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335 クランハウスをゲットします


 言ってると、ビィィィというサイレンがなった。


 マスドライバー列車が射出され、Gが私達に掛かる。


 Gといっても、3G位だけど。

 緩やかなジェットコースターくらいのGかな?


 やがて、風を切り裂くようだった外の景色がゆっくりになってきた。


 Gが軽くなってきたのでリあンさんが、会話に戻る。


「結構な人数が〖飛行〗がある洞窟探してるんだけど、全然見つからないんだよなあ――米軍に問い合わせても『That's a secret.(ふふ、内緒だよ)』って言われたし」


 え、リあンさんって普通に米軍に問い合わせるんだ?

 でも、私もあの洞窟に〖飛行〗を取りに行くのは嫌なので、同意。


「正直私も、マイルズが居ないとあそこは行きづらいです。超キモいんですよ、あの洞窟」


 コハクさんが眉をひそめる。


「分かります。アーカイブ見て、ゾっとしました。スウさんよくあんな恐ろしい場所行けましたね。なんていうか。50層のダンジョンは全然大丈夫だけど――ホラー階は例外として。――あの洞窟は、自然だからこその独特の恐怖感というか」

「でも、50層のダンジョン達はなんだかんだで、アイリスが楽しそうに遊んでる感覚がありましたよね」

「あー、そう言えば最近、遊園地みたいなダンジョンも見つかったみたいですよ?」

「ダンジョンって、まだ攻略されてるんですか?」

「はい全然攻略されています。熱気はまるで冷めていませんよ。ドロップは少ないですが、科学じゃ解明不能なアイテムが産出されますし。まだまだ一攫千金を狙ったり、自分を強化するのにって感じでダンジョンに挑戦している人は沢山います。プレイヤーではない一般人でも入れるような、スライムとかしかでないダンジョンとかも発見されて一般人も来てます」


 アイリス、完全に楽しませに来てるじゃん。


 リあンさんがスマホを取り出して何かを検索する。


「うん、まだ毎日3~5万人は訪れてるらしい。それに新しいダンジョンもまだまだ発見されてるし。今、5つくらいダンジョンが有ったっけ?」


 大きめなテーマパークの来場者数くらいなのかな?

 5つくらいしか無いダンジョンで狭い場所だから、5万人も訪れたら結構過密そう。

 リあンさんが、コハクさんと空さんの肩を叩く。


「ウチとコハクと空は、まだまだダンジョンがメインだわ。とりあえず1個くらい最下層まで行ってみたいし」


 となると、この中で活動内容が分からないのはオックスさんだけになった。いや、全員の活動を明かす必要なんて無いんだけども。


 尋ねてみるか迷っていると、オックスさんが先に私に尋ねてきた。


「そういえばスウ、200層のホール・ボス。ソロで倒したらしいが、どうやったんだ? アテナの時はフェアリーテイルの中から見えていたが――50層のダンジョンのボスはドローンが黒体に包まれてたから、倒したところは配信に映ってなかっただろ? 酒場でよく訊かれるんだよ。『スウさんは、どうやってソロでホールボス撃破したんですか?』なんて――『いや、わからん』としか答えられなくてなぁ」

