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259 初心者クエストをはじめます

「鈴咲のパイロットスーツ白くてカッケェなあ。俺等全員、緑だもんな」

「いや、一人だけ目立って辛いです」


 ちなみに初心者クエストクリア時にある機体選択の時に、パイロットスーツも選べます。


 広い広い訓練場を歩いていると、笠木くんが「ヒィヒィ」言い始めた。


「つか、訓練場広すぎ! どんだけ歩くんだよ・・・!」

「巨大なバーサスフレームで訓練を行う場所だから・・・全長数キロ有るんだよね。受付までも1キロくらい」

「ゲェェェ」

「じゃあ〖念動力〗〖飛行〗」

「お? 体が浮いた」


 私は〖念動力〗で笠木くんを持ち上げて、自分は〖飛行〗で飛び上がった。


「え、なんですの、そんな力をお持ちでしたの? ・・・・鈴咲さん」

「スキルというやつか」

「あー、それでハイジャック犯を捕らえたんだっけ?」


 佐藤さんが驚いて本郷くんが納得すると、茅野くんが尋ねてきた。


「う、うん。みんなも飛ぶ? 低空飛行だけど。定員8名まで」


「飛んでみたいですわ!」

「鈴咲様、お願いします」

「楽しそうだね」

「良いね、頼むぜ」


 みんな是非という感じだった。

 往復する事になるかと思ってたけど、本郷くんが茅野くんを抱っこする形で全員一気に運べた。


 さて、受付に向かう途中だったんだけどNPCさん(軍人さん)に出会うと敬礼される。


「こ、これはスウ殿!」

「スウ殿、来られておられてたのですね!」


 私は飛びながら、文人敬礼を返し急いで駆け抜けていく。

 笠木くんがボソリと呟く。


「なんか鈴咲って、滅茶苦茶丁寧に扱われてるのな」


 みんなから依怙贔屓(えこひいき)みたいに視られちゃ嫌なので、一応解説しておく。


「えっと、称号のせい? 称号っていうのが有ってそれを持ってるとNPCさんの反応が良くなるんだよね」


 私が答えると、西園寺さんが首を傾げた。


「なんだか、そういう雰囲気には感じられませんでしたけど」

「ああ、本当に敬意を表わされている感じがした」

「親愛というか、そんな感じだったよな」


 本郷くんと茅野くんも首を傾げてた。


「訓練場には、いっぱい来てて、知り合いだからかなあ? それかプロパガンダだからかな・・・」


 私も首を傾げて、やがて受付まで来る。

 受付嬢さんが笑顔を向けてくれた。


「あ、スウ様お久しぶりです。そちらの方々は新しいプレイヤー様ですね。お知り合いですか?」

「えっと、学校のクラスメイトです」

「ああ、そちらではまだ、学校があるのですね」

「そういえばこっちには無いんですか? アイビーさんが学校を知らないようでしたけど」


 私の言葉に、茅野くんと佐藤さんが笑う。


「アイビー! アッハッハ! 憶えてる。コンビニで鈴咲に連絡してきた軍人! 鈴咲の慌てっぷりが面白かったんだよな」

「憶えてるー、あの時の鈴咲さん面白かった。あはは」


 さっさと忘れやがってください。

 受付嬢さんが、私のクラスメイトの反応に首を不思議そうに視ながら返してくれる。


「こちらではVR学習ですね」

「なるほど」


 それが効率いいですね。

 さて、受付嬢さんがクエストをウィンドウに表示させてこちらに渡す。


「あれ? 複数選択肢がある」

「はい。新設された複数人用の初心者用の実戦クエストが増えました。アプデというやつです」

「つまりパリピ用のクエストかあ」


 私が少し憎々しげに呟くと、チグが納得した。


「スズっちには関係無いやつだ」

「クラスで唯一私を構ってくれてるチグに言われると・・・・流石に泣くよ・・・?」

「ごめんて」


 私が眉尻を落とすと、チグは引き気味に手のひらを私に見せた。


「じゃあ集団の受ける?」

「個人の場合、鈴咲様がいなくなりそうですし不安です」

「ですわね。鈴咲さんがいないのは困りますわ――さっきの水没は、かなり焦りましたわ」

「じゃあ、集団でお願いスズっち」

「りょ」


 私は人数を記入して、ウィンドウを受付さんに返す。


「初心者9人と、経験者のサポ有りですね。ではこちらのゲートにお入り下さい」


 受付嬢さんがウィンドウを操作すると、一番奥の扉が開いた。

 中には青いゲート。


「じゃあ入ろうか」

「ちょっと怖いですわね」

「ゲートは危ない場所には繋がってないから、大丈夫だよ」


 コンピューターゲームには罠ゲートとか、即死ゲートあったり作ったりできるけど。

 連合は入って即死ゲートとか、周りモンスターだらけとか、そんな場所にゲートを作ったりしない。

 作ったら大問題だ。

 そしてゲートを作る技術は連合しか知らない。


「ただまあ、ゲートのある場所から離れると危ない場合はあるけどね」

「・・・それは仕方ないですわね」


 とりあえず私が最初に入る。

 中は殺風景な部屋だった。

 まあ、大体こんなもん。

 眼の前に扉が一枚あるだけ。

 すると突然、私の視界にウィンドウが表示された。


『10人以上の初心者をサポートした事で、〖導き手〗の称号を得ました。効果:一部の商品の割引』


 え、なにこれ。こんなのあったの!?

