341 無尽の太陽と、無心の月
今にも爆発しそうなショーグン・ゼロと、ダーリン・インフィニティからアリスと、リッカが飛び出して、オラクルAとオラクルBに乗り移る。
『なんだ、あの機体は――喋るとか。・・・・ま、まさか特機か!? 不味い!! ・・・・乗らせるな――潰せぇ!!』
ティラノノーツが〈240mmキャノン〉を放つが。
『雑魚が』
オラクルBの作り出した分厚いバリアを、毛ほども抜けない。
ここで、ショーグン・ゼロと、ダーリン・インフィニティが遂に爆発して宇宙の塵となった。
その光景を少し寂しそうに眺めたアリスとリッカに、新たなる機体が尋ねてくる。
『さて、我らが力の担い手二人よ、我らをなんと名付ける』
「名前ですか」
『金と銀、まるで太陽と月』
「太陽と月ですか。では私のオラクルAは、今からサンライト・ショーグン・ゼロ」
『ゼロは残すの?』
「気に入ってるので」
『じゃあオラクルBは、これよりルミライト・ダーリン・インフィニティで』
『承知!』
『心得た!!』
「まあ長いから、呼ぶ時はいままで通りショーグン、――ダーリンでいいですか」
『だね』
一気にアリスとリッカ、パイロット2人のVRにサンライト・ショーグン・ゼロとルミライト・ダーリン・インフィニティの能力詳細が表示される。
数値をみたアリスは、唸る。
映し出される能力のほぼ全てが、ニュー・ショーグンの1.5倍。
「やっぱり特機は凄いですね」
特機に乗るのが初めてなリッカは、大きく驚く。
『・・・・これが、特機』
襲いかかってきた敵の残り――170人が及び腰になる。
『おい、あれ特機じゃね?』
『課金ショップにあったやつじゃないか・・・? SOLD OUT(売り切れ)になってたけど、まさかアイツらが買ってたのかよ』
アグレスが、コックピットに拳を叩きつける。
『またズルかよ! 俺等は買えないのに!』
するとサンライト・ショーグン・インフィニティが呆れた声を出した。
『小童。まさかお前、我らを手に入れさえすれば我らに乗れるなどと迷妄を抱いておるのか?』
『めいもう!? ――当たり前だろう、俺のものなんだから!!』
サンライト・ショーグン・ゼロの機械質な笑いが、通信にこだました。
『おめでたい輩だ、これほど愉快な諧謔を聴いたのは何時ぶりか』
『クハハハハ! いかにも。――いいか小童、お前は我らを手に入れても決して乗る事かなわぬ』
『然り、我らは我らの認めた者しかこの内に入れぬ』
『はあ?』
『貴様のように、他者を羨むばかりでなんの努力もせぬ者を――』
『我らが認めることは――』
なにかオーラの様な物が、篇世機から吹き出した。
『『――絶無なり!!』』
まるで機械とは思えない圧力のような物が放たれ――猛獣に睨まれたような怖気が、170人に襲いかかる。
相手がAIにもかかわらず、この場にいる170人がその威容に圧倒される。
『やってしまおうぞ、我らが愚直な娘たちよ。その直ぐな歩み、止める必要はない――』
『汝らに立ち向かうあらゆる障害、我らがことごとく粉砕して、その歩みを止めさせはせぬ――』
『『――汝らは進め、ただ真っすぐ!!』』
「はい! これからお願いします、サンライト・ショーグン・ゼロ」
『――ふふっ。よろしく、ルミライト・ダーリン・インフィニティ』
アリスが、ハイパー・刀マグナムを上段に構える。
アリスが得意とする、上段の構え――その見事な立ち居姿に、170人が再びたじろぐ。
『アリスよ、汝は確か遠距離攻撃が苦手であったな?』
「あ、はい」
『ならば両腕を飛ばしてしまえ』
「えっ」
『我の腕はドローンの様に遠隔操作が可能であるぞ、しかもVRでの操作が可能なり。其の名も〈凶暴なる技巧〉。この武装なら、剣技が得意な汝なら遠くに命中させられるであろう』
「そうですね、はい!!」
アリスがショーグン・ゼロの左腕を飛ばして敵に斬りつける。
出力が低く、重さは乗せにくい物の――確かにこれなら遠距離が苦手なアリスでも命中させられる。それに重さの問題は〖重力操作〗である程度解決できる。
アリスの剣技に為す術なく撃墜されていく、敵のバーサスフレームたち。
リッカが物欲しそうに、おねだりするように呟く。
『あれ便利――ねえ、ルミライト・ダーリン・インフィニティには、ああ言うの無いの?』
『もちろん有るぞ、叫べ〈理合の境界〉』
『やった!! 行け―――理合の境界!!』
ルミライト・ダーリン・インフィニティの左腕がハイパー・ソードリボルバーを構えて放たれる。
腕だけとは言え、リッカの超絶技巧を繰り出されてしまっては、誰も勝つことが出来ない。
『やばい、この特機とんでもないぞ!』
『強いとは言え、たった二機だ。後ろの空母とスワローテイルは遠距離から攻撃してくるだけ、総攻撃を仕掛けろ!』
しかし水を得た魚と化したこの二人に対しては、最早、人数差で勝とうなど甘い考えだった。
遠距離でも、アリスの暴風のような攻撃が――リッカの無駄一つない理詰めの攻撃が襲いかかる。
しかも高校生とは言え、日本一と二位だ。
彼女等が特機を得た今、一般人が勝てる道理はない。
しかもアイスハート所属の上級者が「遠距離は不利だ」と感じて近寄れば、むしろアリスとリッカの得意距離はそこで、さらに恐ろしい攻撃に曝される。
最早、この二人に死角は無かった。
20機程を撃墜したところで、アリスが気付く。
「リッカ。これ、もしかして合体したほうが――」
その言葉にリッカも気づいた。
『――そっか、よしアリス、合体だ!』
アリスとリッカが、遠隔操作していた腕を呼び戻して合体を行う。
『やべえ、あれ合体機かよ!!』
『なんだよ、ここからが本番だってのか!?』




