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303 海竜種と戦の戦いです

「アリスは目をつむってていいよ、私が念動力で運ぶよ」

「大丈夫です。わたしも〖飛行〗を使って、下を見なければ怖くないです」

「『一人でやり切れるの?』」


 わたしは〈時空倉庫の鍵〉から、ウサギイラスト・エプロンbyピンクを取り出します。


「スウさん、ちょっとこのエプロンを」

「なんで・・・」

「スウさんには前から、ママ味感あると思ってたんです。3分半ほど、そのぺぇにオギャらせて下さい」

「女子高生がなに言ってんの!? ――時間が妙にリアルだし!」

「コケッ!」

「おっと、リイムに怒られてしまいました。・・・・そうですね、スウさんはリイムのお母さんですね」


 という訳で私達は、吹き抜けを〖飛行〗で降りて行きました。


 わたしは上を見ながら、スウさんに手を引かれて付いていきます。


 飛べない人はスウさんが〖念動力〗で連れて行ってます。


「下を見て良さそうな距離になったら教えて下さいね」

「りょ」


 にしても凄い階層の多さですね。これを一階一階調べて行ったら、どれだけ時間が掛かるのか。


 やがて、地底湖の直前まで来ました。


「もう、下見ても大丈夫だよ」

「ありがとうございます」


 わたしは下を見ます。

 湖が目に入りました。

 輝けに、湖底まで明るく照らされています。


 テーブルのようになった岩が幾層も重なり合っています。


 生き物の影も見えますね。


 神秘的でもあり、恐くもあり。

 これが、畏怖という感情でしょうか?


 とりあえず小島のような場所を見つけて、みんなでそこに降ります。


「ココが最下層ですか?」


 辺りには水浸しになった本棚が、水面から伸びています。

 本は、一冊も残っていません。


 水の中の本棚を見ていると、ふと長い長い生き物の影が視界を通り過ぎました。


「なんでしょうアレ――」


 あ、スウさんの顔色が悪い。

 そういえば前にも配信で、地底湖に怯えてましたね。 


「――名前が表示されてますね」


 ◤海竜種 オケアノ・サウルス◢


 翼がなくて体の長いドラゴンみたいなのが、体を渦のようにひねりながら上昇してきます。


「イルさん、あれMoB!?」


 わたし達がだいぶ強くなったり、知識増えちゃって、あんまり頼られなくなったイルさんが久々に呼ばれてます。


「アリス、リッカ、あれMoBだ!」


 オケアノ・サウルスが湖面から顔を出して・・・・。

 なんだか空気でも吸うように長い首を後ろに引きました。


 嫌な予感―――!


 咄嗟にスウさんが、わたし達を〖念動力〗で散開させます。

 でもリッカだけは〖念動力〗を躱したようです。

 〖念動力〗を躱せるとか――というか、なんで躱したんですか・・・?


 スウさん自身も〖飛行〗で逃げようとしてます。

 でも、少し遅れています。


 オケアノ・サウルスが、口からジェットの様な水流を――まずい、スウさんが危ない・・・!


 わたしが真っ二つになったスウさんを想像して、寒気を憶えていると。

 リッカがスウさんの前に立ちました。

 両手のひらを、脇の下で上下に構えています。

 そうして、


「〖水作成〗!!」


 と叫んで、〝気〟か〝波動〟でも出すかのように、手のひらを正面に突き出しました。


 凄まじい勢いの水流がリッカの手から放たれ、オケアノ・サウルスの水流を迎え撃ちました。


()ァァァ―――!!」


 いや確かに水を出してるから、(なみ)ですけども。


 リッカの生み出す水が、徐々にオケアノ・サウルスのジェットを押し返していきます。


 いやいや、ジェット水流を放つのに特化したモンスター相手に勝たないでくれますか?


(うがい)でもしてろ!」


 リッカの水がオケアノ・サウルスの口の中へ。ああなると、多分オケアノ・サウルス自身の水も口の中で暴れまわりますよね。


 耐えられなくなったのか、オケアノ・サウルスが顔を背けました。

 するとリッカの水がオケアノ・サウルスの横っ面に見事に命中して、オケアノ・サウルスの顔面が弾かれます。


『ギャオオオオオオ』


 納得行かない気持ちはわかります。


 オケアノ・サウルスが、水中に逃げました。


 ヴァンデルさんが若干、(おのの)いています。


「リ、リッカはあんなスキルまで持っていたのか・・・」


 まあ、〖水作成〗がリッカの本領な所ありますからね。なんたって、特化のⅤレベルですし。


「逃がすか!!」


 リッカが刀を抜いて、メイド服を豪快にグイッと脱いで地底湖に飛び込みました。


 よくもあんな、恐ろしい水中に飛び込めますね・・・。


 ちなみにパイロットスーツを着てます。


 涼姫が、メイド服の絶対領域を重視したせいで、完全透明ですが・・・。

 ただ、下着は現代のブラジャーやパンツが精巧すぎて持ち込んじゃ駄目なんで、紐パンと紐ブラです。


 軌道上の売店での着替えは、下着も含んでます。

 でも紐系の下着は、動き回るとズレやすいから面倒くさいんですよね。

 パイロットスーツがあって良かったです。これを着ておけばズレません。


 スウさんが、リッカが飛び込む寸前に〖輝け〗を、リッカの背中にくっつけました。

 あれなら暗い水中でもよく見えますね。


 まてよ――まさかスウさん、リッカの下着を良く見たかった訳じゃないでしょうね?


