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318 60層のボス攻略が始まります


「10層はともかく、20層、30層のボス・・・・やばくない?」


 私はアリスに尋ねた。

 一応、全部倒したんで憶えてる。一匹はVRでだけど。


「どのボスもとんでもない量の弾幕を放って来ますからね。――あんなのが沢山出たらバリアで防ぎきれるか・・・・弾幕を躱せる人間以外どうしろと・・・」


 みずきが更に付け加える。


「それらを指揮しているのが60層の真のボス、アテナ。――時々こっちのエンジンを停止させてくるんだとか――停止はほんの1秒だけど、1秒でも十分脅威だよね? エンジン止まってる間は機体を動かせないし、バリアもシールドも消える。なのにアテナは、消えない強力なバリアを持ってる」


 アリスが、目をしばたたかせる。


「え? ――そ、それは――本当に弾幕が処理できなくなるじゃないですか・・・?」


 流石、守りの軍神アテナの名を冠する事だけ有る。


 私はワンチャンの希望を、口にしてみる。


「大気中なら、補助翼を動かして躱せると思うけど、大気中?」


 私の言葉にみずきが「うんにゃ」と、否定した。


「なんもない宇宙空間」

「そ、それは流石にきついなあ・・・」


 慣性で滑るだけになって・・・・身動き取れないじゃん。

 氷の上で止まれない車みたいになりそう。

 私は、どうしたもんかと考えを巡らせる。


「そうだ、アリスとリッカの新しい機体はどうなったの? 課金ショップで買ったやつ」

「あれですか」

「あれなー・・・」


 アリスが鎮痛な面持ちになり、リッカが現実から目を背けるような顔になり遠くを見た。


「なにか問題あったの?」

「言うこと訊かないんですよ」

「操縦が難しいとか?」


 私が訊ねると、遠く――宇宙の()てでも見ているんじゃないかって視線だったリッカが、視線を私に帰還させる。


「あの機体、AIが頑固すぎてなあ。『パイロットとして認められぬ~』とか言ってくんの」

「え、機体が意志を持ってパイロットを拒絶してくるの?」


 アリスが重い溜息を吐く。

 吐息が重すぎて、床に埋まりそうだ。


「そうなんですよ、わたしたちを中に入れてもくれません。いくら特機でもあんなのは初めて見ましたよ」

「ありえないよなー」


 私は思わず唸った。


「機体が意志を持ってるとか、完全にスーパーロボット的な何かじゃん」

「多分、今回のボス戦には間に合わないです」

「だなー」

「・・・・まじかあ」


 特機なら、ワンチャン、エンジンを止める攻撃もなんとか出来ないかと思ったんだけど、ムリかあ。


 不安に思いながらも、12/14日。

 いよいよ60層ボス攻略戦が始まった。 


 今回は、私達も参加できた。

 もちろん配信中。事務所でフーリや江東さんが確認してるはず。リイムとアルカナくんも今日は事務所だ。


『皆さん、今回も日本勢の指揮官を任せられた星の騎士団のクラマス、ウェンターです。よろしくお願いしますね』

『ウェンター頼りにしてるぞー』

『やっぱボス戦の指揮といえば、アンタだよな!』


 今回の攻略はあまり情報も無いことから、作戦とかも練られていない。

 あるのは偵察ドローンから得た情報と、そこからAIが導き出した予想くらい。

 なので主な作戦は「みんなで、とにかく頑張ろう」。

 ――一応、得られた情報の部分に対しては作戦が、有るんだけど。

 どちらにせよ今回は〝様子見〟みたいな感じらしい。

 みんなビブリオ・ビブレの作戦に期待したんだけど、流石に情報がほとんど無いのに作戦立案もクソも無いらしい。


 でも正直5人でしか攻略できなかったダンジョンのボスに比べたら、気が楽で仕方ない。

 あの時は、最後なんか一人ぼっちだったしなあ。


