表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

330/467

332 歌います!

 ◆◇◆◇◆




 大晦日、歌合戦の日。私は逃げた。

 するとアリスは、本当に命理ちゃんに至魂の証を借りて私を追いかけてきた。


 強制的に出演させられる、私。


 野外ライブに引っ立てられた。


 なにこの衣装・・・メッチャ可愛いんですけどお。


 超時空なシンデレラが着てそうなんですけどお。

 なのに、下半身は7のヒロイン風なデルタなんですよ笑う。それはもう、すんごいデルタ。

 Presented(プレゼンテッド)by(バイ)一色アリス。


 ――アリス、着衣ズムはどうしたの!?


『超銀河フェアリー、スウさんです!』


 アリスが舞台に引っ立てられた私を、お客さんに向かって空気で絞殺するような紹介の仕方をする。


 大体、超銀河っていったらラニアケアかグレ◯ラガンだろう。


 私は真っ青な顔でお辞儀。

 あゝ、たくさんの双眸が私を刺し貫く。

 そこ、股間見んな・・・好きでこんな格好してるんじゃないよ、デザインした人の酔狂だよ。


『では聴いてください、〝スウさんに捧げる歌〟』


 光の渦が、私とアリスを照らす。

 だからなんで、捧げられる人間が歌わないといけないんだ?

 むしろ私が捧げられてるぞ、供物にされてるぞ。


『ハ・・・『Herスウ! Herスウ! Herスウ! Herスウ! スウスウスウ!』ゥゥゥ』


 こんなに自分の名前を連呼するとか、昔のスーパーヒーローでもやらないぞ、おぉん!?


 空には飛行機、自衛隊の方すみません・・・・大晦日までお仕事ご苦労さまです・・・・。

 と思ったら、飛んでるの柏木さんらしい。

 じゃあ、いいや。

 などと怒られそうな事を考えてながら、歌い終えました。


 沢山の歌手が集まって唄うライブ会場を、歌合戦に中継されてる感じなので、アリスはここからも数曲歌うらしい。


「おつかれ様よ」


 この会場、普段はスポーツ場らしいので、選手控室を楽屋みたいに使っている。

 そんな楽屋で、フーリに「フレーバー天然水・ひふみあ」を渡される。


 私はフルラウンド戦いきったボクサーがコーナーにもたれかかり、振り絞る力も残っていないような姿勢でひふみあを受け取った。

 あ、力が入らなくてキャップが開けられない〖念動力〗。


「またひと悶着あるかと思ってたけど、何事もなく無事終わって良かったよ」


 私は言ってから、見えざる手で、ひふみあを くぴくぴ する。

 一息ついて、ペットボトルを机においた。


「大丈夫かしら、目がイッてるのだけれど」

「今はね、静かにお寺の鐘を聴いて心を鎮めたい気分」

「ちょっと罪悪感は感じているけれど」

「まあ、他の歌手さんに会えたのは良かったよ」

「そう言って貰えると、救われるわ――」


 ここには、何人か他にも出演者がいて、アーティストさんが沢山いる。


 (岩畑 光央さんいないかなあ)等と、欲望丸出しで首を巡らせる。

 ――あ、あの人、私のイチオシのアニメの主題歌を歌ってた好きな歌手さんだ。


 普段ならサイン貰うんだけど。


 今は『刻の涙』を流してるからなあ。年の変わり目なのに。


「――とりあえず、ご苦労さま。あとはカウントダウンの時、舞台に出てくれるだけでいいから」


 私は脱兎のごとく逃げ出した。


 しかし、なんかガードマンみたいな人に話が行っていたらしく拘束された。


「なんで!? なんでこんなに用意周到なの!?」


 周りの人々が苦笑している。私の大好きなアーティストさんまで苦笑い、わーん。

 〖飛行〗。

 あ、あれ? 発動しない・・・?


「なん――」


 言いかけて、私は気づく。――あ、さっきのお茶!?


「――フ、フーリ!! 一服盛ったね!? あのお茶に、FLの能力を消すドリンクを仕込んだね!?」


 フーリが顔を背けた。

 でもあのお茶開未開封だったのに、どうやって混ぜ――よく見れば、キャップに注射器の針程度の小さな穴が!


「そ、そこまでするぅ!? ――」


 私は諦めて体を弛緩させた。


「――フーリ、今日の事は一生忘れないからね・・・」

「・・・・スウさん、あんまり怖いことは言わないで。こうしないとスウさんを取り押さえられる人なんて、地球上のどこにもいないじゃない」


 いやアルカナくん辺り・・・。ちなみにアルカナくんはドアの外でガードマンしてくれてます。


 私は椅子に座ってしくしく泣く。

 そうして諦めて、スマホで除夜の鐘を訊きながら悟りの境地に至り、色紙を持って周りのアーティストさんたちにサインをねだった。


 普段会えない声優さんとかに会えるのは超嬉しい。

 すると、フーリが苦笑い。


「・・・喜んで貰えてよかったわ」


 順番にねだって行き、私のイチオシのアニメのオープニングを歌っていた歌手さんにもおねだり。


 優しそうな女性の歌手さんだ。


「サ、サインくだちい!!」

「あ、スウさん。私にもサインくれないかな」

「え゛」

「私も貴方のファンで」

「まじぇですか!?」


 こうして二人で握手して、サインしあって、抱き合いまでした。


 私が「デュフフ。。。デュフフ。。。」と言いながらの席に戻ると、フーリが安心したような声を出す。


「ちょっと元気でたみたいね? 良かったわ」

「――いまも逃げたいけどね」


 そうしてライブの最後、カウントダウンをするために舞台に上がる。


 歌手のみなさんが横一列に並ぶ。


 私はもちろん一番端っこ――にいたのに、アリスと私の好きなアーティストさんに真ん中に引っ立てられた。

 だから私を目立たせないで、やめて!!


 暴れる私は、大笑いされながら新年を迎えたのでした。


 あけましておめでとう!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >上半身は超時空なヒロインだけど下半身はファイヤーボンバー 個人的には今は亡きタカ○が販売してた格闘ゲーム『闘神○』シリーズの、ヒロインのエリ○の上半身をちょっと豪華にしたらイメ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