256 命拾いします
さて結果、クラスメイト40人中、9人の申請が通った。私を入れたらこのクラスにはプレイヤーが10人いることになるのかな。
あいや、もう一人、前からプレイヤーだったらしい男子が一人いたんだよね。11人いるのか。
という訳でウチのクラスのプレイヤーは11人。プレイヤー申請が通るのはだいたい1/3位だって聞くし、これは大人なども含めてだから普通の高校生なら、このくらいかもしれない。
んで私以外にもう一人、前からプレイヤーだったのは、前にアビリティーキャンセラー飲んでたから知ってるかもだけど鷹森くんっていう顔のいい人。
髪を明るくしてる人で、いっつも窓際の一番うしろの席で椅子にあぐらをかいて空を見上げてる不思議な人で、何を考えてるか分かんないってイメージ。
他の男子は、
まずは笠木くん。
この人も髪を明るくしてて、短くしてる。
クラスのムードメーカー。で、ムードメーカーによるある、お調子者――つまり明るいけど考えなし。
なんでも首を突っ込んで、偶にやりすぎて痛い目を見てる。
ちなみに、私も被害に遭った『お風呂覗き』の主犯格。
さらにこの間は女子更衣室覗こうとして、女子にマジでブチ切れられてた。
私も殴った、グーパンで。こちとら人様にお見せできる体じゃないんだよ!
でも笠木くんは何が有ってもへこたれない、鉄の精神を持ってる。
羨ましい――私にないもの。そこだけは尊敬してる。
次は十十くん
名が体を表しているのか、なんでも卒なくこなす人。
いつも微笑んでいる、柔らかイケ面。
髪はサラッとしたストレートで、レイヤーボブのショートみたいにしてる。天パの私からは羨望の的。
面倒見も良くて、声も、話し方も、物腰も柔らかくて、なんなら腰つきも柔らかい。
ただ、この人もちょっと何を考えてるのかわからない。
しかし、鷹森くんが空に夢をはせてそうな「何を考えてるかわからない」に対して、十十くんはこっちが新月の夜を見せられているような、とらえどころのない「何を考えてるかわからない」。
なんでも微笑んで受け入れてくれるけど、ホントのところ手のひらで転がされてる感ある。
あの笑顔に細められた瞳の奥には、実は深淵が潜んでるんじゃないだろうか? と思うと、じっくり彼の目は見つめられない。
4人目、本郷くん。
この人は分かりやすい。ガッシリ、実直、寡黙、短髪、フィジカルお化け。身長190センチ。フェンシング部、全国3位。
噂で聞く限りストイックで、タクティックで、マーベリックな人。
ムキムキマッチョメンYEEEHAって感じじゃなくて、着痩せするタイプ。
寡黙な中に、優しい笑顔が見え隠れ。
体はでっかいのに、小動物が肩に乗ってる姿が似合うと思う。
もし彼を頼ったら、何も言わず助けてくれそう感ある。
5人目は茅野くん。
ウチのクラスで一番、女性ホルモン多そうな男子。「最早女子じゃないの?」って言う有様の見た目。
女子男子含め、ウチのクラスで一番可愛いのは誰? と聴かれたら、先ず名前が上がるだろうという異常事態、神様なんてことしやがるんだ。
でも一人称は「俺」、語尾は「だぜ」。中身は完全に男の子。ギャップ萌えにわぁい。
基本的に裏表のない性格。
柔道部で、60キロ級全国2位。得意なのは寝技――彼に抱きつかれるようにして戦う男子は、どんな気持ちなんだろう。
女子はさっき説明した西園寺さん、御子柴さん、黒田さん3人。
お嬢様、茶道部、陸上部の人。
そして慈母神チグこと、虹坂 千種。
女子の最後の1人は、佐藤さん。
ふんわり可愛い系の人で、私の動画をクラスの人に「カッコイイよね!」って広めた人。
あの件のお陰でチグともフーリともカレンとも知り合えたので、感謝してる。
暫くクラスのみんなが審査が通らなかった人はどうするか相談していた。
結果、審査が通らなかった人はゲートでフェイレジェに行くことになった。
つまりゲート組とプレイヤー組でバラバラに行動する事になった。
私が行先が別れたみんなをどうやって案内するか困って「アワアワ」なってると、ふと急に鷹森くんが私を呼んだ気がしてそっちを向いた。
かくして彼も、私の方をみていた。鷹森くんと目が合った。
鷹森くんはいつもの、何処か夢見るような表情から「にしし」って、私に子供みたいな無邪気な笑顔を向けたかと思うと、
「オレも1年前からプレイヤーやってるから、人数が多い方を案内しようか」
と言ってくれた。
人数が多い方を引き受けてくれるなんて、すごく助かる! 私は、九死に一生を得た気分だった。
――ちなみに通らなかった人が多かった時、〝当然〟言ったよ。
「ほ、ほら申請あんまり通らなかったから、研究なんて出来ないんじゃない? やっぱり出し物は、メイド喫茶とか・・・・」
「通らなかった人はゲートで行くか。ゲートは神奈川にも設置されたよな?」
――むろん却下された。
なので、鷹森くんの提案は本当にありがたい。
チグが私に迷惑掛けないようにと言ってくれたのと、私がコミュ障なのをクラスメイトが理解してくれているのもあり、人数の多い方は鷹森くんの案内に決まった。
心底安堵した。皆さんありがとう。
安心しながら待っていると、やがて降りてくるチュートリアル機、ホワイトマン。
『『『プレイヤーの皆様、お迎えに参りました』』』
校庭に集まる、新しいフェイレジェプレイヤー達。
放課後を利用して、フェイレジェに行くことになった。
私もフェアリーさんを呼ぶ。
待ってる間に、新しくプレイヤーになった人に説明する。
「とりあえずその白い機体――ホワイトマンに乗って、指示通りやったらチュートリアルが始まる感じ、その後初心者クエストって流れ。初心者クエスト終了までは、リアルに数日掛かるらしいから注意してね。スキップは絶対させてもらえない感じ」
笠木くんが首を傾げた。
「らしい?」
「私は――初心者クエスト受けたの、フェイレジェ初めて3年目だったから、6時間で終わっちゃって」
「なるほどなあ」
「え? 初心者クエストってめちゃくちゃ難しいって、攻略WIKIに書いてあるんだけど。普通一週間くらい掛かるって書いてあったんだけど」
笠木くんが、スマホをパタパタし始める。
すると、本郷くんがボソリと言う。
「そこはほら、鈴咲だし」
相槌を打つ茅野くん。
「なるほど」
なんで、なるほど?
私が疑問を抱いていると、西園寺さんが私に尋ねてきた。
「初心者クエストの間は、ゲームは止められないんですの?」
私は西園寺さんに向き直って、質問に返答する。
「戦闘機に乗ればいつでも止めれるよ。戦闘機が近くにないならAIのドローンとかVRに言えば、戦闘機を呼んでくれる感じ。戦闘機が壊れてたら今は銀河連合が迎えに来てくれる。あとはゲートでも止めれるし、主惑星とか副惑星にはハイレーンに直通でなくても繋がってるゲートとかもあるから」
「電車みたいなものですの?」
御子柴さんが「うっ」という顔になる。
「新宿駅みたいな事になって無ければ良いですが」
「新宿駅は、最早ダンジョンじゃん」
黒田さんが何気なく答えた。
みんな新宿とか行くんだ?
レテ川の表記をレーテ川に変更しました。




