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358 リイムが喜びます

 62層をクリアした次の日、私はスウチャンネルの事務所でフーリをホテルに誘った。

 ――いや、変な意味ではなく、エリアスのホテルの旅行にね。

 フーリが首を傾げる。


「海洋惑星・エリアスのホテル?」

「うん。前にゴブリンを倒したところなんだけど、お礼に貸し切りで招待してくれて」

「ああ、桂利がスウチャンネルの経理になってくれるつもりになったきっかけの配信の時のホテルね。うーん、けれど大丈夫なのかしら」

「大丈夫?」

「ほら、わたしってプレイヤーじゃないでしょ? 復活は入らないし、転送装置とか持ってないのよ。危険は有り得る惑星なんでしょう?」

「あー。でもそこは――私達も復活は入っても問題だし、転送は生身だと使えないんだよね。ただ――確かにエイリアンクラーケンとかいるから危ないのは危ないとは思う」

「まあ、地球の海にもサメとか危険な生き物はいるのだけれど――そうね、せっかくスズっちさんが初めて誘ってくれたのだもの。行くことにするわ」

「やった!」

「スズっちさんなら、そのクラーケンとかにも勝てそうだし」

「えっと、ダンジョン下層のMoBより全然弱いらしいから・・・・勝てるとは思うけど」

「護ってね」

「それはもちろん!」

「そうだわ、もう一度プレイヤー申請してみようかしら」

「あっ、そうだね。今度は行けるかもしれない」

「わたし最近、筋トレとかするようにしたの。わたしもスズっちさんと一緒に、爽波の二大運動不足と言われてるけれど」


(え、私そんな事言われてたの?)


「今度は行ける気がするのよ! なんといっても筋トレするようになったのだから!」

「そうだね、筋トレするようになったらいけるよね!」

「筋肉は全てを解決するっていう格言もあるのだし」

「だよね!」


 結果から言うとフーリは審査から落ちた。


 江東さんも誘うことにしていたので誘う。


「え、私もいいんですか?」


 ちなみにフーリは、遠くの椅子でシュレッダーに掛ける予定だった書類を床に向かって、千切っては投げ、千切っては投げしている。

 床が汚れるから止めなさい。

 ほら、ルンバが足元で困惑してるじゃないか。


「はい! いつもお世話になっているんで、是非!」

「しかし、来る方は皆さんクレイジーギークスの方なんでしょう?」

「うんん、マイルズとアレックスさん、それからエレノアさんも来ますよ」


 その後、チグとカレンとみかんも誘ったけど、二人は予定が入っているらしく無理だった。

 みんな残念がってた。

 私も残念だけど、フーリとアリスもいるし、よその学校だけどリッカもいるし、いっか。


 あとは音子さんは当然来るとして、さらに綾麻兄妹も来ることになった。

 綾麻さんのご両親には「二人をよろしくお願いします」と預けられたので、ちゃんと面倒見ないとね。

 他のクレイジーギーカーの面々は無理。

 コハクさん、リあンさん、星ノ空さんは外部コラボ。

 さくらくんは受験勉強。

 あと、メープルちゃんこと立花 楓ちゃんも受験で来れない。


 一番予定外だったのが、命理ちゃんも来れないということ。

 あの惑星苦手なんだって――考えたら、幽閉されてた場所だし・・・・いい思い出無いよね。


 というわけで泊まりに行くメンバーは、

 私、鈴咲 涼姫、

 八街 アリス、

 音子さん、

 アルカナくん、

 立花 みずき、

 沖小路 風凛、

 江東 桂利さん、

 オックスさん、

 綾麻 綺怜くん、

 綾麻 綺雪ちゃん、

 マイルズ・ユーモア、

 エレノア・ラミレスさん、

 アレックス・バーミンガムさん、

 そして、リイム。


 というメンバーになりました。


 さてホテルに着くと、みんなが早速泳ぎたいと言い出しました。

 そりゃもう、陸地がハワイ諸島ほどしかない海の惑星だもんね。

 で、みんなが水着で現れるわけで。

 ――みんなの水着を説明すると、

 私、鈴咲 涼姫は地味なワンピース――にするはずだったんだけど、音子さんにビキニを着せられた。

 白い大人っぽいやつ。


 八街 アリス。彼女は私と色違いのおそろいのビキニ、赤。

 わざわざ私とおそろいにするためにビキニを着るなんて、生き方に開放感が有りすぎなんですよ。

 にしてもプロポーションが良いから完璧に着こなしてる。なんでアレと同じビキニを着て横に並ばないといけないんだろう。世界の歪みを感じる。相変わらずの綺麗な腹筋。


 立花 リッカも今回はなんとビキニ、しかも黒のビキニ。ミニチュアな体の癖に大人っぽいのも似合う。むむむ。


 音子さん、なんか白くてひらひらの付いたビキニで現れた。赤い小さな水玉がちょっとだけあしらわれてる。

 意外だなあ、音子さんは可愛い系じゃなくて、もっとはっちゃけた水着を着るイメージだったのに、ちょっと少女趣味入ってる、本当に意外。

 しかし少女趣味だからって、セパレートとかワンピースの水着で現れたら〖パイロキネシス〗の最初の犠牲者にする所だった。

(静まれ私の右腕!)

 ここで気づく。・・・・あれ? 私って中学の頃に言ってた事、マジでできない?