 今回の参加人数は5000人+10000人、ボス戦としては最大クラスの人数が集まったのだとか。

 ユニレウス攻略戦みたいに気軽に参加出来る敵ではないので、あの時の10万人とは、規模が全然違うけど。

 敵がエンジン止めてくるんだもんねぇ。普通の人は参加したがらない。


 ただ、得られている情報であるエンジンストップに対しては対策してある。

 +10000人っていうのがキモ。

 この10000人は工兵で、ボスの周りに素早く拠点を組むらしい。

 エンジン止められちゃったら、バリアもシールドも無くなっちゃうから、作った拠点に籠もって弾幕を防ぐんだとか。


 ちなみに拠点組む練習を見に行ったら、エア・マーベリックの拠点作りに慣れた人とかすごかった。


 エア・マーベリック4で使われていた、拠点を組みながら戦う戦法「フォートファイト」を応用した戦術が考案されたらしい。


 高速で壁と路になる素材を組み上げながら、銃を撃ち続ける。見事な戦術だった。

 とういわけで、戦艦や空母ででっかい金属の塊や、分厚い合金板を持ち込んでいる。


 合金盤はそのままでも盾としても使えるので、バーサスフレームのみんなも一個ずつ所持。


 私とアリスだけは、〈時空倉庫の鍵・大〉に結構な数の合金板を用意してきた。

 しかし合金板は壊れたら破棄するしか無い、ヒーラーが回復できないから、過信は禁物。


 合金板が壊れたら、最寄りの戦艦や空母や補給班から板を受け取るようにって事になってる。

 ただまあ、みんな心配してるのが「合金版の破片だらけでデブリまみれにならないか」って事。


 デブリと弾幕まみれの中で高速戦闘を強いられるのは、ちょっとゾッとする。


 あと、バーサスフレームもちょっと改造された。


 人力(レバーを動かす)で個体水素を、エンジンの予熱で温め気体に戻し推進剤にして噴射、その勢いで方向転換をする機能を突貫工事で備え付けられた。

 ――ただ、これは回数制限があるので何度もは使えない。


 推進剤に水素が選ばれたのは、膨張率。


 エンジンの予熱で温めるだけで大爆発を起こすので方向転換できる。

 ただし、勢いの微調整はほぼ不可能との事。


 薄い環を持つ恒星だけが目立っている暗い宇宙空間を、15000人が3列横隊で、三次元的な鶴翼陣になって、指定宙域に向かう。


 環を持つ恒星近くの宙域のくせに、ボスがいる場所は見事に何もない場所。

 隕石一つ飛んでない。

 隠れる場所がない。

 これは、できるだけ早く拠点を築いて貰わないと。


 ビブリオ・ビブレのオペレーターさんから連絡が入る。


『先行部隊、戦闘宙域入りました。アテナ反応。〈狂乱〉ミダス転移してきます! ・・・・え――――・・・ちょっ、なんなのこの数!! ―――無数に転移してきます!! ――よ、予測より多いです!! 観測結果出ました・・・・〈狂乱〉ミダス、AI予測の10倍――約100体に達しています・・・・ボスが100体って! 全機注意してください! 繰り返します、〈狂乱〉ミダス100体!』


 ウェンターさんのドン引きな声が、通信から入ってくる。


『100体だって!? ――各機、ミダスを密集させないで! 弾幕が濃くなりすぎて避けられなくなる! 一人一体釣ったら、引き離して!!』

『ミ、ミダス1体撃破されました!』

『え?』

『ミダス、さらに1体撃破―――!』

『・・・・な、なにが・・・・起こってるんだい? つまり、10層ボスが、もう2体撃破されたって言う事かい!? は、はやいっ、――なんなんだい、ビブリオビブレのオペレータさん、何が起こっているんだい?!』

『フェアリーテイルです!! 白いフェアリーテイルと、――ムシャ・リッカ・インフィニティーが物凄い速度で、ミダスを撃破していきます!!』

『ス、スウ君と、リッカ君とアリス君か!!』


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