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302 古代図書館探索を開始です

「暗いですね――〖暗視〗」


 わたしが〖暗視〗を使うと、スウさんがヴァンデルさん達を振り返りました。


「みなさん夜目が効くタイプですよね?」

「ああ」

「だニャ」

「いかにも」

「じゃあ光源は要りませんか?」

「いや、ここの中を進んでいけば、真の暗闇になるだろう――そうなると流石に見えん」

「だニャ」

「わたくしは大丈夫ですが、しかし見えるものは温度のあるものだけです。ですから流石に松明を」

「なるほど、猫科の眼は光を増幅するだけでしたっけ」


 スウさん、猫科の眼に詳しいですね。


 ヴァンデルさんが、松明に火をつけようとした時でした。


「なるほどじゃあ、こっちですね〖輝け〗」


 なるほど、〖暗視〗を使うか〖輝け〗を使うか悩んでいたんですね。


「おおっ、松明要らずですか!!」

「はい。周りは本だらけですから、炎を使うのは止めておきましょう」

「なるほど、尤もですな」

「一酸化炭素も怖いですし」

「ふむ勇者様、一酸化炭素とはなんですかな?」

「空気が淀んでいるときに、炎が出す毒です」

「炎が出す毒!? そんなものが! ――そ、そういえば、空気の流れのない場所で暖炉を使うと人が死ぬことがあるという話を聞いたことがります。ドワーフの洞窟でも、その様な事故が稀にあり申した。・・・・一説には、風の精霊と仲の良い炎の精霊が、周りに風の精霊がいないことに腹を立てた為の怒りだと言われていましたが」

「ああ、その考えはだいたい正しいですよ」


 ふむ、確かにだいたい合ってるかも?

 アニミズム的説明なら、ああなるのかな?


「・・・・おおっ、そうでございますか!」

「はい、そんな感じの考え方でいいと思います。――さて、まずはこの辺りの本から調べていきましょう」

「さすが、賢者の卵――学士スウ。その知恵の深さに感服いたします」

「・・・・大げさですねぇ。アリスやリッカも知ってる知識ですよ」


 スウさんに勉強を教えてもらうと、とても分かりやすいんですよねぇ。


「なあアリス」


 リッカにエプロンドレスの袖を引っ張られました。


「どうしました?」

「一酸化炭素とはなんですか?」

「貴女は・・・・憶えておきなさい、高校生・・・・」


 呆れてモノも言えません。


「・・・・だけどわたしも上手く説明できる気がしないので、スウさんに訊いて下さい」

「わかった、後で訊いてみる」


 スウさんが〖輝け〗を投げて、天井に貼り付けました。


「これは明るくて読みやすい」

「ニャ!」


 〖輝け〗が広間を、本当に煌々と照らしています。

 ん、真ん中に吹き抜けがありますね。

 わたしは恐る恐る近寄って、吹き抜けの下を覗いてみます。

 そして後悔しました。


 あまりの高さに恐怖で腰が抜けて、その場にへたり込んでしまったのです。


「ど、どうしたのアリス!」


 スウさんが慌てて、わたしに駆け寄って来てくれました。


「こ、腰が抜けて」

「あ・・・・吹き抜けから、下を見たの?」

「は、はい」


 スウさんも、吹き抜けを覗き込みます。


「おお・・・・これはちょっと怖いね」

「ちょ、ちょっとですか?」

「うん、ちょっとだけタマヒュンした」

「や、やっぱり、有ったんですね」

「言葉の綾だよ」


 スウさんが私の腕を肩に担いで、吹き抜けから離れさせてくれました。


「最下層に地底湖みたいなのがあったね・・・・あの湿気のお陰で、程よく湿気が充満して、本を守ってたのかな? 本が乾燥しすぎてボロボロになったりしてない。日が差し込まないのも良かったみたいだし」


 スウさんが分析していました。

 なるほどです。恐らく自然に管理させる形で、本を保存していたんですね。


 みんな本を読み始めています。

 リッカも大人しく座って、分厚い本に真剣に目を通しています。

 読みながら何かを呟いてます。

 なんでしょう?


「なるほど。一酸化炭素とは『樹属性』が反転したときに生まれる『恐怖属性』と、『力属性』が融合したときに発生する毒なのか」


 なんだかとんでもない知識を身に付けていっていますが、――現代に帰ったら、きちんと教科書を読ませないと。


 わたしも本を手に取ってみましょう。


「なるほど。この宇宙は創世神がドロドロの〝世界の素〟を零してしまった事で、床に飛び散って生まれた世界の中の一つなんですね」

「アリスは、何を言ってるんだろう」


 正面に巻物を持ってきて座ったスウさんが、首を傾げました。


 わたしは眉間を揉んで、脳みそを正常な位置に戻します。


 わたしも帰ったら、宇宙関連の動画でも見直さないと駄目かもです。

 まあ、もうちょっと読んでみますか。


「――なになに? ・・・創世神は、巨大なブリキの樹を造り、これに知恵を吹き込み神とした」


 なるほど。別の本を読みましょう。

 わたしは立ち上がり、別の本を探しに行こうとしました。


 そこでふと、スウさんの読んでいる巻物が気になって覗き込んでみました。


「スウさん、何を読んでるんですか?」

「うん、この図書館の地図を見つけたから」

「あー確かに、まず見るべき物かもしれませんね。どこに有ったんですか?」


 スウさんが指差すと、入口辺りの籠に、適当に放り込まれたたくさんの巻物が。

 ――いやもう、あれは巻物というかパンフレットですね。

 わたしはパンフレットに近づいて一本貰います。

 席に戻り、パンフレットを広げます。


 まるで遊園地の案内のような地図と共に、この図書館のマスコットでしょうか。

 ブッくんと、ライブラりんと、ビブリ王が、様々な施設案内をしてくれています。


「深い層ほどディープな本を置いているんですね。地上部分の塔には娯楽本が多かったんですか――漫画もあったみたいですねぇ」

「くっ」


 スウさんが悔しそうにしました。

 ・・・・恐らくアレは、漫画を読みたかった顔ですね。

 わたしは地図を見ていて、ある文言で目を止めます。


全てを識る本(アレス・ノート)


 あれ? これを読めばなんでも分かるんじゃないでしょうか?


「スウさん、これ見て下さい」

「あっ、なるほどそれを探せば良いのか」

「探してみませんか?」

「だね、探してみようか。この広大な図書館を虱潰しはキツそうだし」

「ですね・・・最下層のさらに下層にあるみたいですね」

「よし、方針変更――みんな!」


 というわけで、全てを識る本を見つけるため、わたしたちは最下層を目指すことになりました。


「えっと、階段はどこニャ」


 トリテさんが階段を探し始めると、


「こっちかな」


 スウさんが吹き抜けに向かいました。

 ・・・・まさか。


「スウさん、吹き抜けを〖飛行〗で降りる心算(つもり)じゃ」

心算(つもり)

「・・・・まじですかぁ」


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