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354 精霊と妖精ます


 さて、ここからオークたちとの戦いが本格化した。

 私とマイルズ、さっき一緒にレーダー基地に乗り込んだ二人は余裕なんだけど、他の初心者っぽい人たちが結構苦戦してる。


 私はとにかく、みんなに注意していく。


『火力さん、当てにくいからってタンクの盾の前に出ちゃ駄目だよ! ――ヒーラーさん、狙撃してないで味方を回復して上げて、火力さんがドローンで回復頑張っちゃってるから! ――タンクさん突っ込みすぎ、あんまり出ると囲まれる!! 貴方の仕事は倒れないで帰ってくることです!!』


 マイルズも初心者に近づくオークを撃墜しながら、色々言ってる。


『タンク、横陣を組んで前進するんだ。お前らは正に戦車(タンク)だ、同時に塹壕だ、隊列を乱すな、敵は弱った所に集中放火を掛けてくるぞ。――火力、敵の弱点を見つけろ、そこに全員で集中砲火を掛けるんだ、敵の防御が硬いから一点突破するしかない。タンクにヒールが間に合わないのは、お前たちが敵を減らさないからだ。お前たちこそタンクの命を握っていると考えろ! ――ヒーラー、お前らが塹壕を護る要だ、ヒールを当てられないなら仲間に近づくんだ』


 エレハントさんがタンクの隊の右端で嵐のように振ってくる弾丸を防ぎながら、私に笑う。バリアが砕かれそうになる前に下がってる。無理しないのが良い。


『スウとマイルズ、大変だな』


 にしてもエレハントさんって、あれだけの弾丸を受けて怖くないなんて、すごい豪胆。それに後ろの味方の状態もちゃんと見ている。しかも今日なんか、右端に選ばれてるし――横長の横陣って、正面はめちゃくちゃ強いけど、両端が一番の弱点になるんだよね。正に一点突破される第一候補。

 そこに選ばれるって言う事は、連合から信頼されたって事なんだと思う。


 レナさんがバリアを失ったオーク機を、すかさずヘッドショットしてカメラ・アイを砕いてエレハントさんに相槌を打つ。


『でもさすがスウとマイルズのネームバリューね、みんな素直に言う事を聴いてるわ。私達が言ってもこうは行かない』


 私がこの前教えたせいだからだろうか、レナさんは周りをしっかり見てる。味方がどこから撃っていて、何を撃ってるかチェックして、チャンスが来たら速攻狙撃。やっぱりレナさんって、元々の射撃の腕は悪くない。


 タマさんがエレハントさんだけでなく、担当以外のタンクさんにまで回復のカバーを入れながらおっとりと話す。


『そりゃあ、二人共超有名人だものねぇ。特に上層の攻略に一度も来たことなかったらしいスウちゃんと一緒に戦えるチャンスなんて、めったに無いわ。あたしもアドバイスはどんどん受けたいわ』


 前に出過ぎなくなったタマさんは、凄く頼りになる。

 タマさんはできるだけ後方に下がることで、戦場を広く見渡し把握して、戦場全体にカバーを入れている。

 遠くからでも、きちんとヒールビームを当てるだけの腕も有る。

 素早く変則的に動き回る味方の小型機にすら、きちんとヒールビームをヒットさせている。

 あんなヒーラーがいれば私も安心できる。


 タタセさんが、戦場を見渡せる高台から指揮をする。


『皆さん、このオークを集中砲火してください、マップに情報を送ります。ここが手薄になっています。あそこから陥落させていきましょう!』


 タタセさんは、刻一刻と変化していく戦場の情報をその目で見て、敵の弱点を的確に見つけて火力を集中してる。


 うん。

 四人とも、もうワシが教えることは何も無い。

 というわけで私は、自分の戦場に意識を戻す。

 すると私の視界でマイルズが『ハイ・ヨーヨー』をする。

 ・・・・めちゃくちゃ綺麗だな、マイルズのハイ・ヨーヨー――さすが本職。

 あんな綺麗なハイ・ヨーヨーしてるプレイヤーを見たことがない。


 完璧な角度と最適なGでハイ・ヨーヨーをしてる。横の円から、縦の円へ、そこから背面飛行で、槍で刺すような追撃。

 降下しながら重力による偏差が掛からないガトリングで、オーク戦闘機を蜂の巣にする。

 やっぱ、マイルズ(このひと)は凄いな。

 敵を倒し終えたマイルスが、撃墜を確認しながら通信を入れてくる。


『今日PTを組んだあの3人、初心者にしては随分やるな。手練か?』


 おお、マイルズまでエレハントさん、レナさん、タマさんを褒めてる。嬉しい。


 皆さんが喜ぶ。


『え、マジで? マイルズ・ユーモアが褒めるほど!? 俺等そんなにやる!?』

『スウちゃんに、ちょっと手ほどき受けただけなのに!』

『確かに、今日は楽なのよぉ。この前まであたふたしてたのが嘘みたい。前に出ないだけでこんなに違うのね――っと、ちょっと下がりすぎたわ、狙われちゃった。もうちょっと前に出るわねぇ』


 タタセさんまで、


『マイルズさん、私はどうですか!?』

『ああ、素晴らしい指揮だ。はじめは前に出すぎかと思ったが、なるほど――MoBからは目視でないと、情報が得にくい。しかもジャングルの樹々が邪魔で、上空からドローンで情報を得るのも難しい。だからこその前線に出ての指揮か。いいと思うぞ』

『青き精霊の英雄に褒めていただけるなんて、光栄です!』

『あ、・・・・ああ』


 マイルズが青き精霊って呼ばれて若干、戸惑っている。

 青き精霊って元々は悪口だったって、さっき言ってたもんね。


「ふふっ」


 私が思わず微笑むと、マイルズが「スウ・・・」と不機嫌そうな声を出した。ごめんて・・・思わずだから。

 すると、男性の通信士さんが広域通信で士気高揚のためみたいに大声を出す。


『我々には青き精霊と、銀河の妖精がついている。精霊と妖精がいれば百人力だ! 皆、安心して戦え!!』


「え、私も!? ――精霊と妖精!?」

『ざまあみろだ、Her スウ Her スウ』

「歌わないで!」

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