347 アドバイスします
ちなみにみなさんは、雑談をしながらもデブリを着々と集めていってる。
私もフェアリーテイルに戻ろう――と、無重力をケンタウロスユニットで飛んでいると〖第六感〗の耳鳴りがした。
ヒヤっとしてしゃがむと、溶けたネジみたいなデブリが私の頭の有った場所を弾丸のように飛んでいった。
怖ッ――雪花があるから怪我はしなかったと思うけど、ぶつかったら吹っ飛んでたかも。
デブリを集めるのも、危ない作業だ。舐めてちゃ駄目だ。
❝こええ!❞
❝そりゃ戦闘で生まれたデブリだし、爆散の勢いのまま漂ってるんだから当たり前だけど、クソ危ないな❞
私は壁に当たって跳ね返ってきたネジを〖念動力〗で回収すると、いそいでフェアリーテイルに乗り込む。
とりあえず、ここならもう大丈夫。
コックピットに座って、雑談再開。
「みなさん。クレジットなら、ボス戦とか参加すれば結構入ってきますよ? アテナ戦で拠点構築してた人にも、500万入ったらしいですし」
『拠点建設でも、俺等一般人がボス戦とか行ったら―――死ぬって。ボスが何百もいる横で拠点建築する奴らも大概頭おかしい』
『この間も初っ端〈狂乱〉ミダスがいきなり100体でしょ? 10体位しか出現しないって言われてたのに10倍って。最近のボス戦は、不測の事態が起こりすぎて怖い』
まあスーパートップ・ガンみたいな人もいたしなあ。
私って、感覚麻痺してたのかな、やっぱそうだよね。
ダンジョンのボスとアテナは、私もヒヤヒヤしたし。
今日くらいの難易度がずっと続けばいいのに。
でもここ、上層だからなあ。奥へ進むと話も変わるんだろうなあ。
レーダーに掛かるデブリを、重力棒であらかた拾い終えた。
あとは遠くへ飛んでっちゃうデブリばっかなので、ワープ補助装置を設置する邪魔にはならない。
『みなさんお疲れ様です。クレジットと勲功ポイントを送信しました。あとは帰投なさってくださって結構です』
『マイマスター、銀河クレジット500と、勲功ポイント250が振り込まれました』
――安ッ!!
数字の後に『万』が付いた報酬ばっか受け取ってたからなあ。
これが普通の感覚なんだね。
「じゃあ、約束通りみなさん何か奢りましょうか」
『やった、サンセット・サリハラの牡蠣・カレーが食べたい!!』
『すみません、弾丸補充してくれませんか』
『アタシ、燃料を入れてほしいわぁ』
こうして初めて会った人たちに色々奢ることになった。
え、対面して大丈夫だった?
駄目でした。
「スウさんの強さの秘訣ってなんなんですか?」
「あ、あのっ――それは」
「聞きたい!」
「アタシもよぉ~!」
「是非、ご教授ください!」
「えっと・・・っ」
私を見つめる、真剣な四つの双眸。
私に質問をしてきたレナさんは、下半身がペンギンみたいにモサっとしたパイロットスーツを着てる、靴はブーツだけど。メガネの女性でちょっとマジメそう。
つぎに口を開いたエレハントさんは、無精髭にポニーテールの男性。イケメンだと思う――けど身だしなみを整えてない。でも人懐っこい笑顔が可愛い。
最後に話したタマさんは、名前に似合わず高身長な男性。ただガッシリという感じではなくスラッとしている。どうやらオネェ系という人らしい。セミロングの髪にシンプルな格好だけど、中性的な見た目。シンプルな格好でオネェ系ということは――そう、元の素材が良い。
最後に通信士の女性、タタセ・アルジェントさん。清潔そうな人で、青い制服に、船を逆さまにしたような小さな帽子を被っている。ヒューマノイドさん。
髪の毛は、後ろでお団子にまとめている。
「えとっ、その」
(私の飛行技術の秘訣ってなに・・・? というか秘訣ってなに? そもそも私ってなに? ここはどこ)
などと私が、思考のコンパイルに失敗して、エラーを吐いていると。
「ゆっくりで良いわよぉ~」
タマさんが、メガトン・パフェに長いスプーンを突っ込んで優しく微笑んでくれた。
ちょっと落ち着いた。
ちなみに「メガトン・パフェとか、随分遠慮ないな」なんて思った人もいるかもだけど、皆さんに私の所持クレジットを見せて「遠慮しないで、好きなものを頼んでください」って言ったんで、全員遠慮していない。
皆さん、ちょっと唖然としながらも「それじゃあ遠慮なく」と、自由に頼んでくれたんで嬉しい。
タタセさんが、上品にスペシャル・ミルフィーユアイスに頬を緩ませて尋ねてくる。
「そうそう、スウさんって才能も有りますけど、努力もしてるんですよね? どんな事してたんですか?」
「あ・・・・そういう事なら、VRトレーニングを24000時間ほど」
「24000時間・・・・」
「・・・そりゃ強くなるわけだ」
牡蠣・カレーを食べていたレナさんとエレハントさんが、ちょっと引き気味になった。
あまり引かないでください! コミュ障を発症しちゃいます。
タマさんが星型に切られたスイカを、食べながら尋ねてくる。
「明日からパッと強くなる方法ないかしら?」
「それは・・・流石に無いです」
「そうよねぇ」
「でも」
「でも?」
「皆さんの戦い方見てみましょうか? 弱点とか分かるかもしれません――かもですが。あと私は、戦闘機の戦いしか良くわからないかもしれません」
「それいいわね! よろしく頼むわ!」
「戦闘機だけでもいいわよー」
「ありがたいぜ!」
という訳で、私は皆さんの操縦をVRで見ることになった。




