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330 プレゼント交換をはじめます

 コハクさんが可愛らしい包を取り出しながら、尋ねてくる。


「先に知っておいたほうがワクワク感あるかな? ――みなさん何を持ってきたんですか? 私は青琥珀のアクセサリーです、とても珍しい琥珀なんですよー」


 コハクさんのプレゼントにびっくりしたのは綺怜くんと、綺雪ちゃん。


「琥珀って樹脂の化石なんだっけ? ――宝石とかマジかー。俺は最新のゲーム」

「すみません、私は小さな香水です。お小遣いを貰って買いました」

「二人は小学生なんだから仕方ないですよ。むしろ奮発してると思います」

「そうそう、気持ちが大事」


 香水って、普通に高いし。

 私はコハクさんに同意しながら、バーサスフレーム用の〈時空倉庫の鍵・大〉を開く。

 すると、コハクさんが「え」と小さな声を出す。


「スウさん、まってください。プレゼントを出すのに、なぜバーサスフレーム用の倉庫を開くんですか? 一体、何を持ってきたんですか!?」


 ふっふっふ。


「じゃーん。私は、等身大のフィギュアのプラモデルを持ってきました。なんと300万円!」

「「「・・・・」」」


 あれ?

 みんなの反応がない。

 呆然としてる。

 いや、絶句?

 なにこれ・・・・刻が凍った?


「――え、なんでマイルズとリあンさん、そんな恐怖の表情でこっちを見るの?」


「・・・・お前・・・・なんだ、それは・・・」

「・・・・嘘でしょ・・・?」


 音子さんと、星の空さんが涙目で私を指差す。


「ぶははははははは」

「びゃはははははは」


 アリスが鎮痛な面持ちで、額を抑えた。


「いえ、分かるんです。欲しい人には本当に欲しいものでしょう。すごく可愛いと思います。わたしも完成品で、置く場所が確保できるなら欲しいです――けれど、プラモデルって」

「お前以外の誰が、そんな物を作れるんだ」


 リッカがため息を吐くと、コハクさんが呆れたように首を振った。


「ですよ。スウさんにしか作れないですよ。しかも300万円って、取り返しのつかない値段を使って」

「あ・・・・」


 そっか、そうだよね!? 作れないよね!!


「・・・・じゃあ、当たった人は私と一緒に作成する配信をしましょう?」


 私が言うと、手を拭きながらカウンターから出てきたオックスさんが顎に手を当てる。


「お、それならいいな。もし俺が手に入れて完成したら、戦艦かどっかに飾るか。流石にバーサスフレームのワンルームにはでかいだろ――というか間違いなくGで壊れる。クランハウスに飾れば看板にもなるな」


 マイルズが、何やら包を取り出しながら言う。


「配信者に当たる事を願っておこう――で、他の皆は何を持ってきたんだ?」


 アリスとリッカが嬉しそうに〈時空倉庫の鍵〉から、見事な一振りを取り出す。


「ふふっふ。わたしは、鍛冶師さんに今日の為に打って貰った刀を持ってきましたよ」

「わたしは、秋葉原の武器屋で買ってきたツーハンドソードをもってきたぞー」

「こちらも大概だな」


 マイルズが言って、呆れた息を吐いた。


 リッカはまた西洋の武器かあ。

 でも、あのハルバードのお陰で命が助かったんだよなあ。あの時は、本当に危機一髪だった。


「大型チャンネルの配信者達が、札束で殴り合いをしだしたぞ」


 オックスさんは言って笑った。


「そういうオックスさんとマイルズは、何を持ってきたのーですかー」


 オックスさんにも尋ねているので慌てて敬語にした。普通に話しても、別に怒られはしないだろうけども。


「俺は1995年、ヘール・ボップ彗星が来た年のボルドーワインだ」

「十分、札束で殴ってない?」


 リあンさんが苦笑いしたけど、私には全然価値がわからない。


 マイルズが包を取り出す。


「俺は哲学書だ、何冊かある」

「うわっ、真面目っ」

「なんだと貴様。そもそも知識とはだな――」


 私が言うと、マイルズになんか説教された。知識の素晴らしさとか分かるけど、流石にプレゼントに哲学書は真面目すぎない?


