表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

336/464

338 這い寄る足音


◆◇Sight:立花 みずき◇◆




「ハッ」


 わたしはダーリン・インフィニティのワンルームで目を開いた。


「こ・・・・ここは? そうだ、わたし確か涼姫に12倍VRで残虐行為をされて・・・・!」


 そ、そっか寝ちゃったんだ?


 許してもらえた?

 にしても・・・・わたしは昨日VRで行われた、凄惨な出来事を思い出す。


 手の平を見れば震えているのがわかった。


 最初の頃は「まあ、一発くらい当てられるだろう」フェアリーテイルはスワローテイル以上の紙装甲だから、「当てた隙をついて、もう一発叩き込めば勝てる」なんて思ってた。


 甘かった。

 当たらないなんてもんじゃない、未来予知でもしてるんじゃないかってくらいに対応してくる。

 なんならもう、こっちが撃つ前に避けてる。


 完全に読まれてる。


 普段、わたしはあんまり使わない機関銃を連射しても、くるくる回って避けてくる。


 逆回転で追うと向こうも逆回転を始める。

 そりゃぁ弾丸が届く時間を考えれば目視で避けられるとは思うけど、一発も当たらないってなんなの!?

 そんなことがVR内時間で24時間続いた時は、流石に泣きを入れた。


 「もう止めて、もうやめよう?」って。12倍の速度で動いてる脳が悲鳴挙げまくってるし、なんならVR内時間で16時間くらいで眠くて仕方なかった。

 そんな風に、こっちは疲労困憊なのに、涼姫はケロッとしてるんだよ。


『駄目だよ、この程度で諦めてたら。――勝つまでやれば、勝てるんだよ?』

「勝てないんだよ!!」


 わたしは叫んで、恐る恐る尋ねた。


「涼姫も眠いでしょ?」

『全然大丈夫だよ。VRで3徹とか普通にするし』

「それって、VR内時間で72時間一切寝ないこと?」


 って訊いたら。


『うん』


 って返されて、この辺りで脳内に危険を示すサイレンが鳴り始めていた。


 その後も全く遠距離攻撃が当たらず。

 ならばと追いかけても、追いつくことも出来ず。


 ドッグファイトなんか論外。


 柔術の達人が相手を軽々と投げ飛ばすみたいに、いつの間にか追い越させられている。


 相対速度を合せられて、フェアリーテイルの翼で足を絡められてロケットエンジンを変な方向に曲げられて、地面に投げ飛ばすように墜落させられた時は「アホか!!」って叫んだ。

 だけどあれで涼姫は、スキルを使わず手加減してくれてるんだよ。

 こっちはガンガンスキルを使ってるのに。

 しかもアリスと二人がかりで戦ってて・・・・アリスが重力を重くしても、軽くしても、気にした様子もなく飛び続けるもんだから。

 アリスは「スキル・・・発動失敗してます?」とか混乱してた。


 でも、72時間超えた辺りだった。


 流石に涼姫にも疲れが見え初めてきて、隙が出来た。

 だから、逃げ場のないトンネルに追い込めた。


 アリスが後ろから追いかけ、わたしはトンネルの前に陣取った。

 そして涼姫が出口に向かってきたところで、弓から矢を放った。


 フェアリーテイルの側に車があって、避けられないタイミングで。

 わたしは、捉えたと思った。

 こんどこそ当てたと。

 そうしたらあの化け物、何したと思う?


 戦闘機のまま、白刃取りだよ。


 飛んでくる矢を掴んだんだよ。


 「これでやっと終わる」と思ったら、パシンって矢を白刃取り。


 思わず叫んだよ。


「んなもん、当てられるかぁぁぁぁぁぁ!!」


 しかもあの化け物、矢の勢いを殺さず後方に投げて、アリスが矢に当たって撃沈。

 わたしが機関銃を準備している間にこっちを〈徹甲バルカン〉で撃墜。


 勝てるわけ無かろう!!


 流石に白刃取りとかされたらもう絶対勝てないんで、一応あの方法は無しにしてもらった。


 わたしが記憶から現実に戻り、震えていると、タラップをゆっくり上がってくる音がした。


「みずき~――」


 わたしは布団を被って震え上がる。


 大の苦手なおばけにも、こんなに震えたことはない。


「――今日も休みだから、そろそろ特訓・・・・」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」


 わたしは迫る脅威に、必死に布団の中で手を擦り合わせ拝んだ。




◆◇Sight:八街 アリス◇◆




「ハッ」


 わたしはショーグン・ゼロのワンルームで目を開きました。


「こ・・・・ここはどこですか? そうです――わたし、確か涼姫に12倍VRで残虐行為をされて・・・・!」


 そ、そっか寝ちゃったんですね?


