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312 ハワイのソウルフードに挑戦します

 増水や鉄砲水対策はしてあるけど、安全が保証されるのはロッジの中だけ。

 私達はさっさとロッジの中に避難。


「あ、火が消えてる」


 予想通りというかなんというか、暖炉の火が既に消えていた。


 点け直さないと。

 命理ちゃんが尋ねてくる。


「コンロから火をもってくる? 当機の目からビームで着火する? それとも焼夷弾を使う?」

「いや、焼夷弾とか暖炉に使っちゃ駄目でしょ。――キャンプ気分を味わいたいから、キャンプでやるみたいにしようよ」

「当機はキャンプのやり方をしらないわ、棒と板で擦って点けるくらいしか」

「超科学の原始人・・・・? じゃあ見てて」


 私はまず薪をナイフで削るようにいして、フェザースティックというナイフで薪を何度も薄く削って、天パみたいにした棒を3本ほど用意する。

 すごい人は花みたいにするんだけど。私にはムリ。


 そうして暖炉の中で薪をテントみたいに組んで、テントに入口にフェザーステティック3本を設置。


 失敗して木から剥がれた削りカスも簡単に燃えるので、フェザースティックに絡める。


「古い炭はどけないの?」

「まだ燃えるからね」


 ここで私は、やおら鉛筆削りを取り出す。


「鉛筆削り?」


 命理ちゃんが、可愛らしく首を傾げた。


「これでね、」


 私は小枝を鉛筆削りで削って、削りカスにしてフェザースティックのフェザー近くに寄せる。

 そうして今度はナイフで、鉛筆削り本体を削っていく。


「な、何をしているの?」

「まあ何の変哲もない普通の鉛筆削りなんだけどさ――この鉛筆削りは、マグネシウムで出来ているんだ。軍隊でも採用されてるんだけど」

「――マグネシウム・・・・なるほど」


 私はナイフの背で鉛筆削りを擦る。

 すると火花が散った。


 何度か擦っていると、マグネシウムの粉に着火。

 やがて小枝の削りカスにも着火。

 さらにフェザースティックにも燃え移った。

 そのうち太い薪にも燃え移るだろう。


「ご覧の通り、ファイアースターターとして使えるの」

「見事な手際ね」

「最近は、よく部屋キャンをやってたからね」

「・・・・涼姫・・・外に出るのも大切よ?」

「だからその哀しみに満ちた目をやめて!?」


 うっすら涙まで浮かんでるし!


 なんて話していたら、川の方から濁流がドッパーンと湖に入ってきた。


 私が窓の防弾ガラスに寄って見れば、枝や岩などが湖に流れ込んでいる。

 増水もし始めてる。

 命理ちゃんも隣に来た。


「しばらく、湖が濁りそうね」

「ねぇねぇ。ちょっと屋根裏部屋から釣りをしない?」

「そうね、こういう時は魚がいっぱい釣れるわね」


 私達は、もしもの時はサバイバルに使えるようにと〈時空倉庫の鍵〉に入れている釣り竿を取り出す。


 命理ちゃんはオックスさんがロッジに置いていった釣り竿を持ってくる。ワニを捕まえていたやつ。

 オックスさんはあれからも、ちょいちょいロッジに来て、釣りを楽しんでる。


 二人で屋根裏部屋へ。


 上流だけで降ってるから、こっちにはまだ降ってない。

 だけど、時期に土砂降りになるだろう。


 私と命理ちゃんは、濁った湖に糸を垂らす。


 釣り餌には、ハンバーグにする予定だったミンチを少々使った。

 すると5分ほどで私の竿に引きが来た。


 引き上げて〖念動力〗で掴む。


「釣れた!」


 なかなかのサイズのニジマス(?)が釣れました。


「こっちも釣れたわ」


 命理ちゃんの手にも、ニジマスが。


「じゃ、両方ムニエルにしよっか」

「涼姫のムニエル美味しいから好きよ」


 ◤ニジマス×2を手に入れた!◢


 魚の採集に成功した私達は、テントに戻ってきた。


「とりあえず、夕ご飯を作ろう、ご飯を」

「さっきサンドイッチを食べたばかりだけれど」

「まあ、半分こだったし、今すぐ食べるんじゃないから」

「キャンプメシね。何を作るの?」

「ロコモコ丼!」

「ロコモコ?」

「ハンバーグと目玉焼きをライスに乗せた、ハワイのソウルフードだよ。考案したのは日系人なんだけどね。アメリカ本土だと一般的にハンバーガーのパティ――つまりハンバーグだけを食べたりしないから。日本とアメリカ本土の食文化がハワイで超合体した丼ぶりだね」


