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260 クラスメイトを護ります

 扉から出ると、中は洞窟だった。

 洞窟と言っても床が光っていて、暗くはない。

 正直、観光名所になりそうってくらい風光明媚。

 地下大渓谷とかもあって、下から光で照らされた光景は、何度でも来たくなるほどの絶景だった。


「美しいですわ―――」「でも西園寺様、怖いです」「落ちたらどうなるんだろうな」「スウさんが助けに来ます」「ですわね」


 いや助けには行くけど、落ちないでね?

 そんな風に風景を楽しみながらみんなで歩いていると、いよいよ戦闘となった。


 基本的に、私は手を出さずに見学。


「茅野! コボルトが、そっちにいったぞ!」

「おう、本郷。任せろ!」


 茅野くんが人間の上に犬顔を持ったMoBの腕を、真っ向正面から取る。

 そうして茅野くんは振り返るように回転しながら、コボルトを腰に乗せる。

 さらに回転中に両足を揃えて、つま先と膝で腰を跳ね上げ、見事な一本背負い。


 芸術的とも思える孤を描いてコボルトが、頭から地面に叩きつけられた――って、コボルトの腕が折れてる。

 どうやら腕を極めながら一本背負いをしたらしい。

 茅野くん・・・・あんな可愛い顔して、やってることが容赦ない。

 茅野くんが男の人に襲われても大丈夫だなあ。

 え――「茅野くんは男だろ?」心配するくらいには、美人なんだよ。


 私が茅野くんの保持している戦力に怯えながらも安堵していると、地面に転がったコボルトを、黒田さんと傘木くんが拳銃で撃つ。


 瞬く間に結晶化して、消えるコボルト。


 その隣では本郷くんが半身になって、右手にレイピア左手に拳銃を構え、得物でも狙う獅子のようにコボルトを睨む。

 そしてコボルトが間合いに入ってきた瞬間、本郷くんが体を開くような鋭い踏み込み。

 まるでファンタシアで出会ったニクスって人みたいだ。


 本郷くんは流石に地球人で高校生だから、ニクスって人に身体能力的に負けてそうだけど、リッカはその辺りを物ともしないで勝ってたからなあ。


 本郷くんとリッカが戦ったらどうなるんだろう。


 コボルトの腕の隙間を縫うように、心臓の辺りを見事な一突き。


 ぐらついたコボルトを佐藤さんと、本郷くんが拳銃で撃つ。


 コボルトが結晶になって消えた。


 もう一匹いたコボルトも、チグと十十くんと御子柴さんが見事な連携で倒した。


 茅野くんと本郷くんが、つまらなさそうに言う。


「歯ごたえないなあ」

「ああ。弱い」


 違います。茅野くんと本郷くんが強すぎるんです。


 あとその戦闘民族みたいな捉え方を聞いていると、震えます。


 にしてもここのコボルトはどこから来てるんだろう――まあMoBはいくらでも増殖するらしいしなあ。

 どっかで発生させてるのかな。


 チグが、コボルトの消えた虚空を見る。


「いやー、本当にモンスターとかいるんだねえ」

「チグは苦手?」

「ゲームとかあんまりしてないから、こういうの詳しくないんだよ」


 なるほど。それでも順応早いと思うけど。


 問題なくコボルトを倒して行ってるし。

 それからも何度かコボルトとの戦闘があったけど、このメンバーの相手にはならなかった。


 ただ、ソイツとの遭遇は突然だった。


「ん、なんか見た目の違うのが居ますわよ」

「あれはなんでしょうか」


 御子柴さんがおっとりと答えたけど。

 私は敵を見て青ざめた。


『ハイパーミュータント コボルト種 ドミナント・ヘルハウンド』


 ハイパーミュータントって、初心者クエストで出てくる訳無いよね?


 私がやった初心者クエストの戦闘訓練って、運動不足の私でもあっさりクリアできたほど簡単だったもん。


 現れたドミナント・ヘルハウンドの見た目は、真っ黒な双頭の人狼という感じだった。


 相当巨大だ。人型になったフェアリーさんより身長がある。

 そんなのが、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


 茅野くんと本郷くんの顔が険しくなった。


「おい、本郷。あれ」

「ああ――今までと強さの桁が違うぞ」


 私はペンダントを握って、時空倉庫のゲートを開く。

 さらに、腕輪でも時空倉庫を開く。

 そして、前を歩くチグの腕を引きながら叫んだ。


「え、スズっちな――」 

「みんな下がって!!」


 イヤーギヤで、連合に連絡を入れる。


「すみません、初心者クエストでハイパーミュータントがでてきたんですが、これは正常ですか!? ドミナント・ヘルハウンドってヤツです!」

『ドミナント・ヘルハウンド? え―――ドミナント!? ――そんなもの、一切予期されていません!!』


 やっぱりトラブルなのか!


