331 幸せを噛み締めます
❝ワハハハハハハハ❞
❝オックス氏も空気が読めるなあ❞
「や、やめてください!」
「おっとすまんかった、バーテンダーをしていると、客によく弾かされるんでな」
「その客は出禁にしてください!!」
「なぜスウさんは、あんなに嫌がるのでしょう」
アリスが首を傾げた。
私は力説を開始。
「褒めようとしてくれる気持ちは嬉しいよ! だけどね、私は奇跡のヒーローじゃないし、泣きまくるし、こんな褒め方されたら恥ずかしくて耐えられなくなるの!!」
「じゃあ、早くあっちをスウさんに聴かせたいですね・・・――それか、新曲を書きますか」
あっち?
「書かなくていいからぁ・・・・」
本物の自分と向き合わされるのも、けっこう辛いかもしれないし。
で、ジングルベルのリズムに乗せてプレゼントを回す私達。
ちなみに流石オックスさん、原曲で歌ってる。
それ歌えるのアリスとマイルズだけなんよ、と思ったらユーも口ずさんでる。あの人、ほんと何者なんだ。
あとオックスさんの前に来たプレゼントは、私が〖念動力〗で動かしてます。
「スウさんのプレゼントが、重すぎて渡せないんですよ」
アリスがでっかい箱を抱えながら言って、笑いながら〖重力操作〗を掛けてくれた。
❝何キロあるんだよアレwww❞
❝ワロwww❞
「ほ、ほんと、さーせん」
さて、ピタッと音楽が止まった時点で私の手には、命理ちゃんのプレゼント久遠の呼笛があった。
他のみんなは、こんな感じ。
久遠の呼笛 = 私。
着流し = アリス。
扇子 = マイルズ。
花の髪飾り = リあンさん。
等身大プラモ = オックスさん。
ワイン = 綺怜くん。
ゲーム = 綺雪ちゃん。
哲学書 = リイム。
羽根のブローチ = コハクさん。
香水 = ケロりん&ドラ子。
青琥珀のアクセサリー = ティタティー。
ゲーミング・ノートパソコン = ハクセン。
日本刀 = 空さん。
たこ焼きの鉄板 = ユー。
氷妖精の秘石 = メープルちゃん
ヘアデコセット = さくらくん。
バーサスフレームの銃 = 音子さん。
ユーの指輪 = ヒナさん。
マッサージ機 = 命理ちゃん。
ツーハンドソード = リッカ。
あれ? リッカ、自分のプレゼントが来ちゃってる。
リッカがちょっとショボーンとしてる。
「欲しかったんです、この着流し!」
「喜んでもらえて良かったでござる」
「ふむ、空色に鳥か素晴らしいデザインの扇子だ。大事にさせてもらおう」
「気に入ってもらえて、安心しました!」
「コケ・・・」(読めない・・・)
「当機は、肩こりは無いのだけれど」
みんなが感想を言い合うけど、どうしよう――リッカに「私のと交換しない?」っていう?
迷っていると、耳鳴りがした。
そうして突然、ノイズ混じりの『交換するんだ。君の久遠の呼笛と交換してあげて』と、誰かの祈るような言葉が聞こえた気がした。
ケルベロスと戦ったときに聞こえた声っぽい。
「―――また・・・? なに?」
私が驚いて耳を抑えていると、リッカに歩み寄る命理ちゃん。
「リッカ――」
『駄目だ、リッカ君に久遠の呼笛を渡すんだ、必ず!』
なにか声が、凄く焦っている。
「ま、まって命理ちゃん!」
私が立ち上がると、命理ちゃんがこっちを向いてキョトンとする。
「私、ツーハンドソードほしいの! ――リッカ、私の久遠の呼笛と交換しない?」
「え、ほんと? スウ、ツーハンドソード欲しいの?」
「うん、ハルバードには命を救われたし。ツーハンドソードってカッコイイし」
嘘じゃない。ツーハンドソードとか本当に欲しい。
「この良さわかるのかー!」
「うんうん――実戦とかで使いこなすのは、難しいかもしれないけど・・・」
「問題ないぞー、じゃあ交換してやるぞー!」
周りのみんなも、自分のプレゼントが来てしまったリッカとの交換はOKみたいな感じだ。
というか、ゆるいプレゼント交換だし。
ただ、命理ちゃんには謝らないと。
「いいかな命理ちゃん。私この笛が欲しくない訳じゃないの――なんかね、この笛はリッカが持ってたほうが良い気がするんだ」
命理ちゃんが、しばらく私を見つめる。
歯車のような黄金の虹彩が、一回りした。
「うん、なんだか――当機もそんな気がするわ。よく分からないのだけれど・・・・リッカがあの笛を持っている方が収まりが良いと言うか? 何かしら、これ」
「どうしたー?」
命理ちゃんの真剣な瞳が、リッカを見た。
「なんでもないわ。笛、肌身離さず持っていてね、リッカ」
「ん? ――わかった・・・?」
というわけで私はツーハンドソードをゲットして、久遠の呼笛をリッカに渡した。
アクセサリを着けたリッカがお店の窓に自分を映して、姿を確認する。
「ん、なんか凄く似合うぞ? わたしの為に有るようなデザインだー!」
確かにメチャクチャ似合ってる。本当にリッカの為にデザインされたような見た目だった。
「ほんとうに、収まりが良いね」
「そうね。凄く似合うわ」
リッカが私に、ネックレスとセットになっているイヤリングを渡してくる。着けろってことかな?
このイヤリング、耳たぶとかに張り付くみたいで、挟まないで良かった。これなら、耳が痛くなったりしなさそう。
にしても私、髪飾りにブローチにネックレスに指輪に腕輪にイヤリングってなかなかゴテゴテとアクセサリーつけてるなあ。どれも目立つ物じゃないけど。・・・・で、アクセサリーのほとんどにアリスが関係してるのに気づいて、ちょっと震えた。
私がイヤリングを耳につけると、リッカがネックレスに付いた笛を吹く。すると私の耳に「ピィィィ」という音がした。
「本当に、どこにいるか分かるんだね」
私が音に耳を傾けると、命理ちゃんが頷く。
「そう、だから恋人が大切な人に贈ったりしたのよ」
「恋人かー」
リッカが言って、嬉しそうにもう一度笛を吹く、するとまた私の耳に「ピィィィ」という音がした。
「このイヤリングは、私が持ってていいの?」
私が尋ねると、リッカが頷く。
「ずっと着けてて」
「りょ。痛くなる物じゃないみたいだし、お風呂以外は着けておくよ」
私が返事すると、右手に笛を握ったリッカが左拳を元気よく挙げた。
「よーし。毎日、夜中に吹くぞー」
「それは、やめて!?」
こうして、にぎやかなクリスマスパーティーは幕を閉じた。
友達や知り合いとする初めてのクリスマスパーティーは、本当に楽しかったです。
FL始めて、本当に良かった。
待って下さい、今気づいたんですが・・・過去のアリスが何故か久遠の呼笛の事を知ってませんでしたか?
知ってましたよね・・・!?
や、やっちまったぁなぁ!?
ほ、本当ーーーに申し訳ないです!!