 対抗するように、ユーが指輪を取り出す。


「俺はスウとの結婚指輪だ」


 私はユーに、バックドロップを放った。


 ユーを抱えて、ブリッジをするように床に叩きつける。もちろん〖超怪力〗を使って。


「な、何をする・・・スウ」


 バックドロップを食らって逆さまのユーが、目を白黒させた。


 私はヤツに、怒鳴るように返す。


「プレゼント交換だって言ってるでしょ!?」

「だから、スウと」

「ランダム!! だれの所へ行くかわからないプレゼント交換!!」

「なん・・・・だと?」

「アンタもクリスマスパーティーとか行ったことない口か!? そこだけは同情してあげるけど!!」

「いや、有るが――ホテルなどで立食パーティー形式などではあった」

「とんだお坊ちゃんだ!!」

「他のみんなは、なんですか?」


 コハクさんが呆れながら言うと、リあンさんが棒状の包みを出す。


「ウチはマッサージ機」


 その言葉を訊いて、包みを見たコハクさんとヒナさんの表情が引きつった。


 音子さんは、なんか笑って机を叩いている。


「どうしたんだろう」

「さー?」


 私とリッカが顔を合わせて首を傾げていると、アリスに肩を叩かれ「二人は知らなくていいです」と言われた。なんだろう・・・?


 コメントもなんか教えてくれない風だし。

 空さんが「に゛ゃはは」と笑う。


「ここまでマトモなプレゼントが、コハクとオックスさんと綾麻兄妹のしかないという」

「おい、聞き捨てならないぞ星ノ空」


 マイルズが心外だというけど、空さんは肩をすくめて首をふる。


「哲学書はないわ~」

「空・・・・貴様もか」

「ここであたしのプレゼントが登場。ドライアー、ヘアアイロン、ブリーチなどなど、髪の毛をデコるアイテムセット!!」

「使ったらIQまでブリーチされそうなセットだな」

「おおん!?」

「喧嘩しないで・・・・」


 私が仲裁していると、ティタティーが大事そうに〈時空倉庫の鍵〉から宝石を取り出した。


「ティタティー、なにそれ?」

「氷妖精の秘石。幸運を招き寄せる」

「ティタティーが一番マトモだと思う人」


 私が言うと、みんながゆっくり手を挙げた。

 続いてハクセンが、和紙に包まれたものを取り出す。


「拙者は、着流しでござる」


 着流しは男性用だけど、ハクセンがいっつも着流しを着てるからなあ。

 つづいてメープルちゃんと、さくらくんがプレゼントを取り出す。


「私は扇子です」

「ボクはゲーミング・ノートパソコンを」


「こういうので、いいんだよ」

「「「おまいう」」」


 私がメープルちゃんとさくらくんのプレゼントを素晴らしいというと、みんなにツッコミを入れられた。

 みんなの軽快なツッコミに、私は思わず照れ笑い。


「エヘヘ」

「ウチはタコ焼きの鉄板やでー。大阪の家には絶対あるという」

「私は、なんとバーサスフレーム用の銃! 一番いいやつだよ! あ、本物は持ってこれなかったんで、カード持ってきたから」


 音子さんとヒナさんが、鉄板とカードを見せる。


 リイムは今日のために手作りした、自分の羽根で出来たブローチ。センスが良い。


 ケロりん&ドラ子は協同で作った、ドラコの花の髪飾り。こちらもセンスがいい。


 最後に命理ちゃんが、ちょっぴりSFチックなネックレスを取り出した。


 ネックレスの先には、三角形の金属片のようなものがついている。あと同じような小さなイヤリング?


「青っぽくて綺麗だね、アクセサリー?」


 私が尋ねると、命理ちゃんが首をふる。


「1100年前に流行った笛。この飾りが笛になっていて、イヤリングが受信機。久遠(くおん)呼笛(よびぶえ)――どんなに遠く離れていても、一瞬でイヤリングをした想い人に音が届く。そして、何処にいるかが分かる」

「え、なにそれ凄い」


 アリスとハクセンと、リッカも興味を示す。


「素敵ですね」

「幻想的な笛でござるな」

「魔法みたいだなー」


「量子もつれを利用した笛」

「一気にSFになった」


 ファンタジックな笛かと思ったら、命理ちゃんの口からとんでもないSFな機構を教えられて、そういえば彼女は超科学の世界の住人だと思い出した私達だった。


 さてみんなのプレゼントが出揃ったので、みんなで椅子に座り円になってプレゼントを横に流す準備ができた。


 音楽はオックスさんがギターで弾いてくれる。音楽にあわせてプレゼントを隣に渡し、止まったところで持っていたプレゼントが、その人の物になる。


 オックスさんがギターを ジャラーン と鳴らした。どっかのドワーフさんを思い出すなあ。


「じゃあ、始めるぞ――Her スウ! Her スウ! Her スウ! Her スウ! スウスウスウス――」


 私は、初めてオックスさんを殴った。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 結婚指輪とかいう意味不明なモノをチョイスした約一名以外、多種多様で面白い(?)ですなぁ…ちゃんと気持ちがこもってる(別の意味のユー以外)のは共通ですが。 オックスさん、良く通るバ…
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