「あーっと。敵がゴーレムだったんで、〖洗う〗で文字を消したんですよ」

「あー。そんな伝説があったな」

「そういえば、オックスさんは、最近どんな事してたりするんですか?」


 私は、尋ねてみることにした。


「俺は、ほぼバーテンだよ」


 あーーー。そっか。

 ――あれ? でも待って。


「フェロウバーグのクランハウスのお店、まだそんなにお客さん来るんですか?」

「前より増えてるぞ、一般人も沢山来ている。スウの写真集、フェアリーテイルもまだまだ飛ぶように売れているしなあ」

「え・・・・」


 アリスが悍ましい事を、呟く。


「フェアリーテイル、第5版増刷決定です。ただいま販売数500万冊」


 そうして、みずきがしずかにささやく。


「――バッドエンドなんかじゃ、終わらせない――」


 私は青ざめて、意識を混濁させ始めた。

 そして口が勝手に、何かを語り始める。


「『――いうまでもなく、彼は発狂していたのです。しかし、何が彼を発狂させたのでありましょう、玉の中にとじこめられたくらいで、気の狂う男とも見えません。』」


「スウさん、しっかりして下さい! 急に『鏡地獄』を暗誦(あんしょう)しだすのは、もう止めて下さい!!」


 なにやら隣に座るアリスに急に肩を、がっしり掴まれ激しく揺さぶられた。


 私は「ハッ」と我に返る。


「あ・・・・ああ、びっくりした。なんだか急に内側が全て鏡で出来た球体に閉じ込められたような映像が、頭に浮かんで」

「それはホラーですから考えてはいけません!」


 リあンさんが「何を茶番をしてるのか知らないけど――」と言ってから続ける。

 ――いや、ガチ目に発狂しそうなんですよ。

 美しくもない私の水着姿を、今も全世界の紳士淑女が眺めていると思うと、かなり発狂物じゃないですか・・・。


「――ダンジョン内にお店を構えてるヤツ等から『スウさんとアリスさんに、物資の搬入を再開して貰えるように頼んでくれないか!!』とせがまれたよ」


 それは・・・。


「・・・・ちょっと時間がないです」

「ですねえ」


 アリスも同意した。私達、やること多いんだよね。

 アリスなんか私より更に忙しい。最近の活動が配信メインになってるとは言え、それでもやることは一杯。

 この前「ショートスリーパーと、VR勉強法が無かったら無理でした。涼姫、本当に助かりました」とか言われた。


 リあンさんは、こともなげに頷く。


「そっか。『頑張れ』と伝えておくわ」

「そ、そんな言い方・・・・うーん」


 いい方法はないかなあ? ――あ。


「じゃあ、沖小路宇宙運輸でなんとか出来ないか聴いてみます」

「なるほど、それはいい考えかもね!」


 これなら私も美味しい――グヘヘ。


 やがて春エリアの駅、スプリングフィールド駅についた。


「よっし、じゃあちょっと上空からクランハウスシティを見回そうか?」


 私が言うと、みんな「早速〖飛行〗が試せる」と同意。


「綺怜くんと綺雪ちゃんは、自分で飛ぶ? ケンタウロスに乗る?」

「ケンタウロスに乗せてもらいたいです!!」

「俺も!」


 二人共乗りたいらしいので、私はバーサスフレームの倉庫から、ケンタウロスパックを取り出してスルリと履く。

 そして四本脚になった。


「ふぉぉぉぉぉぉカッコイイぃぃぃ!!」

「ヤベぇぇぇ人間のロボ形態だあ!!」


 私は二人を馬の部分に交互に乗せて、空からクランハウスシティーを見回した。私が乗せてない人は〖飛行〗。

 みんなで街を眺める。


「どの辺りが良いでしょうねぇ」


 コハクさんが言うと、リあンさんが答える。


「やっぱ駅付近じゃない?」

「NPCのお店も近くにありますし、その辺りにしますか?」


 アリスが言うと、みずきがちょっと反対。


「あんまりうるさい場所はいやだぞー」


 私も納得。


「私も人通りの多い場所は嫌だなあ。うーん・・・・静かで、人通りが少なく、利便性もいい場所――あ! あの川の西側の白い家とかいいんじゃない?」


 アリスが目を向けて頷いた。


「確かに、立地条件良さそうですね」


 リあンさんも、納得。


「ポツンとしてるし、ご近所トラブルも無さそうだ」

「じゃあ、あそこに決めるか?」


 オックスさんの言葉に全員で賛成したのだった。


 こうして、これから長くお世話になるクランハウスが決定した。

 でも、この場所確かにご近所トラブルはなかったんだけど、別のトラブルに巻き込まれる場所だった。

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