307 スウさんの記憶が封印されました
(す、すみません。危ない所でした)
わたしが謝ると、スウさんは少し首を振って、そこから暫く目をつむっていました。
(よし。みんなにも「質問しちゃ駄目、下手に喋っちゃ駄目」って伝えた)
『では、記憶を頂こう』
「ふざけんな―――っ」
スウさんがニューゲーム1110を取り出し早打ち、リッカが瞬く間に迫り、居合抜き。
ですが空気の壁のような――膜のようなものが現れ、弾丸と刀を弾きました。
スウさんは跳弾した弾丸を、ギリギリで避け――きれず、頬に弾丸をかすらせました。
そんなスウさんの頭上に、ブラックホールのような黒い球が浮かんでスウさんの頭から光を奪いました。
『〝デスロードでの訓練〟の記憶を頂いた』
「えっ!?」
スウさんが目を見開きました。
「9年ぶ・・・」
言いかけてスウさんは口を押さえました。
恐らく「9年分?」と問いかけようとしてしまったんでしょう。
「〖サイコメトリー〗!!」
スウさんが、自分に〖サイコメトリー〗を使います。
『あと、良いことを教えてやる。これはサービスだ。記憶は要らぬ。我が貰う記憶というのは、謂わば封印だ。だから〖サイコメトリー〗とやらでは取り返せないし、連合とやらでも復活できない――封印された領域に、記憶が上書きされるだけだからな。また逆恨みして我を殺しても無駄だぞ、記憶は戻らない』
「―――っ!?」
スウさんの顔色が青くなりました。
それに逆恨みなんかじゃない、代償を黙っておいていきなり奪うとか、まっとうな恨みですよ。
スウさんが追いすがるように、手を伸ばします。
「ま、まって、その記憶は――」
『クックック。もう遅い、封印した』
「そ、そんな・・・・」
リッカが腰の刀に手を掛けます、が・・・・、
「だ、駄目リッカ! コイツにはまだ利用価値がある、連合が質問したりするかもだし!」
わたしは、全てを識る本に叫ぼうとします。
「質問です! スウさんの記憶を復活――」
言い切る前に、スウさんに口を押さえられました。
「止めてアリス! なにを奪われるか、分かったものじゃない!」
続いてリッカが唸るような声を張りました。
「ダーリン、アイツに質問するんだ。スウの――」
『機械の質問などには、答えぬぞ』
リッカが歯ぎしりをしました。
スウさんが呆然としながら、私達に言います。
「――と、とにかく・・・・目的は達成したから・・・・帰ろう」
❝なんてモンを奪いやがるんだ・・・❞
❝え、スウたん大幅弱体化?❞
❝スウの戦力が消えたのか? ヤバすぎね?❞
スウさんは青い顔のまま歩き出しました。
〔どうしよう・・・・〕と小さくつぶやきながら。
全てを識る本があった部屋を出ると、扉が消えてなくなりました。
・・・これ、もしかしてあの本は再利用できないんじゃ・・・・?
◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆
私は、9年分の訓練の記憶を奪われた。
「だ、大丈夫か涼姫! フェアリーテイルがかなり不安定な飛び方してるぞ!」
私がフェアリーテイルを操縦していると、コックピットにワンルームに居るリッカの声が聴こえてきた。
「う、うん――フライバイワイヤとか飛行補助とかONにしたから、もう大丈夫だと思う。あと操縦感度も下げたよ」
「そ、そうか・・・・しかし、訓練の記憶か・・・酷いものを奪われたな」
アリスが、リッカに返す。
「ですね・・・〖サイコメトリー〗のレベルを上げれば、取り返せませんかね?」
「・・・・どうかな」
私は不安な気持ちを抑えて、アリスに答えた。
とにかく、リメルディアに住んでるみんなを、元の場所まで送らないと。
しばらく飛んで、リメルディア付近に戻ると、
「・・・・また空母?」
首都上空に浮かぶ、連合の船みたいな巨大な飛行物体。
アリスが空母を睨む。
「朕獣の空母ですね・・・」
私達が警戒していると、空母から拡声器による声が聴こえた。
『リメルディアに告ぐ、我らパウ帝国へ直ちに降伏せよ。ここは今日からパウ帝国の属国である』
「え、これ侵略!?」
リッカがびっくりしたのか、コックピットに上がってきた。
「リメルディアを侵略とかふざけるなよ・・・!? スウ、あんなチンケな空母、落としてしまえ!」
「まって、空母だけじゃなくてバーサスフレームも沢山飛んでるし、前の反暴機ビジィみたいなのがいたら今の私じゃ多分、不味い。ちょっと戦力を整えよう」
20機のバーサスフレームが飛んでる。
バーサスフレームと言ってもホワイトマンが10機位いるけど、今の私じゃヤバイかもしれない。
――確かに訓練の記憶が、全く思い出せないんだ。
〖サイコメトリー〗で調べたら訓練の記憶の窓が、全部閉じていた。
どうやっても開かなかった。
私は、連合に連絡を入れる。
こういう時、アイビーさんやユタさんのフレンド登録が便利。
「アイビーさん、ロキっていう帝国が、ファンタシアのリメルディアを侵略しようって空母を持ち出して来たんですが、私の戦艦と空母を使っても良いですか!」
『リ、リメルディアを侵略ですか!? ま、不味いですね・・・・――分かりました、許可します!!』
「ありがとうございます! ――よし、次は」
スウ:クレイジーギークスのみんな、お願いがあって。
マッドオックス:どうした?
リあン:なになに
星ノ空:どったのー?
さくら:スウさん、どうしました?
メープル:どうしたんですか?
綺雪:配信見てました、今ハイレーンに向かってます!
綺怜:俺も見てたから、急いでるよ!
コハク:あ、鳩が来ました。え、リメルディアが侵略されてるんですか!?
スウ:そうなんです。なのでマザーグースとティンクルスターに乗って来てくれませんか!?
マッドオックス:任せろ
リあン:エッホエッホ
星ノ空:侵略たぁ、聞き捨てならんなぁ
さくら:僕も、前にあの街の人に善くしてもらったんですよね。
メープル:セーラ様の一大事と聞いては放おって置けません!!
綺雪:戦艦に着きました。
綺怜:俺も着いた
命理:当機はファンタシアに降りれないわ、ごめんなさい
綺雪:あ、空挺師団のハクセンさんも来てますよ
スウ:ハクセンも来てるの? じゃあ、ハクセンも乗れるようにしとく。命理ちゃんは仕方ないよ。じゃあみんs
スウ:不味い帝国が、リメルディアに空爆しだしました! ちょっと止めさせてきます!
❝俺もリメルディア好きだから、ちょっと行ってくる❞
❝行くってお前、バーサスフレーム戦に参加できるのかよ?❞
❝俺、ファンタシアで星団帝国時代の機体を発掘できたから❞
❝マジカヨ。英雄がいた❞
❝行け、はよ行け! んでセーラ様救って、ファンタシアの世界を救ってこい❞
❝行くぞ、アツシ❞
❝応! 急ぐぞレイジ❞
私が戦艦に飛んでいると、リメルディアのお城から一機のバーサスフレームが出てきた。
反暴機ビジィだ。回収してたんだ?
『止めなさい! パウの殺戮帝!!』
こ、この声は、セーラ様!?
一番、出てきちゃ駄目な人が出てきたよ!
『これはこれは、王女自らお出ましとは勇ましい。――だが、女風情が何ができる』
『わたくしは知っています、凄まじい強さの女性を!』
『ほう、機神一機で?』
『あなた達の反暴機の力を忘れたのですか!』
私はフェアリーテイルの中のみんなに、声を掛ける。
「た、戦うね、みんな!」
明日からまた通常の投稿になります。
ちょっとそろそろ、ストックがやばめなのであまり長く複数投稿を続けていると、危険が危ないので、すみません。




