353 ランチェスターさんを無視します
❝スウたちは、相手めちゃくちゃ多いのに、逃げないで戦うのか❞
❝航空戦ではあり得ない光景❞
❝法則とかまるで無視かよwww❞
敵の戦闘機が、上に向き直るのに手間取ってる。
「やっぱり。あの戦闘機、上下左右の方向転換が苦手だ」
上下左右の方向転換に、一個のエンジンしか使えないから。
どうぜなら星戦争な、エックス型に配置すべきだったね。
「ランチェスターの法則はあくまで全員が互いに攻撃出来たらの話だし。やり込める方法には、向こうに攻撃させないという手もある」
❝スウってまさか、そんな事まで考えて上からの一撃離脱を選んだの?❞
❝マジカヨ。だからマイルズが『いい指揮』って褒めてたのか❞
『しょせんブタの戦闘機、という訳だ』
「でも斜めの動きは馬鹿にできないから。多分あの戦闘機の翼、シーソーみたいに――ほらやっぱり」
敵の戦闘機の翼が、斜めになった。
『どういう発想なんだあれは・・・理解に苦しむ。斜めの空戦機動でもしようという発想か?』
「敵の体勢が整う前に落としちゃうよ」
『了解』
私達はバルカンやらミサイルやらで、敵機を撃墜していく。
反撃も来るけど、くるくる回って躱す。
そうして敵の間を抜ける。
落下の加速を殺さないように機首上げして、再び上空へ。
よし、敵が残り3機になった。
❝この4人つええな❞
❝でもやっぱマイルズとスウは別格だなぁ。撃墜数も、スウが4機マイルズが3機。残りの2人が1機づつか❞
『スウ、後はボクたちに任せて、お前はレーダーを破壊しにいけ』
「りょ」
私は目標を変えて、スナップロールしながら急上昇。
基地から、一斉に機銃の弾が飛んでくるけど、その間を縫っていく。
私は、十分な高さまでくると、急降下。
ロケットエンジンと降下の勢いで思いっきり加速しながら、レーダーをロックオン。
「フォックス・スリー」
無数のミサイルが飛んでくけど――バリアがあるのか。
――かなり硬そう。
私は〈臨界励起バルカン〉と〈汎用バルカン〉を放ちながら、レーダーに接近。
「まだ破れないの? 硬すぎ・・・・」
銀河連合のバリアより硬くない? 本当にオークって、一部で銀河連合より上の科学力持ち出してくるのかあ。
❝おいおい、大丈夫かこれ❞
❝フェアリーテイルが、バリアにぶつからんか?❞
私はペンダントを握る。
「――トビラ・オブ・カナガワ!!」
ゲートを開いて6つの武器で、一斉掃射。
❝そうか、スウにはそれが有った❞
『え、なにあれ』
『・・・バーサスフレーム以外から、バーサスフレームの武器が』
❝シャンさんとパンさんが困惑しとる❞
❝そりゃそうだろうなあ、俺等も最初ビックリしたもん❞
「よしバリアが破けた」
私は勢いを殺さないまま、〈臨界・励起翼〉でレーダーを真っ二つにした。
「レーダー破壊任務完了。これより全機帰投します」
『こっちも片付いた。長居は無用だ。印石が出たが、回収は流石に不可能だろう』
実は私にも出たらしいけど、敵の基地に降りて取りに行く気にはならない。
念動力で取れる距離でも無さそうだし。
ちょっともったいない気はするけど、私なら後でまた出るだろうし。
シャンさんとパンさんも同意する。
『敵が出てくる前に』
『帰ろー!』
4人で一斉に反転、連合の陣地に戻る私達。
連合から通信が入る。タタセさんだ。
『お見事です。スウさん、マイルズさん、シャンさん、パンさん。プレイヤーの皆さん歓声を挙げて待ってますよ。こんなスムーズなオーク拠点攻略は初めてです。私達銀河連合も、お帰りをお待ちしております』
「はい」
『ああ』
『ふー、終わった』
『こういう戦いも有るんだねえ。初体験』
「私も初体験」
私が言うと、また急にマイルズのウィンドウが開いて、なんか怖いものでも見たみたいに震えてる。
『スウ・・・マジかお前、先に言ってくれ――ボクは、お前に指揮を任せてよかったのか?』
「え、いや・・・・まあ。ゲ、ゲームではやったこと有るし」
ロボットでも戦闘機でも、何回も基地襲撃ならしてきた。
『ゲ、ゲームか・・・・そうか。そうだな・・・初めてと言うには、手慣れすぎだとは思ったが。――そうか、ゲームか』
マイルズが、心の何かをねじ伏せるような顔で、納得しようとしていた。
い、今どきのゲームはリアルだから。
という訳で私とマイルズは、エレハントさんたちの所に戻ってきた。
シャンさんとパンさんとは、手を振ってお別れした。
「幸運を」
『そちらも』
ってなんかパイロットみたいにやり取りして帰ってきたんで、マイ・マインドが今、ハピネス。
帰ると、エレハントさん、レナさん、タマさんが迎えてくれた。
『おかえり』
『早かったねー』
『配信でみてたわよー。鮮烈な戦いねぇ』
エレハントさんがロブでハイタッチをしてきたんで、私もフェアリーテイルで返す。という、整備士さんが怒りそうな光景が展開された。
か、軽く当てただけだよ、軽く。
さて、この後はどうするんだろう。
すると私の考えを読んだのか、マイルズが答えてくれる。
『次は、敵の本拠地を潰しにいくらしい――今までで最大のオーク基地という情報だ。相当な抵抗が予想されるそうだから、覚悟しておけ』
「わかった。覚悟しとく」
『いや、お前に言ったのではない。エレハントと、レナと、タマに言ったのだ。ランチェスターの法則を無視できるお前はもう、勝手に暴れてくれ。――お前はオーク相手なら、ほんとうに何をしても大丈夫だろう』
「えええ!?」
マイルズにため息を吐かれた。
❝スウたん見捨てられたwww❞
❝だってコンピューターRPGに例えるなら、レベルマックスで2、3番めの村の近くのモンスター倒しに来てるようなもんなんだもんwww❞




