357 リザルトします
❝援軍が急いで駆けつけたのに、到着と同時に崩壊していく敵の超巨大戦艦を見て、オペレーターさんが、引付け起こしたみたいな笑い方してるぞ❞
❝まあ、あんなの見せられたらシナプスが痙攣を起こすのは分かる❞
❝超巨大戦艦を一人で爆散させるとか、頭おかしすぎる❞
❝地上ではマイルズが無双してるし、ちょっとオークに同情してきた❞
こうして敵の戦艦が墜落して、戦力が崩壊したオークは撤退していき、敵の基地は案外簡単に占拠できたのでした。
その後、私たちは出現した印石を拾うターン。
「タマさん、向こうに印石でてますよ」
「あら、本当? スウちゃん、有難うねぇ」
「マイルズ、アッチ」
「ああ。助かる――しかし言い方が絶妙にそっけないな」
私は、〖サイコメトリー〗でみんなの印石を探したり。
もちろん自分に出た印石も拾って、内容を確認する。
「えっと〈暴食〉? ほう、よくたまにチート扱いされるやつ。ちょっと怖いけど、敵を食べちゃったり、スキルを奪ったり出来るやつかな。イルさん、これの効果って分かる?」
司書姿になって、本を取り出すイルさん。
『イエス、マイマスター。食欲を無限にします』
しばらくフェアリーさんの言葉の続きを待ったが、無かった。
私は自分と印石を繋ぐ糸を切って、〈時空倉庫の鍵〉に放り込んだ。
「本当にタダの暴食になるだけとか太るだけじゃん。まあ・・・欲しい人もいるとは思うけど。うちの海おじいちゃんとか『食欲が細くなると思うよ、若い頃に一度くらいは、大好きな物を大食いしておくべきだった』とか言ってたし――いや、無限の食欲って、それってつまり無限の飢餓ってことか―――絶対使っちゃいけない危険物だった」
使えないなFLの〈暴食〉!
「他には、〈怪力〉に――〈堅牢〉? これも初見だ。イルさん、これ何か分かる?」
『身体の防御力を20%上昇します』
「微妙だなあ。まあ、オークは雑魚らしいしこんなもんかな。――まてよ。ちょいちょい掛かる小さなGとかでも、普通に体力奪ってくるし。そういうのを気にしないで良いのは、素敵かもしれない」
私がブツブツ言っていると、マイルズが通信を入れてきた。
『お前は強いスキルを持ちすぎて、普通のスキルに対する認識が酷いな。――いいか、訓練を積んだパイロットでも7Gを超えるとあっさり意識を失うことが有る。ボクだって全力で筋肉を締める。それが8.4Gまで延長できると考えれば・・・』
ここでタタセさんから、通信が来た。
『スウさんの報酬に関して検討があったのですが』
「検討ですか?」
『はい、あの巨大戦艦にオーク・キングが乗っていたようで。報酬がアップしました』
「オーク・キング?」
『その名の通り、オーク達の王です。敵は司令官を失ったので撤退したようですね――銀河クレジット400万と、勲功ポイント200万です』
❝相変わらず、数字がバグってんなあ❞
❝俺、所持クレジットも、所持ポイントも、スウたんが今貰った量より少ない❞
❝・・・・運営にバグ報告しないと❞
❝渡してるのが運営なんだよなぁ❞
❝なあ、これ初心者クエストじゃないのか?❞
❝オーク・キング倒して、巨大戦艦を堕として、戦闘機ほとんど一人で片付けてたから、数字的には妥当なんだろうけど、妥当なんだろうけど。――この配信みてたら、頭おかしくなってこね?❞
❝くる❞
タタセさんが最後に締めくくる。
『ここに築かれるワープ港を護らないといけませんので、しばらくオーク討伐依頼が初心者クエストとして出ると思います。ワープ港の警備も出ると思います。スウさんの配信を観ておられる方も奮ってご参加ください。オークの本拠地ということで報酬は、ちょっぴり高めになる予定ですので』
❝タタセさん、ちゃっかり宣伝してやがるワロwww❞
❝はーい❞
『目指すは、名参謀ですので! あ、今日の戦闘は結構大規模だったのでスクラップあさりにもいいと思いますよ。銀河連合はいつでもスクラップを、高価買取しております』
❝よっ、未来の名参謀!❞
❝そうだ、スクラップあさりもあった! そこまでの危険もないみたいだし、俺も拾いに行こう❞
❝早いもの勝ちだ❞
❝あの惑星には1000年前の戦闘跡地も、結構有るみたいだぞ❞
❝なんで戦争跡地あるの? 連合は61層まで来れてないんじゃないの?❞
❝それは、マザーMoBがブラックホールに落ちた後の話らしい。それ以前の銀河連合はベクターって奴らと戦ってて、その頃は射手座αにだって行けてたらしい。61層以降にも人は住んでたし、戦争もあったんだってさ。あのオークの本拠地になってる惑星にも人が住んでたらしい。星団帝国の最盛期の人口は一兆を超えてたらしいし❞
❝人口が一兆人とか想像できんなあ❞
スクラップか。
私は近くで燃えているオークの戦闘機を持ち上げる。
これ、売ってみよ。スクラップ漁りは、まだやった事ないんだよね。




