295 冒険者に剣道で挑戦です
というわけで、わたしvsトリテさん。
リッカvsヴァンデルさんとなりました。
「4人共、これを身に着けて」
スウさんが、何かを取り出しました。
「怪我したり、即死したら危ないから」
パイロットスーツでした。
「え、予備ですか? ・・・・なぜ4着も」
「うん、シルバーセンチネル。――特別権限で使えるようにしたんだ。アリスとリッカ、二人の身に何かあったら嫌だから。あと、この惑星で仲間が増えるかもって、余分に用意しといた。特にティタティー辺り」
「流石、準備が良いですねぇ」
医務室らしき場所で、わたしたちはパイロットスーツを着て戻ります。
もちろんトリテさんにも、ヴァンデルさんにもパイロットスーツを着てもらいました。
ヴァンデルさんとトリテさんは、勝手が分からず着づらそうにしてましたが。
あ・・・ヴァンデルさんと一緒に着替えたりしてませんよ?
ヴァンデルさんは後から着替えて貰って、着方をわたしとリッカが説明しました。
にしても銀河連合のフリーサイズってすごいですね。
ヴァンデルさんは2メートル以上ありそうな巨体で、筋骨隆々。リッカは145センチしかなくて細身なんですが。二人共ちゃんと着れています。
スウさんはトリテさんの露出が減って、残念そうにしてました。
――貴女が着せたんでしょうに。
今日はわたしもリッカもパイロットスーツの上から、ファンタジーな服を着ています。
「すごいな、このアーティファクト。木の武器では、まるでダメージが通らん」
「〈神の衣〉は時々発掘されるニャけど、ここまで強力な〈神の衣〉・・・視たことないニャ。これ一着だけでも売れば、一生暮らしていけるニャよ」
ヴァンデルさんとトリテさん、パイロットスーツに興味津々です。
こっちではパイロットスーツは〈神の衣〉と言うらしいですね。
「う、売らないでくださいね・・・連合にメッされちゃうんで」
トリテさんの言葉に、スウさんがちょっと慌てました。
「う、売るわけ無いにゃ! 勇者様の持ち物を勝手に売るなんて、そんな神をも恐れぬ所業――勇者様に殺されるにゃ・・・・」
「こ、殺しませんけども・・・・お仕置きはすると思います」
お仕置きと聞いて、トリテさんがガクガクと震えだしました。
スウさん今からトリテさんと戦うんですから、彼女にデバフ掛けちゃ駄目ですよ。
「じゃあ、わたし達も武器を選ばないと」
わたしとリッカは、木の武器の方へ行きました。
む・・・・刀が無いですね。
リッカが、スウさんを振り返ります。
「おーい、スウ。木刀がないぞ?」
「そ、そりゃ・・・・ウブスナ行かないと無いよね。二人共〈道具袋〉に木刀入れてない?」
「入れてないな」
「・・・・あっ、わたしは入れてます」
最近は、竹刀ではなく木刀持ち運んでますからね。
「じゃあアリス、私に〈道具袋〉貸して――二人は、〈道具袋〉を使っちゃ駄目だから」
「わかりました」
わたしは、スウさんに〈時空倉庫の鍵〉の腕輪を投げました。
見事に、キャッチに失敗する、スウさん。
流石、運動不足の擬人化。
スウさんは、木刀を〈時空倉庫の鍵〉から取りだし、持って――来ないで〖念動力〗で運んできました。
だから運動不足になるんですよ、擬人化さん・・・・。
ヴァンデルさんも巨大な木の斧を選びました。
リッカとヴァンデルさんは、ギャラリーに混ざりました。
最初の試合は、わたしvsトリテさん。
わたし達は、訓練場の中央に向かいます。
そうして向かい合う。
わたしは一つ礼をして、肩口辺りに木刀を立てて構えます。
「ん?」
リッカが反応しました。
「――アリス、構えを変えたのか」
文化祭からこっち、出稽古に来てませんもんね。
わたしが八相を使うようになったのを、リッカは知りません。
「なるほどな、とうとう八相の疾さに気づいたのか。・・・流石アリスだ。わたしも上段を使った甲斐があった」
やはり、わたしに気づかせる為でしたか。
では視ててくださいね。
「なんニャその妙な構えは・・・・両手で武器を使う――そもそも、なぜ盾を持ってないニャ。グレートソードならわかるニャけど。その程度の長さの武器を両手で持つのは何故ニャ・・・」
「開始の合図するぞー」
リッカが言ってきました。
「お願いします」
「頼むニャ」
「はじめ―――!!」
大きな声が響き渡りました。
ですが、わたしもトリテさんも動きません。
「む。・・・・す、隙が無いにゃ・・・、これは・・・その若さで見事ニャ。何者ニャ・・・」
「これでもわたしの国の――わたしくらいの年齢、剣の道を歩む者2,000,000人の頂点なんですよ」
「に、200万人の頂点!? ・・・・そりゃ、その若さでも侮れないわけにゃ――というか、200万人もの若者が戦士をしているなんて、そんな国知らないニャ」
あ・・・ちょっとマズイ発言でしたかね。まあ、詳しく訊かれたら誤魔化しますか。
――スウさんが、ちょっとビックリします。
「200万人・・・・? 高校剣道人口ってそんなに多いの?」
「うむ。男子も含めれば400万人になるぞ」
「アリスと、リッカって、そんなヤバイ物の1位と2位なんだ?」
「褒め称えろー」
「サイン下さい!」
「いいぞ~」
何してるんでしょう、あの人達は。
「これじゃあ、攻められない――」
トリテさんは、言いながら下がり、
「――ニャ!!」
円盤投げのように体を一回転、巨大チャクラムを投げました。
わたしは、慌てて後ろに躱します。
「隙ありぃ!!」
走ってきたトリテさんが、チャクラムの中央の軸を握って、チャクラム自体を回転させながら廻し蹴り。
足の指にはダガーが握られています。
なんてトリッキーな。
反撃のチャンスですが、トリテさんの頭が遠い――なら足を貰いましょう!
わたしは八相から太刀を振り下ろし、足を狙います。
「ヤアアア!!」
ですがその一撃を、トリテさんは足の指に握ったダガーで受け流す。
器用すぎないですか、その足!
「一瞬姿が、みえにくくニャった・・・なんなのニャ!!」
視線と等速を仕掛けましたが、流石に猫科の目が相手では、完全に姿は消せませんでしたか。
わたしが木刀を振り下ろし一瞬動きが止まった所に、地面に足を着いたトリテさんがチャクラムを握り、横一線。
大回転しながら、胴体を狙ってきました。
わたしは攻撃を木刀で受け止め――られない! ――威力が・・・・!
シャレにならない衝撃が、木刀を弾き上げ、わたしにたたらを踏ませます。
そうか、あれはリッカがダンジョンで見せた、フルスイングみたいな物なんですもんね・・・!
「どうやら、君の剣は、かなりお上品な剣ニャね!」
「剣道を、舐めないで、下さい――!!」