334 配布します
「スウさんも、クリスマスからこっちボケてたじゃないですか。暴れ回ったの大晦日くらいじゃないですか?」
「暴れたのは、大体貴女のせいだからね!?」
「昨日もドゴラを膝に乗せて、ケロりんを頭にのせて、リイムと一緒にプラモデルを作るだけの配信とかしてましたし」
「――うん、ああ言うのをずっとしてたい。・・・・あ、良いこと思いついた。私コラボ依頼いっぱい来てるから、また大会を開こう。ソルダートを使った、プラモでバトル大会!!」
「欲望が漏れてますよ」
でも、確かに若い二人の輝く姿を見て、やる気にはなった。
やがてホームにくると、すでに列車が来ていた。
コハクさんが「あ、マスドライバー列車来てますね。早く乗りましょう」と駆け込む。
みんなで彼女に着いていく。
ぞろぞろと、槍のように鋭い形の列車に乗る私達。
自由席なので、私は新幹線の座席みたいな形になってる場所に、適当に座る。
するとアリスとみずきがじゃんけんして、アリスが私の隣りに座――る前に、命理ちゃんが私の隣に座った。
そうしたら「命理ちゃん!」と、命理ちゃんはアリスに引きずり降ろされて、アリスと命理ちゃんがじゃんけん――の間に、ティタティーが私の隣に座って「ティタティーさん!!」と、ティタティーもアリスに引きずり降ろされて、アリスとティタティーがじゃんけんして、アリスが私の隣りに座った・・・早く座らないと、マスドライバーで射出されるよ?
で、さらにしばらくして、みずきが「なんでアリスは、あんなにじゃんけんが強――あ! ギフト使ったな!! ずるいぞアリス!!」なんて叫んで、アリスは口笛を「ふー、ふー」としてた。
何してるのこの人達。
あとアリス、口笛の音がでてないよ。アリスが出来ないことって珍しいなあ。
コハクさんが、私の周りに集まった〝私とダンジョンを一緒に攻略したメンバー's〟に話しかけてくる。
「ダンジョンもアテナも――みなさんはすんごい活躍でしたね。ダンジョンなんか、ほぼ5人だけでなんとかしちゃったじゃないですか、アテナはスウさんがほぼ単独。配信とか見てたら、もう驚きの連続で。・・・・ダンジョンは私達が、まだちょっと強い程度のスライムで手こずってるのに、なんでこの人達はドミナント・オーガ1000匹とかまるで戦争規模の戦いしてるんだろう・・・? ってなんて思ってましたよ」
いや、それに関しては私も同意で。
「ダンジョンに関しては、敵の強さがインフレしすぎて――こちらも最早、自分たちが何をしているのか、訳が分からなかったんですよね」
「倒してた、本人がそれ言うんだ? に゛ゃはは」
空さんがお腹を抱えて笑った。
コハクさんも笑う。ただし掠れた笑い。
「もう生身じゃ、誰も勝てないですね」
「いえ、ドミナント・オーガとかはダンジョンと一緒に消えちゃったんですよ」
私が言うと、コハクさんがなんかちょっと「ホッ」とした。
「あっ、そうなんですか・・・・まあ、ドミナント・オーガが無くても誰も勝てませんが」
「ドミナント・オーガ。見つけたら確保したいなあ」
「ドミナント・オーガを確保したいって、発想がイカれてますよ・・・」
オックスさんが頷いて、顎髭を練る。
「いやあ、――本当に凄かった。全員が生身でバーサスフレームくらいの強さになるんだからな。アリスとリッカは、鉄の巨人をバッサバッサ切り倒すし、命理は新しい体を手に入れて、強さに拍車が掛かるし。ティタティー君の魔術は、もはや意味不明だ」
すると、綺雪ちゃんが私に向かって目を輝かせた。
「スウさん、スウさん! あとで、あのケンタウロスモードやってみて下さい。カッコカワイイの!」
「あ、いいよ――じゃあ、あとで背中に乗ってみる?」
「・・・そっか、乗れたりもしますよね? 是非お願いします!!」
「俺も乗りたい!!」
綺雪ちゃんだけでなく、綺怜くんも手を上げた。
そうなんだよね。考えたらケンタウロス装備って、お馬さんだから後ろに誰か乗せて飛んだりできるんだ。
まあ、後ろ足を武器として使えなくなるけど。――なんか連合に前足に着けれる武器ないかなあ。
「生身で飛ぶの楽しみ!!」
「だよなー!!」
綺怜くんと綺雪ちゃんが目を輝かせ続けているので、思い出す。
「あ、そうだった。飛ぶと言えば、みんなに渡したいものが有るんだった。クリスマスの時渡そうと思ってたのに、忘れてたんだ。――これ」
私は〈時空倉庫の鍵〉から、ダンジョンで取った青い〈飛行〉の印石を(えっと・・・1、2――6コ)取り出す。
「あーーー! これ欲しかったやーーーつ!!」
リあンさんが、口の前で手を合わせて喜んだ。
空さんも、食いつくように印石に前のめりになる。
空さんの席と私の席は、結構距離があるからアレだけど。
私が印石の紐をみんなに、つなぎ直してながら渡していくと、みんなお礼を言って受け取ってくれた。
「ありがとう、スウさん!」
「ありがと、スウねえちゃん!」
「助かる」
なんて綺雪ちゃん、綺怜くん、オックスさんにも感謝された。
印石がほぼ出ないというリあンさんには、感涙までされる。
「お゛おおっ、ほ、本当にありがとうねえ! この印石が有る惑星は分かってるんだけど、あの惑星は嵐すごすぎて近づきづらいんだよ! あたし等だと、惑星のどこに洞窟が有るのかから探さないとだけど、風と雨がエグすぎて探索に向かないし――滅多にない晴れた日に探してたんだけども結局、見つけられなかったんだよ」
ここで、車内アナウンスが聞こえてきた。
『ご搭乗の皆様、シートベルトをしっかりと御確認して下さい。これよりマスドライバートレインの射出を開始します』
あ、シートベルトしないと。
私は席に戻って〖念動力〗でカチリと――なんか、一部の視線が痛い。
アリスがため息を吐いて、みずきが肩をすくめる。
「すぐに、そういうズボラを思いつくんですから」
「スキルばっかり使ってると、ほんとに筋力落ちるぞー」
「いやでも楽なんだよ」