 許してもらえました?

 にしても・・・・わたしは昨日VRで行われた、凄惨な行為を思い出します。


 手の平を見れば、震えているのがわかりました。


 最初の頃は「二人がかりなら、流石の涼姫相手でも追いつけるでしょう」なんて思ってました。


 速度もスワローテイルまで落としてもらいましたし。

 さすがにフェアリーテイルでは速度に差がありすぎて無理ですので。


 甘かった。そもそもドッグファイトは追いつく追いつかないじゃなくて、後ろを取るものでした。

 しかもあの人消えるんですよ。


 ビルの間、木々の間。様々な遮蔽物を使って突如姿を消すんです。

 こっちはビルの間を亜音速で飛ぶのすら無理です、それを涼姫は余裕でこなします。


 亜音速どころか、音速の3倍で飛んでも平気です。

 いくら脳を強化していると言ってもメチャクチャでしょう。

 で・・・・ビルの間に入って、いつの間にか後ろにいるんですよ。

 もはやホラーです。

 さらには、こっちがショットガンを放っても、散弾と散弾の間を抜けるんですよ。完全におかしい。

 それは弾丸が届く時間を考えれば目視で避けられるとは思いますけど、一発も当たらないってなんなんですか?!


 そんなことがVR内時間で24時間続いた時は、流石に泣きを入れました。


 「もう止めてください、もうやめましょう!」って。12倍の速度で動いてる脳が悲鳴挙げてますし、なんならVR内時間の20時間くらいで眠くて仕方なかったです。

 そんな風に、こっちは疲労困憊なのに、涼姫はケロッとしてて。


『駄目だよー、この程度で弱音吐いてたら。――勝利は、諦めなかった者の元へ来るんだよ』

「勝てないんですよ!!」


 わたしは、恐る恐る尋ねました。


「涼姫も疲れたですよね?」

『全然大丈夫だよ。やっと温まってきたところだよ』

「やっと!? じょじょじょ、冗談ですよね!?」


 って訊いたら。


『ほんとだよ・・・?』


 などと困惑されて、この辺りで脳内に危険を示すサイレンが鳴り始めていました。


 その後も全く追いつけず。

 ならばと散弾を連射する機関銃を放ちまくっても。全然当たらない。


 ずっとみずきと十字砲火してるのに「なんで当たらないんですか!?」「弾幕よりは、楽かなあ」なんて言われる始末。

 むしろ涼姫は躱しながら、こっちを的確に狙撃してくるんですもん「遠距離じゃ絶対に勝てない!」ってなりました。


 しかもあれで涼姫は、スキルを使わず手加減してくれてるんですよ。

 こっちはガンガンスキルを使ってるのに。


 みずきと二人がかりで戦ってて・・・・みずきのスキルで水球で包んでも、水圧かけても平気で飛び回るものだから。

 みずきは「おかしい、あそこだけなにか物理法則が狂ってる」とか混乱してました。


 でも、72時間超えた辺りです。


 流石に涼姫にも疲れが見え初めてきて、隙が出来ました。


 行き止まりに追い込んだので、涼姫はこっちに逆走するしかなくしました。


 「正面からの勝負、これなら勝てます!」って思いました。


 ところが逆走してきたフェアリーテイルが飛行形態のまま、〈励起翼〉でわたしの〈刀マグナム〉と鍔迫り合いを始めた時は、もうドン引きでしたよ。

 さすがに近間ならわたしに一日の長と思ったのに、わたしがインターハイでみずきに放った磨り上げを戦闘機で真似されて、わたしの〈刀マグナム〉が宙に舞う始末。


 「やった、アリスの真似出来た!」とか言い出した時は、白目で吐血するかと思いました。


「こんなの・・・どうやって勝てと・・・・」


 そろそろ涙目です。

 さらにその後、もう一度追い詰めた時も右の翼で〈刀マグナム〉を受け止め、私の周りをくるりと回り、切りつけられた時はすすり泣きました。


 勝てるわけ無いでしょう!!


 わたしが記憶から現実に戻り、震えていると、タラップをゆっくいり上がってくる音がしました。


「アリス~――」


 わたしは布団を被って震え上がる。

 わたしは苦手なものはあまりないですが、こんなに震えた覚えはありません。


「――今日も休みだから、そろそろ特訓・・・・」

「我らが神よ、どうか救いたもう!」


 わたしは迫る脅威に、必死に布団の中で手を組んで祈りました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 相変わらずスウちゃんはパイロット状態なら無双モードですなぁ…。二人から言い出した特訓ですが……預かり知らぬ所で不穏なバカが現れてますし、腕を錆び付かせない為の良いトレーニングにな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