「じゃあ、私が外から持ち込んだ武器を使って倒して良いんですね!?」

『もちろん構いません! しかし、その敵はバーサスフレームでないと・・・・今救援を向かわせます! 貴方のIDを教えてください!』

「スウです!」

『ス・・・・スウ? って、あのスウさんですか―――!? 特別権限ストライダーの!』

「はい!」

『じゃあ、もう好きにやって下さい。貴女の判断に任せます!! もちろん救援はきちんと送ります!』

「了解しました! ――」

「どうしたどうしたスズっち、トラブルか?」


 チグがこっちを見ている。


「う、うん。とんでもないトラブル・・・」

「あたしに手伝えるか?」


 私は開いた〈時空倉庫の鍵〉を指で示す。


「だめ、手を出さないで! スキル無しで戦える相手じゃない! ――みんな、このゲートの中から武器を取って。この敵は本当にイレギュラーだから! 武器を持ったら、来た道を戻って!」

「わ、分かりましたわ! って、アサルトライフルやマシンガンがこんなに・・・」


 みんなが驚きながらも銃を取ると、クエスト名がウィンドウに表示された。


難易度異常(ワンダリングイベント)〝スウさんごめんなさい。完全にこちらの手違いです。よろしくお願いします〟を開始しますか

⇨はい

 いいえ』


 なんだ、このクエストタイトル。


「え、手違いって書いてるんだけどクエスト名に」

「スウ・・・とかも書いてます」


 傘木くんと、御子柴さんが目をしばたたかせた。


 とにかく ⇨はい。

 そんな風に、私達が戦闘態勢を整えようとしていると、ドミナント・ヘルハウンドがこっちに突っ込んできた――疾い!!

 なんて俊敏さ!! ――走ってくる姿がもう、黒い影だ。


 狙われてるのは、西園寺さん。


 茅野くんが、西園寺さんをかばうように立ちはだかって、吹き飛ばされた。

 そうしてドミナント・ヘルハウンドが、西園寺さんにかぎ爪を――。


「〖念動力〗、〖再生〗!!」


 私は西園寺さんに迫るドミナント・ヘルハウンドの動きを〖念動力〗で動きを制して、飛んできた茅野くんを受け止めて〖再生〗を掛ける。

 大丈夫、茅野くんは命に別状はない。

 でも意識を失っている。


 私はドミナント・ヘルハウンドを睨んで、さらに、


 〖念動力〗、〖飛行〗、〖超怪力〗、〖怪力〗、〖前進〗、〖空気砲〗。


 スキルを使って亜音速で跳び上がる。

 そうしてニューゲームの銃底で、真正面からドミナント・ヘルハウンドのみぞおちに突き上げを叩き込んだ。

 でも流石に、相手は10メートルは有りそうな巨体。

 銃底パンチ程度じゃ、浮くだけ。


「浮きましたわ・・・」「―――あんな巨人が」


 私は、外れた自分の肩と手首に〖再生〗を使いながら、握ったままのニューゲームのトリガーを何度も引いて全弾を叩き込む。

 だけどこんなものじゃ、全然火力が足りない。

 みんなもアサルトライフルやマシンガンでドミナント・ヘルハウンドを攻撃してるけど、ほとんどダメージが通ってない。


「茅野をよくもっ!」


 普段は無表情な本郷くんが、リガルドA1を放ちながら、怒りに表情を染めている。


 私はみんなに忠告する。


「みんな鼓膜を守って!」


 全員が耳をふさいだのを確認すると、バーサスフレーム用――の64ミリ機関銃を乱射した。

 82ミリキャノンとかミサイルランチャーは崩落が怖いから使わない。荷電粒子砲は論外。

 64ミリでも怖いんだけど、これでないとダメージが通りそうにない。

 

「うわあああ、耳をふさいでも耳が痛い!」「何ですの、この振動・・・!!」「鈴咲が生身で怪獣と戦ってる!!」「―――っ!!」


 駄目だなみんな奥へ戻れないみたいだ、アサルトライフルの火力が通用しないみたいだし、みんなにバーサスフレームの倉庫に入ってもらった方がいい。


 私は近くにいる、気絶したままの茅野くんをまず〖念動力〗でゲートに入れる。

 けど、他のみんなと私の間には、結構距離があるんだよね・・・〖念動力〗で入ってもらおうと思っても、ちょっとだけ届かない。


「カストール、ポルックス、イダス、リンクス出てきて!」


 アルハナはフェアリーさんの中。

 連れておけばよかった。


『呼んだか? マザー』

『ママ、なにか御用?』

『母さま、何事だ?』

『母上、どうしましたでありますか』

「カストール、ポルックスはあの黒いのを攻撃、イダス、リンクスは後ろの人達を守って。喧嘩はしないでね!」

『了解した!』

『オーケー、ママ』

『分かった』

『承知であります!』


 このドミナント・ヘルハウンドっていうMoBの能力はなんだ、素早いだけならいいけど。


「すみません銀河連合、ドミナント・ヘルハウンドの能力――」


 私が通信しようとしていると、ドミナント・ヘルハウンドの攻撃が来てしまった。

 爪を顔面に受けて、弾け飛ぶ私。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 やはりフラグが立ってしまってましたか…。運営側がちゃんとしてなかったのか、はたまた『強敵を地球に呼び寄せてしまう悟○』みたくスウちゃんが居たからハチャメチャが押し寄せて来てしまっ…
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