 今度教室でやろうかな「静まれ私の右腕!」って。そんで〖パイロキネシス〗するの。・・・・なにこれ楽しそう。

 って、〝ワクワク計画〟を立てている場合ではない。ちなみに後の私は、アホンスのせいでアホになっていたんだなと後悔する。


 大事な、水着解説を続けよう。

 沖小路 風凛、青の爽やかなビキニ(パレオ付き)。なんというか綺麗。病的なまでの白い肌に、空のような青がミスマッチなんだけど、それはそれでふつくしい。


 エレノア・ラミレスさん、白いビキニで私とおそろい。褐色の肌に白が映える。


 綾麻 綺雪ちゃん、ピンク色の大人しいワンピース。小学生だもんね。


 次、男性陣。


 江東 桂利さん、ジーパンみたいな水着。ラフな格好って感じがする。


 オックスさん、前に見た黒に金の刺繍のやつ。


 アルカナくん、執事服のままでいるって言ってたけど「せっかくだし遊ぼうよ」と言って水着を着せた。

 モスグリーンな普通のズボンっぽいやつ。


 綾麻 綺怜くん、学校指定の水着で来た。なんというかおしゃれとかまだ興味ない感じかな。


 マイルズ・ユーモア、青いトランクスに黒いひものやつ。イケメンだから何でも似合う。


 アレックス・バーミンガムさん。赤青黄色のトリコロールカラーで、ブーメランパンツ――ブーメランパンツって。


 リイムくんは無し、代わりに首に赤いリボンを巻いてあげた。




 という訳で、みんなで海に走る。

 そうして、一斉に叫んだ。


「「「海だー!」」」

「コケー! (砂だー!)」


 ふふっ、リイムも嬉しそう。海に入るの初めてだもんね。

 私達が海に走ると、リイムが砂浜に走って行った。


「え、砂浜?」


 そうして砂浴びをしだす。


「テレパシー使ってなかったから分かんなかったけど、もしかしてさっきの『コケー』は『海だー!』ではなく、『砂だー!』って言ってたの?」


 まあ、動物は水を怖がる物だし、――いや、鳥とか砂浴び好きそうだけど。


 ざっぱざっぱ 砂の上で豪快に転がるリイム。

 みんな海の方へ走っていくから私も行こうとしたけど、私はリイムと目が合ったので立ち止まってしまう。


「えっと・・・」


 リイムが私の眼を見ながら「コケコケ」言って、翼をバタバタさせる。

 〖テレパシー〗を使わなくても分かる。これは「ママも一緒に砂浴びしよー!」と言っている。


「いや、リイム、私は・・・・というか人間は――」


 「砂浴びをしないんだよ」と、言えなかった。


 リイムが凄く寂しそうな顔で、こちらを見たからだ。

 こっちの考えが伝わらないように、テレパシーは使っていない。


 「ママ、しないの? 僕だけしか砂浴びしないの?」そんな風な眼だ。


「う゛・・・」


 確かにみんな海に走っていってしまって、このままではリイムが砂浜に残される形になる。

 それはまるでボッチじゃないか。


 プロボッチの私の胸にリイムのが砂浴びをして、ふと彼が一人ぼっちなのに気づいて、私達の方を視て寂しそうにする光景が浮かんでしまう。

 このままリイムを一人にすることが、私には出来ない。


「マ、ママも砂浴びしようかなー」


 若干、棒読み且つ震える声で言うと、リイムが嬉しそうに翼をバタつかせた。


「コケッ! コケッ!」


 テレパシーを使わなくても分かる「わーい、ママと砂浴びー!」 と、言っている。

 とう言うわけで私もリイムの隣で、砂浜をゴロゴロした。


「コケコケ!」(ママ楽しいねー!)

「う、うん、楽しいねー」


 私は、乾いた声で返事をする。

 水着の中が砂だらけで、痛い。

 あと、髪の毛もバサバサだ。

 そうしてしばらく(今、私は鳥。私は鳥)と、鳥になりきる。心頭滅却していると、頭上から声がかかった。


「スウさん、なにしてるんですか」


 赤いビキニを見事に着こなす女性が、地面を転がる私を見下(みお)ろしていた。

 ――いや、見下(みお)ろすと言うか、見下(みくだ)すと言ったほうが適当かもしれない。被害妄想かもしれない。


「ア、アリスさん・・・・これはちがくて、その・・・・砂浴びをですね」


 人って後ろめたいことが有ると、敬語になるらしい。


「スウさん、人間に砂浴びは必要ないんですよ? 人間はお風呂に入る物なんですよ?」

「それは、分かってるんだけども!」

「今日の大浴場、楽しみですね」

「人前で裸になるのを楽しみにしてる君の精神構造が、どうなっているのか知りたい」

「わ、わたしは普通ですよ・・・・『お前ら変態だ』みたいに論破しようとしないで下さい」

「文化の違いかな」

「貴女の文化は日本でしょう・・・・自分が、温泉大好き日本人だと思い出しなさい」


 おのれ・・・・温泉たくさん火山列島め・・・貴様のせいで、みんなの前で裸にされそうになってるじゃないか。



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― 新着の感想 ―
>立花 リッカ 名前は みずき だったはず…… わざとだったらすみません
更新お疲れ様です。 そういえば鳥(日本だと雲雀とか雉とか)は砂浴びするんでしたね…確か清潔さを保つ以外に寄生虫の除去・羽についた脂分の除去という理由が有るとか。リイムが雀みたく水浴びもやるタイプだっ…
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