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306 代償を奪われそうです


 頭上に名前が表示されます。


 ◤ディレンマ◢


 ディ、ディレンマ? なんですかコイツ。


『汝等に問う』


 あ、また〝なぞなぞ〟ですか?


 ――わたしが考えていると、ディレンマの目が光りました。


 あれ?


 気づくとわたしは、海の上に浮いていました。


 わたしは小さな板切れに乗って浮いています。パイロットスーツとかは着ていません。

 にしても寒い――北極とか南極の近くでしょうか、凄く寒い海です。


 遠くに、スウさんがいました。スウさんもパイロットスーツとかは着ていません。普段着です。

 一瞬意味がわからず思考停止しましたが、すぐに事態の不味さに気づきます。


「――・・・・ちょ・・・」


 あのままでは、スウさんが凍死してしまわないですか!?


「ス、スウさん!」


 わたしは叫んで、海を手でかいでスウさんの方へ行きます。

 スウさんの唇は紫色になって、顔には血の気がない・・・・意識もないみたいです。

 あのままじゃ、本当にスウさんが死ぬ!

 駄目だ、スウさん! 死んじゃ駄目です!!


 わたしは顔が真っ青で意識のないスウさんを、板に乗せようと――って、スウさんとわたしが乗ると板が沈み始めた!

 二人は・・・・生き残れない・・・。


「スウさん、生きて下さい!」


 わたしは海に飛び込んで――スウさんを板に乗せて、海に浮かびました。

 大丈夫、体から力を抜けば、浮いてられます。

 でも寒くて、体が強張る・・・・頑張って力を抜かないと。

 二人でなんとか、助けを待ちましょう。

 運が良ければ、二人とも助かります。


 しかし、やがてわたしの意識は薄れてゆき――気づくと、図書館に戻ってきていました。


『き、貴様ら――全員か』


 ディレンマが口から血を垂らしています。


『自分を優先したならば、魂をこのツボに捕らえられたというのに』


 え?


 周りを見回すと、スウさんも、リッカも、リイムも、ヴァンデルさんも、トリテさんも、バルムさんも、ティタティーもきょとんとしています。


 ディレンマが説明します。


『〝カルネアデスの板〟という問いを貴様らに、投げかけてやったのだ』

「にーちゃんが出てきたニャ・・・」

「俺は母が」

「わたくしには妹が・・・・」

「スウが出てきた」


 トリテさんには兄が、ヴァンデルがさんには母が、バルムさんには妹が、ティタティーにはスウさんがでてきたらしいです。


 恐らく、わたしと同じ様な状況を見せられたんですね・・・・。


『そうだ、大切な人間と自分の命どちらを選ぶかという問いかけをしてやったのだ』


 幻覚を見せられたことで、床に墜落したらしいスウさんが、わたしを見て涙を流していました。


 リッカは安堵した表情で、スウさんを見ています。


 リイムはスウさんの体に自分の体を押し付けて、泣いていました。


 つまり、そういう事ですか・・・。


「なんて酷い幻覚をみせるんですか・・・・」


 わたしは憤りの目で、ディレンマを睨みました。


『まさか全員、生き残るとはな――こうなれば・・・・』


 ディレンマが、なにもない場所から剣を。


「いね!」


 スウさんが大声を出して〈時空倉庫の鍵・大〉から243mmキャノンを取り出し、ディレンマの頭を吹き飛ばしました。


 ディレンマの体が、ジルコンのようになって砕けます。


 さらにスウさんは〈81mm機関銃〉で、周りの本を滅茶苦茶に撃っていきます。


「いねいねいねいねいね!」


 〖飛行〗を使い空中に浮いて、回転しながら。


 スウさん・・・・カンカンに怒ってます。


「私を、本気で怒らせてぇぇぇ―――ッ!!」


 あーあ・・・・三千世界で一番、怒らせちゃいけない人を怒らせてしまって。

 瞬く間に本が片付きました。


❝もう滅茶苦茶だよ❞

❝本棚もボロボロ❞


 スウさんが「ハッ」として、辺りの惨状に気づきます。


「あ・・・・どうしよう。吹き飛ばした本の中に、全てを識る本があったら・・・」

「まあその場合、図書館を虱潰しに――」


 わたしが言い掛けた時でした


 遠くで爆発音。

 びっくりして音の方を向くと、なんか巨大な扉が出現していました。


「――スウさん、多分心配なさそうですよ」

「み、みたいだね」


 スウさんも、扉の方を見ながら苦笑い。


 という訳で、みんなで扉に向かいます。


「今回は、俺の力で開けられそうだ」


 ヴァンデルさんが、扉を押します。

 今回は簡単に開きましたね。


 扉に入ると、奥に――巨大な本がありました。


 巨大なテーブルに、わたしの身長のニ倍はありそうな本。

 厚さも50センチ以上あります。


 そんな本の中程が光だし空中に浮き上がり、踊るように回転しながら開きました。


「これが、全てを識る本(アレス・ノート)でしょうね」

『いかにも我こそが全てを識る本(アレス・ノート)である』

「・・・・本が喋りました。これもMoBっぽいですね」

『さあ、探求者たちよ、なんなりと尋ねよ。答えがある物ならば、100年に、3つだけ答えてやろう』

「回数制限ありですか。スウさん、何をききますか? ホムンクルス工場の位置を質問しますか? ――いっそ人間の蘇生方法を聞いてしまった方が」

「それは無駄だよ」

「何故ですか?」

「だって私、多分しってるもん。〖再生〗を使って黄泉の世界でケルベロスを倒せば蘇生できるって」

「な、なるほどです。では〝〖再生〗を使う以外の方法〟というのを質問するのは?」

「ホムンクルスを作って、みたいな方法を答えられたら馬鹿らしい」

「・・・・なるほどです。では、ホムンクルスの作り方というのは」

「連合は大体把握してるよ。問題は眼を覚まさない事らしい」

「うーん。では、〝ホムンクルスの目醒せ方〟」

「いや、私達は人造人間を作りたいわけじゃないから。ここは素直に〝ホムンクルス工場はどこ?〟で良いと思う。工場自体が情報の宝庫だろうし」

「なるほどです」


 スウさんが一歩前に出て、質問します。


「1000年ほど前に作られた、ホムンクルス工場はどこですか?」

『東の大陸の中央、マグナトレスカ山脈のアウト・レイクの北、200メートルの位置緯度39経度-120』


 スウさんが、VRマップを開いて数値を入力し「ここか」と目印を付けました。


「よし、これでクエスト達成かな」

『では代償を頂こう』


 スウさんが目を見開きました。


「だ、代しょ――」


 スウさんは自分の口を押さえます。

 「代償って、何!?」とか質問しかけたんだと思います。


『質問の答えを聞いたなら、質問者の記憶の一部を頂く』


 これには、わたしも叫びました。


「そんなの聞いてないですよ!」

『質問されていないからな』


 な・・・・コイツ・・・!!


「記憶を頂くって――」


 言いかけたわたしの口を、スウさんが押さえました。


(だめアリス、質問しちゃ!)


 あ・・・そうでした。


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