 いや、ハンバーグはドイツ料理だけども。


「ハンバーグと卵は約束された勝利よ」

「うんうん。〝間違いない〟って奴」

「しかも今日は煮込みハンバーグだよ」

「柔らかなのね」


 先ずはご飯を炊かないとね。


 さて私はハンバーグのタネ作りに取り掛かる。

 まずは玉ねぎをみじん切り。


 私はファンタシアで買った空賊ゴーグルを、〈時空倉庫の鍵〉から取り出す。


 まるで変身をでもするようにセット。


「しゃきーん」

「ゴツいゴーグルを使うのね」

「常備してるし、ゴーグルは何個もいらないからね」


 私は玉ねぎをみじん切りにして、飯盒にも使えるメスティンにオリーブ油を引いて、まずは蒸し焼き。

 柔らかくなったら、ほんのりきつね色になるまで炒める。


「用意しました、牛ミンチと豚ミンチ」

「最初から合いびき肉ではないのね」

「柔らかい牛肉を選んだんだ」

「なるほど」


 牛7 : 豚3 + 生卵を一番大きなコッヘルで混ぜる。


 コッヘルって言うのは、大きなお鍋の中にちょっと小さなお鍋、その中にさらに小さなお鍋とか入ってたり――調理用ストーブが入ってたりする。あと蓋はフライパンにもなったりする、コンパクトに調理器具を持ち運べる便利道具。

 私のコッヘルは、お鍋のマトリョーシカタイプ。

 一番大きなコッヘルで、合い挽きにしたお肉を捏ねて捏ねて。

 途中で塩、ナツメグ、胡椒キツめで味付け。ここで炒めた玉ねぎを投入。

 ふたたび捏ねたら、ツナギのパン粉を入れる。

 またしばらく捏ねたら、ハンパーグのタネの出来上がり。


 タネを捏ねたメスティンに布をかぶせたら、寝かせておいて。

 煮込み用のソースを作り始める。


 まずはマッシュルームを切って、玉ねぎを炒めたメスティンでバターで軽く炒める。

 私が作り置きしてるコンソメの氷を冷蔵庫から持ってきて、3個入れる。

 そして塩。

 しばらく沸かしてから、これまた私が作り置きしているデミグラスソースを冷蔵庫から持ってきて入れる。

 赤ワイン、トマト缶のトマト、クリーム、中濃ソース。

 ひと煮立ちさせたら、火からあげて、しばらく放置。


 ハンバーグを焼く作業に入る。


 ちなみに命理ちゃんは後ろで、ケロりんを頭に乗せて、ドラ子とダンスしながら踊って応援してくれている。


 スキレット(小型フライパン)を、暖炉に置いた焚き火台で温めておく。


 そうしてはメスティンから半分だけハンバーグのタネをとる。

 そうして右手⇔左手と、お手玉のように渡しあって、パンパン言わせながら中の空気を抜く。

 ここで、オーディエンスをしていた命理ちゃんからの質問。


「涼姫、何をしているの? ひき肉の虐待?」

「そんな無意味な事をする趣味はないよ。タネの中から空気を抜いてるの」

「どうして? 柔らかく仕上げるなら、空気を残していたほうがいいんじゃないの?」

「あー、空気でふっくら? ――それは無理かなぁ」

「なぜ?」

「空気が膨張して、ハンバーグが変な風に裂けちゃう」

「あ・・・・そうね。空気は熱すると膨張するんだったわ。科学で過去の人間に負けたわ」

「勝った」


 ドヤ顔をしたらスキレットにオリーブ油を引いて、あとはタネをハンバーグの形に整形して、スキレットに入れる。


 もう半分のタネも同じようにして、スキレットで焼く。


 このスキレット、凸凹が有るから、余分な油が凹の方へ流れてお肉が脂っこくならない。

 素敵なので普段使いもしてる。


 ちなみに今回のソースは、焼いた時に出る肉汁を使うグレイビーソース。

 だけどお肉を焼いて、最初に出てきた油は雑味が多いので捨てる。

 こういう丁寧な作業が、最終的に細かい味になるのだ。


 今はハンバーグの中まで焼かない。

 お肉を柔らかくするには、弱火でじっくりが大事。


 ハンバーグの両面に焼き目がついたら、いよいよソース投入。

 ここからは暖炉の薪を移動し、調節して、水分を逃さないようにしたら30分ごとに裏返す。そうして弱火でじっくりコトコト3時間。


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