって知ったら衝撃受けそう。


 魚もリイムのクチバシに口をつんつんしてる。

 と、友達になってないかこれ?

 どうしよう、海の魚って飼うの大変なんだけど。・・・しかもここ、異星の海でしょ。

 とりあえずお魚の喉の傷を〖再生〗で癒やしておく。

 すると、お魚とリイムが嬉しそうにした。


 お魚が私に寄ってくるし、リイムも翼を広げて「ありがとうママ!」って。

 やばい、魚を食えなくなる。


 リイムは人間の言葉を理解してる節があるんで、一応言っとこうかな。


「リ、リイム。お魚さんね、私達で食べるんだよ?」


 私の言葉を聞いてリイムが目を丸くして固まった。


 衝撃のあまり動けないらしい。

 やっぱり飼うつもりだったのか。

 するとリッカが、糸を海に垂らしたまま静かにリイムに言う。


「リイム、魚が可哀想と思うか?」


 リイムがしょんぼりしている。


 リッカは諭すように続ける。


「だけどその魚たちも、他の生き物を食べているんだよ」


 「そっか」と、リイムの表情が納得したものになる。

 だけど流石に、友達になった生き物は食べたくはないだろうから。


「じゃあ、リイムがお友達になったお魚さんは、釣りが終わったら逃がしてあげようか」


 リイムはクルーザーの方を見たりしたあと、「・・・コケ」と頷いた。ちょっと寂しそう。

 うーん物分かりの良い子だ。


 リイムも、お魚食べたこと有るもんね。――たまにだけど。


 私の言葉に、リッカは何も言わなかった。


 あとその友達は一緒にいたくても、下手に扱うと死んじゃうし。

 というか、リッカの理屈だと、生き物を食べてない野菜を食べる方が問題――深く考えるのは止めとこう。


 私がリイムをいい子いい子していると、リッカが私の釣り竿に指をさす。


「スウ、それ引いてないか?」

「え、――あっ」


 すんごい引き、竿がしなるしなる。

 ていうか待って、海に引き摺りこまれそう。


「まずい、〖超怪力〗〖怪力〗!」


 なにこれ、魚の手応えじゃないと思う。釣りは初めてだけど、この惑星には、海が周囲50メートルも揺れるほどの魚とかいるの!? いやここは、地球じゃないからいるかもだけど。

 とりあえずFLの竿と糸は頑丈で、とんでもない負荷が掛かっても折れたり千切れたりしないみたいだけど、この魚は引きがヤバイ。

 リッカとリイムもヤバさを察知したのか、私を抱いたり支えたりして海に引き摺りこまれないようにしてくれる。

 でも、海に浮かんでいるフェアリーテイルまで傾いて不味い。


「〖念動力〗!」


 フルパワーの〖念動力〗でフェアリーテイルを支えながら、同時に釣り竿も〖念動力〗で引き上げると、とうとう獲物が顔を出した。

 現れたのは、巨大な茶色いタコ。

 エイリアンクラーケンさんじゃないですか、ヤダー!

 しかもなんか、今まで見たこと無いほどでっかい。

 あまりな巨体が持ち上がると、大きな波が起きてクルーザーとフェアリーテイルを飲み込もうとし始めた。

 クルーザーの方でも悲鳴やら、怒号やらが聞こえる。


(い、いけない!!)

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