356 空中戦艦と戦います
『61層にもドミナントオーガーがいましたし――流石に60層以降ともなると、上層でも危険になってくるんでしょうか?』
マイルズが答える。
『かもしれないな。今後は上層でも手練れを一緒に連れて行くように、依頼を発注したほうが良いかもしれないぞ』
『そうですね―――上層部に進言しておきます。――*後方警戒怠らないで、雲に偵察機を送って!!*』
にしても、私ならやりそうな事があるんだよね。
「マイルズ、ちょっと一人で戦艦引き付けられる?」
『任せろ』
「気になることが有るから観てくる」
『気になること?』
「私なら上空に意識が向いた途端、崖下から奇襲とか――上と下から挟み撃ちとかする」
『なるほど、それは非常にうっとおしいな。しかし、お前らしい考えだ』
どういう意味だ、この野郎。
「それに地下に洞窟が有ったり、横穴掘られてる可能性も微レ存」
『微レ存?』
「微粒子レベルで存在する」
『いや、微粒子どころではないな。ビー玉レベルで有り得るぞ。視えてる可能性は警戒しておくものだ――おっと、弾丸に掠りかけた――流石にこのデカブツ相手に一人はキツイか。ボクは集中するので少し黙る。スウ、下は任せたぞ』
「りょ」
って、やっぱり出てきた!!
崖の下から、なんかドリルを持った虫みたいなメカがワラワラと出てきてる。
ちょっとまって、ドリルって・・・・まさか地中を削りながら高速移動するような超科学じゃないだろうね。
いくら未来の超科学でも、さすがにそのレベルは止めて欲しい。
私は、相手の体勢が整う前に〈超臨界・励起放射〉で薙ぎ払い、エンジンが再始動した所で〈臨界・励起翼〉で相手を切り裂いていく。
でもやっぱ地上の相手は人型の方が楽かもしれない――人型になって戦おうかな・・・?
私が変形するか迷っていると、マイルズから通信が入る。
『本当に出てきたか。スウ、スイッチだ。お前は上空のほうが得意だろう。地上はボクに任せろ、お前よりはずっと得意だ』
「そっか、有難う!」
私が上空に向かうと、マイルズが下降してきた。
互いにサムズアップし合ってすれ違う。
「よぉし、覚悟しろよ!」
私は、こちらもワラワラと出てくる戦闘機の群れの間を駆け抜ける。
そんな私を、マイルズが少し心配した。
『む・・・・、敵機が大量に出てきたか――スウ大丈夫か?』
「大丈夫!」
❝え、スウ一人で抑える気?❞
結構無茶な事をしてる認識はあるけど、ここは戦艦自体を遮蔽物として戦う。
ジャックと豆の木の時代からデカブツっていうのは、近距離が苦手なのがお決まり。
「長物は、懐に入られると弱いよね!」
んで大量に出てきた戦闘機だけど、集団を相手にする時は一列にして一人ずつ相手にしろっていうのが有る、だけど戦闘機の場合はちょっと事情が変わる。
一列にするには、大体において自分を相手に追いかけさせる必要がある。
ところが後ろを取り合うドッグファイトでは、追いかけられているって事は、ドッグファイトに敗北している状態だ。
という訳で、私は敵に自分を追わせるのだけれど、逆噴射で逆走して戦う。
これしかない。普通にドッグファイトをして、私が敵一機の後ろを取っても、瞬く間にこっちが囲まれるに決まってる。やっぱり空戦での人数不利ほど怖いものはない。
じゃあドッグファイト以外の方法で戦わないといけない。
とはいえ、急降下からの一撃離脱も無理だろう。
上空に昇ってしまったらあの数相手にだと、流石に被弾してしまう。
という訳でドラム遺跡で、防衛機構にやった方法と同じ方法を取る。
でっかい戦艦を盾に頭出し一個の要領で、追ってくる相手を狙撃。
フェアリーテイルの速さに着いてこれない敵は、どんどん一列になっていく。
私は巨大戦艦表面の狭い場所をわざと通り、さらに相手を一列にする。
相手は自軍の戦艦を傷つけるわけにも、同士討ちする訳にもいかないし、凄く消極的だ。
けど、こっちは何を壊してもいいので撃ちまくれる。やりたい砲台、好き砲台。
「やっぱり戦闘機の速度って、大事だね!」
❝敵、150機くらいいるんだけど❞
❝幾ら上位勢だからって、あの数を一人で翻弄してるとか❞
❝まあ、スウは前に中堅のプレイヤー50人を、一人で同時に相手にしたし❞
❝しかもあの時はスワローテイルだったけど、今はフェアリーテイル❞
❝初心者に負けるオーク達なんか、相手じゃない❞
私は、〈臨界・励起翼〉で〝戦艦を斬りつけながら〟飛び回る。
「この砲台貰った!!」
そうこうしていると、オーク戦艦からマグマのような炎が吹き出した。
炎の吹き出しはどんどん広がり、ヒビのような模様をオーク戦艦に描いていく。
よし、轟沈させた。
タタセさんから通信が入る。
『連合戦艦到着しま――え・・・ちょ・・・・(引笑)』