 流石に無い――いえ、あの人なら有り得るかもしれません。


 水中でリッカと、オケアノ・サウルスが戦い始めます。


 リッカは〖飛行〗を駆使して、オケアノ・サウルスの攻撃を躱しています。

 そうしながら、突きを繰り出しました。

 ――が、攻撃が弾かれた。


 今リッカが持っている刀は高周波ソードでも、オリハルコンでもありません。


 立花家の家宝の名品らしいですが、普通の刀です。

 さすがに、MoBの体の防御力を上まわれなかったですか。


 水中だと水の抵抗もあって、威力も下がるでしょうし。


 って――あ! リッカが食べられた!!


「リ、リッカ!?」

「リッカ―――!!」


 スウさんもわたしも、悲鳴みたいな声を挙げました。


 ・・・・でも今のは食べられたと言うより、自らオケアノ・サウルスの口に飛び込んだように見えた気も。


 わたしとスウさんが地底湖に飛び込みます。


「〖重力操作〗、〖超怪力〗、〖怪力〗!!」


 わたしはオケアノ・サウルスに太刀を叩き込みました。

 突き刺さった!


 ――だけど、わたし達の援護は要らなかったようです。


 ドン! ドン! ドン!


 という低い音が水中に響き渡り・・・・オケアノ・サウルスの腹が、不格好に膨れていきます。


 やがてオケアノ・サウルスが白目を剥いて、リッカが口から飛び出してきました。


 わたしとスウさんは安心して、一旦〖飛行〗で水上に出て、小島の様な場所に戻ります。


「ま、待つニャ・・・リッカが抜けなかった防御力をなぜアリスが抜けるニャ!」

「スキルですよ。スキルを使えば、わたしの方がリッカより攻撃力があるんです」

「や・・・・やばいニャ。スキルを使われたら多分、アタシはアリスに勝てないニャ」

「どうなんでしょう?」

「多分アタシのチャクラム、パワーで叩き壊されるにゃ・・・」


 ヴァンデルさんも唸っています。


「俺等はスキルが使えんからな・・・」


 私達に遅れて、リッカも水面から顔を出しました。


「ふう」

「――もう、リッカ。ヒヤヒヤしたよ」


 スウさんが、ちょっと頬を膨らませています。

 わたしもヒヤヒヤしました。


「外面が硬かったからな、内部から攻撃してみた――あと戦ってる時に見えたんだが、扉があったぞ。多分あそこからさらに下層に向かうんだと思う」


 スウさんが、嫌そうな顔になります。


「まじでぇ、地底湖なんか入りたくないよ」


 すでに一回、入りましたけどね。


「ちょっと見てくる」


 リッカの顔が とぷん と水中に消えます。

 恐れを知らない子ですねぇ。

 お化けだけは、駄目みたいですが。


「ちょっとアリス・・・・気になったんだが、〖超怪力〗を使って俺と力比べをしてみないか」

「え・・・・」


 ヴァンデルさんはもうやる気満々のようで、腕を出してきました。

 そうして、わたしとヴァンデルさんとわたしはガップリ四つの姿勢に。


「相手を下がらせた方が勝ちだ――」


 相撲みたいな物でしょうか。


「――行くぞ」


 ヴァンデルさんの筋肉が膨れ上がり始めます。


「は、はい・・・〖重力操作〗、〖超怪力〗、〖怪力〗」


 あれ・・・・案外。


「ぬぉぉぉぉぉぉ―――!!」


 ヴァンデルさんが本気を出しますが、わたしはビクともしません。

 これは・・・・わたしは力を入れ始めます。

 するとヴァンデルさんが一歩下がり、そのままバランスを崩して、後ろに躓くようにして地底湖へ。


「・・・・う、うわぁ・・・ヴァンデルに力くらべて勝ったニャ」


 ヴァンデルさんが小島に戻ってきます。


「やっぱりか・・・・お前ら全員、無茶苦茶だ」


 するとスウさんが、


〔・・・・シャングリラ・ゴリラ〕


 ボソっと言ったので、わたしは罰としてスウさんのおしりを揉んでおきました。


「や、やめっ、アリス! キス以来、行為がエスカレートしてる!」

「罰です。甘んじて受けなさい」


 わたしの魔の手から逃れたスウさんが、ちょっと火照った顔をヴァンデルさんに向けます。


「というか、ヴァンデルさんが勝てるとは思えないよ」

「なに・・・? なぜなのだスウ」

「アリスって、私がヴァンデルさんを殴った時に使ったスキルは、ほぼ全部持ってるもん。しかも〖重力操作〗もあるし地が、私より力あるし〖怪力〗系は地の力に倍率で掛かる物だし」

「―――!?」


 スウさんの言葉を聞いた瞬間、ヴァンデルさんの顔が「サー」と青ざめた気がしました。

 トリテさんは完全に青ざめてます。


 なるほど・・・・スキルで殴ったんですか。それは怖い。


 暫しして つぷん とリッカの顔が水面にでてきました。


「駄目だ、開かない――なんか『我は、知恵無き者の立ち入りを禁ず扉』とか言われた」

「ふむ、リッカの成績じゃ無理ですか」

「なんだと」


 リッカ、わたしの言葉にちょっとご立腹。


 むくれたリッカが小島に上がってくると、湖面が黄金に輝きだしました。

 上から翼の音が聞こえてきて、ライオンの体に人の顔を持つ、巨大な生き物が降りてきました。


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