 どんな商品が安くなるんだろう・・・?


 私が唸っていると、男子が入ってきて、続いて女子が入ってきた。


「ここで、訓練を行うんですの?」


 私は西園寺さんに、頷き返す。


「あの扉の向こうに、何かがあるんだと思う」


 言っていると、アナウンスが流れた。


『ようこそ、新しい戦士たち。我ら銀河連合は皆様を待っておりました。これより簡単な訓練を行っていただきます。まずは武器を貸し出します。サポートの方もこの中からお選び下さい』


 壁が開いて、様々な武器が出現する。


「お、銃とか剣とか色々あるじゃん」

「盾もあるね」


 近接武器は色々あるけど、銃は拳銃しか無い。


『銃は射線に仲間がいる場合、自動的に安全装置が掛かるようになっています。ですが剣などで仲間に切りつけた場合、即時BANとなるのでご注意ください。これは今回の訓練だけではありません。またNPCやNPPに危害を加えた場合も同じです。この世界での犯罪は許可されていません』

「まあ、鈴咲がくれた動画視たからなあ・・・。他人を撃ったりする気にはならないぜ」

「突き指したらクッソ痛かったし」


 私はホッと胸をなでおろす。


「みんなが、怖い事する人じゃなくて良かった」


 ただ、どうでもいいけど笠木くん。多分あれ、突き指じゃなくて脱臼だったよ。


 私がどうでもいい事を考えていると、十十(そつなし)くんが訝しがった。


「まさか、プレイヤーを攻撃してくるプレイヤーがいるのかい?」


 私は肯定を返す。


「いるよ。特に、他人のバーサスフレームを壊してもお咎めないから。丁度、私とか私のクランメンバーとかこの前被害にあったし」

「そうなのか。気をつけるよ」


 私以外で一番大人しそうな御子柴さんが、ちょっと震える。


「怖いですね」

「鈴咲さんなら、コテンパンにしてしまいそうですけれど」


 重い空気になったのを感じたのか、西園寺さんが言ってクスクスと笑うと、みんな同感だという風に笑った。


「まあ、そうだね・・・。みんなは、どの武器にする?」


 本郷くんが、すぐに細剣(レイピア)の柄っぽいのを持ち上げてみんなに尋ねた。

 全国3位が持つと、本当に様になる。


 本郷くんがスイッチを押すと、細い光の刀身が出現した。


「ビームソードなのか。鈴咲、これはどうやって剣の形を形成しているんだ?」

「私も今その疑問を抱いたところだから、私に聴かないで」

「なるほど」


 本郷くんが納得して、仕組みを知ろうとしているのか光の刀身を消してツバをシゲシゲと眺めた。

 にしても、表情のない人だなあ。

 すると茅野くんが、本郷くんの脇腹をつついた。


「なんだよ、本郷めちゃくちゃ楽しそうじゃん!」

「ああ」


 え・・・・茅野くんは、あの無表情からどうやって情報を取得したの・・・。


「俺は柔道だからなあ。向いてる武器とかあるのか? 鈴咲」

「一つ言っておくけど、私は肉弾戦全然できないから。バーサスフレームでも接近戦はあんまりしないようにしてる」

「頼りないなあ」

「運動不足の擬人化である私に、何を期待してるの」

「じゃあ、この武器になる小手と脛当てでいいか」

「俺もそれにするぞ」


 黒田さんが、茅野くんと同じ小手と脛当てを手に取った。


「私は薙刀にします」


 御子柴さんがビームの薙刀ぽいのを手に取った。

 いや、なんで接近武器ばっかり。


「みんな、銃も持ってってね? 基本は銃で戦うんだから」


 こうして残りのメンバーは全員、近接武器はレーザーソード。

 あとみんなベレッタっぽい拳銃を選んだ。


 私も言われた通り、貸し出された銃を手に取った。

 やっぱりベレッタも良いなあ。デザインが直線なM1911コルトガバメントと曲線なベレッタM9は迷うよなあ。


 全員が武器を選び終えると、視界にウィンドウが出た。


『初心者クエスト〝とびだせ! 未来の大英雄!〟のサポートを開始しますか? 

⇨はい

 いいえ』


⇨はい


 みんなも ⇨はい を選択したようだ。

 (まあ、初心者クエストだしすんなり終わるだろう)そんな風に、この時は気軽に思っていた。

トゥイードルテ、トゥイードルダ姉妹の機体の見た目を変更しました。

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