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322 ミスします

『え、〈発狂〉ミダス?』

『〈発狂〉クラスとか、嘘だろ!?』


 〈発狂〉―――!?

 難易度〈狂乱〉と〈発狂〉は、次元が違う。


 〈狂乱〉は「頑張ればクリアできるレベル」。

 〈発狂〉は「クリアさせる気がまるでないレベル」。

 ――そんな気持ちが有るのかはともかく。

 いや、気持ちは感じる。――なんというか。


 〈狂乱〉は〝君の限界を見せて〟って気持ちを感じるんだけど、〈発狂〉は〝さあ、人間の限界を見せて〟って気持ちを感じる。

 つまり普通じゃ躱せない弾幕がくるんだ。


 〈発狂〉は弾幕にパターンがあるミダスの弾幕ですら、形を覚えてから――安全地帯を覚えてからスタートラインみたいな話になる。

 みんな〈発狂〉ミダスの弾幕を覚えているんだろうか・・・・?


『ま、まてよ! 俺は〈狂乱〉ミダスまでしか弾幕パターンを知らないぞ!? つか〈狂乱〉でも初対戦なのに、〈発狂〉とか!!』

『無理だ・・・シミュレーターで〈発狂〉ミダスまで行ったから弾幕パターンを覚えてるけど・・・・幾らやってもクリア出来なかったのに、人間卒業試験を実戦で相手にするのとか絶対に嫌だ! 手に負えない!! 逃げる、すまん!!』


 私だって〈発狂〉を複数相手にするのはキツイ。

 スキルと身体強化があるからまだ3体までなら行けるけど、ワンミスすると、弾幕の袋小路に入りそうになる。


❝スウ、まじかよ、3体同時に相手してるよ・・・❞

❝メチャクチャすぎる❞


「ごめんなさい、流石にキツイです。誰か助けて!!」


 私も被弾してしまい、シールドブーストでなんとか耐える。

 機体をワイヤーフレームの様に覆う、沢山の六角形の輝きが視えた。


 〈発狂〉レベルの弾幕なんかに当たったら、ティッシュ装甲なフェアリーテイルだと一発爆散だ。


❝スウが助け求めるレベルって・・・❞

❝とうとうスウが弾幕食らった! 三択ブーストで防げたみたいだけど・・・良かった❞

❝無理だよ、みんな余裕ない・・・一体でも相手できるだけで、もう英雄レベルだよ。上手い盾役がスキルとブーストを駆使しながら、なんとかダメージを極限まで抑えて複数人でヒールしてやっとなんとかなってる・・・・❞


『ヒーラーお願いだ、逃げないでくれ! シールドを複数人で回復してもらわないと間に合わない!!』

『わ、わかったわ・・・・ギリギリまで耐えてみる!!』


❝無理すんなよ!? 死ぬなよ!?❞

❝やばい、各地の拠点が崩壊して行ってる。頑張れ建築班!!❞

❝アテナが歌い始めた、手を叩くぞ!!❞


「―――っ!!」


 エンジンが止まった!!

 私はエンジンが止まる寸前、思い切り逆噴射しておいた。

 弾幕と相対速度を合わせて、ミダスから離れていく。

 これなら安全地帯と一緒に移動できる。

 吹き出た冷汗を拭う。


「ギリギリ・・・すぎる」


❝ユーもやばいぞ、エンジン止められたら〖次元防壁〗が何度か破られてる。ユーのテクニックと聖蝶機の性能でなんとか凌いでるけど❞


 ここで通信が、クランメンバー達から入ってくる。


『こちら戦艦マザーグースです。スウさんごめんなさい! 撤退します! アリスさん、リッカさん、命理さん。ユーさんと一緒にいるオックスさん以外のメンバー全員戦闘続行不可能です!』


 綺雪ちゃん、綺怜くんからも通信が入ってきた。


『スウさん、アリスさん、リッカさん、命理さん。ごめんなさい私じゃ、宇宙の戦闘は無理でした』

『ごめん、戦艦はでかすぎて、被弾が抑えられなくて!』


「良いから、みんな安全を優先して!」


 アリス、リッカ、命理ちゃんも返事を返す。


『です。わたしとリッカも命理ちゃんも、危なくなったら撤退しますから』

『だぞー』

『回復しきれなかったわ・・・・ごめんなさい』


 さらにコハクさん、リあンさん、星の空さんからも。


『私の誘導が不味かったです。力不足ですみません』

『命理は、一人で戦艦とアリスを回復してたんだから流石に無理よ、ごめんね』

『みんな、頑張って!』


 こうしてマザーグースは、宇宙に現れた波紋の中に消えた。


「私達以外のみんなは、スキルのレベルアップとかもしてないし、流石にね・・・」

『むしろフェイレジェを始めたばかりの綺怜くんとか、小学生なのにあの巨大な戦艦をここまでもたせたのが驚愕レベルですよ』

『だなあ』


 アリスとリッカの感心した声。

 命理ちゃんが、頑張ったみんなにお礼を呟く。


『みんな有難う』


 命理ちゃんの声に、私は気合を入れ直す。


「よし。私達は、もうちょい気張ろう」


 でも流石に「今回は勝てないかな」、「撤退かな」とは思っていた。

 まともに戦えている人が、ほぼいない。

 各地の戦線がどんどん瓦解していってる。戦いの光も減って行っている。もう3分の1以下じゃないだろうか。1000人いないかもしれない。

 これで各地の拠点が破壊されきったら、そこで終わりだろう。

 そんなふうに思っていた。


 正直、諦めかけていた時だった。

 ――ビブリオ・ビブレのオペレーター、ペィジィさんからの通信ウィンドウが、私の視界の端に開いた。


『スウさん、インド方面に飛んでください!!』

「え・・・・?」


 インド? なんで?


「・・・・ど、どうしました?」

『天装機ポータルでスウさんを、アテナのバリアの向こうに送り込もうという作戦が立案されました!!』

「わ、私を? ――」


 作戦は何となくわかったけど。


「――私、単騎ですか?」

『はい、アテナのエンジン停止攻撃の中でまともに動けているのは、はっきりいってスウさんだけです。〖念動力〗持ちでもスウさんくらい強化しないとバーサスフレームを動かすのはキツイみたいです。他の戦闘機乗りさんも対策がない人は厳しいみたいで、――ユーさんとスナークさん、オックスさん達すら厳しいようです。だとすると、スウさん以外を送り込んでも駄目だという判断です』

「じゃ、じゃあ、わかりました。急行します!」


 私はエンジンを全力で噴かして、インドの戦闘宙域方面へ急行する。


『お願いします!! ――あと・・・・ここからはクローズド回線で――』


 ペィジィさんのウィンドウの周りにオレンジ色の枠が出来て、私だけに聞こえる通信になった。


『◤CLOSED◢――うちのクラン――ビブリオ・ビブレの解析なんですが・・・・アテナは、おそらくどんどん強くなっています。条件は分からないんですが、アテナが巨大化して行ってます。もし今回撤退すると、次回アテナを相手する時には更にアテナが強くなって撃破不能になっている可能性があります』

「え、ちょ―――? マジですか!?」

『デブリも相当散乱してしまいました。ボスのいる宙域でデブリ回収など不可能にちかいですし、次回の戦いはさらに過酷になるでしょう。しかも恐らく参加人数が減ってしまいます。――なので出来得る限り、今回で撃破してください――スウさんが無理だったら今回は撤退となりますが、次回が有るか怪しいところです』

「わ、わかりました!!」


 つまり60層で攻略終了になるってこと?


 星団帝国ユニレウスが50層をクリアできなかったように、私達プレイヤーはこの60層で攻略が終わりになるって事?

 しかも条件は、〝私が失敗したら〟?


 不味い、急に責任重大になった。

 ちょ、ちょっと吐きそう。


❝どうしたスウたん、顔色が悪くなってるけど❞

❝何言われたんだ?❞


「いえ、ちょっとまずい状況だって言われました。内容はそのうち分かるかもしれません」


❝なんか、嫌な予感するぞ❞

❝スウさん、がんばって!❞


 しかし過度な緊張は、パフォーマンスに悪影響を及ぼす。

 その時私は、緊張のあまりゾーンが切れてしまった。


❝不味い、スウたん弾幕に衝突する!❞


 気づくと私の方向に弾幕が向かってきていた。当たるコースだ。


 3択ブーストは、さっき使ってしまった・・・。


「不味・・・・!」

『案ずるな!! スウ』


 弾幕と私の間に入ってきたハンマーヘッドが、人型になって大の字になり、弾幕をその身に受けて止めた。


 弾幕に弾かれ、宇宙を転がるハンマーヘッド。

 ハンマーヘッドはコントロール不能になったのか、次々と弾幕に衝突していく。

 この声は・・・!


「ス、スケさん―――!」

『助平お兄ちゃん―――!』


 私と綺雪ちゃんの悲鳴。


『案ずるな!! 二人共!』


 爆散するハンマーヘッド。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 す、スケベさ~ん!?他に方法がなかったとはいえ、このタイミングでピッコ○さんするとか…。 でもスウちゃんがこの光景を目にして、孫悟○みたく怒りで覚醒するかと言われたら……ごめんな…
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