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248 リイムに乗って空中戦をはじめます

 191階。


「山かあ・・・」

「山・・・だなあ」


 私が、そびえるカラーコーンみたいな山を見上げると、リッカも見上げた。


 色は別に赤かったりしないけど、灰色の絶壁の山が高くそびえ立っている。


 でっかいマッターホルンみたいな感じ。


 その高さは、頂上付近に雲が掛かるほど。


「もしかして、次の階へのゲートは、あの頂上だったりするのかな?」

「路が、ずっとあっちに伸びてるなあ」


 今回の階には路があって、山の方向へ、ずーーーっと続いていた。


「どうしますか、登りますか? 涼姫は体力もちますか?」

「いや、登らないよ」

「え、でも多分次の階へのゲートは」

「〖飛行〗」


 アリスが納得する。

 若干、呆れ気味だけど。


「・・・・なるほど」


 リッカは完全に呆れ。


「相変わらず・・・そんなんだからプニプニなんだよ」

「あんな切り立った山、私がマトモに登れるわけ無いじゃん! ロッククライミングみたいな場所もあるじゃん!」


 とう言うわけで全員で飛んで、山の頂上へ。


 すると雲海の隙間から、なにか菱形の物が飛んできた。


「エイ――いや、マンタ?」


 それは、まるでマンタだった。

 マンタの真ん中に、細い龍みたいなのがくっついたような見た目だった。


 情報がVRに表示される。


 ドラゴン種 ハイパーミュータント ドミナント・ドラゴン


「え、ドラゴンなの?」


 すると、命理ちゃんが私に通信してくる。


『涼姫、他にザコがいないから、あれは恐らくボスよ』

「なるほど、あれを倒さないと次の階に進めないって訳ね!」


 私達は〖飛行〗で一気に舞い上がる――けど。


「は、早い――!!」


 相手が早すぎて、全く追いつけない。

 ドミナント・ドラゴンは、まるで菱形翼の戦闘機みたいに飛んで、こちらを追いつかせない。


「なんか金属みたいな体に見えるし、凄く重そうなのにあんな速度で飛ぶの!?」


 ドミナント・セレーナみたいな感じのMoBなのか。


 リッカがコンパウンドボウを取り出す。


「だけど、こっちは小回りが利く!」


 ドミナント・ドラゴンはその大きな翼のようなヒレのため、空力特性から大きく旋回して反転しようとしていた。


 容易に方向転換できるリッカが、ドミナント・ドラゴンの背中に向かって矢を放つ。

 だけど――

 

「旋回して避けた!? スウい真似を!」

「どういう意味だい?」


 私は一応ツッコミを入れておく。


 私がリッカに手の甲をぶつける仕草をしていると、ドミナント・ドラゴンが大きく上昇。

 なにか不思議な能力でも飛んでいるみたいだけど、大きなヒレから生まれる揚力もプラスして、一気に登っていく。


 私はドミナント・ドラゴンがやろうとしていることに気づいた。


「これ、マズ・・・」


 ドミナント・ドラゴンが高高度で反転、私達に向かって一気に急降下。


一撃離脱戦法(ダイブ&ズーム)!!」


 ダイブ&ズームは小回りの効く相手――つまり空中格闘戦能力の高い機体に対抗するため生み出された戦法――〝生身のまま〖飛行〗で飛ぶ私達〟に効果覿面!


 しかも、ドミナント・ドラゴンは凄まじい速度で降りてくる。

 完全にドミナント・セレーナより速い。

 あの速さは――やっぱりだ! 空気の傘が生まれた!!

 音速と亜音速の空気が混ざり合っている時に生まれる雲、ベイパーコーンだ。

 あれが見えるって事は、ソニックブームが発生し始めてる。


「みんな、あれ音速を超えて来る!! 逃げて!!」


 私達は、散会するように逃げ出す。


 ドミナント・ドラゴンがマンタの口のような場所から、横薙ぎの刃物のような金属を連続で放ってくる。まるで刃物のマシンガンだ。


 しかも音速を超えているドミナント・ドラゴンから、さらに音速で射出されているらしく、マッハ2以上のスピードで飛んでくる。


 狙われたリッカが素早く小太刀を抜刀して受け止めたけど、相手はマッハ2以上で飛んでくる金属みたいな物質――マッハも出せない〖飛行〗で飛んでいる私達じゃ、パワー負けしちゃう。


 リッカが吹き飛ばされた。

 危ない――追撃が!!


 リッカは真っ二つにされる寸前で、なんとか飛んでくる刃物を受け流す。

 ――けど、刃物の連続攻撃が止むことはない。


「ぐ、ぐ・・・・うぅぅぅ」


 リッカがマシンガンみたいに飛んでくる刃物の濁流を、苦しそうに受け流し続ける。


 オ、オリハルコンを手に入れられてよかった。


 いくら連合の金属で出来た刃物でも、あれだけの回数相手の刃物を受けたら、とっくに小太刀は粉々だったと思う。


 あと、狙われたのがアリスじゃなくてよかった。

 悪いけど、彼女はリッカほど上手く受け流しが出来ない。

 弾き飛ばされ続けて・・・・いずれ。

 ――いや、リッカでも辛そう。


 私がヒヤヒヤしながら見ていると、ティタティーが、リッカの前に氷の壁を作ってくれた。


 氷の壁は瞬く間に削られていっているけど、リッカに若干の猶予が与えられた。


 生まれた猶予の内に、リッカは急降下。


 〖飛行〗を切って急降下して、刃物の濁流を逃れた。


 ドミナント・ドラゴンは一旦攻撃を終えて、すぐさま急上昇。


 速度を高度に変換しながら、瞬く間に空の彼方へ消えていく。


 私はピストルカービン化したニューゲームを放つけど、相手が早すぎてなかなか目標付近に到達しない。

 これだと、簡単に避けられてしまう。


(これ、地球のコルト・ガバメントの様な音速を超えない弾じゃ、多分相手に追いつけもしなかったな・・・)


 私は〈時空倉庫の鍵〉から、アサルトライフルのグリムG6を取り出す。

 アサルトライフルの弾なら、小口径高速弾だ。

 FLの弾丸ならマッハ2を超える。


 そうして相手を追いながら撃つけど、これでも相手に躱されてしまう。


「だ、だめだ、小回りの効くってだけの〖飛行〗じゃ勝てない。あれに勝つには、もっと圧倒的な速度が必要だ」


 私が歯ぎしりしていると、命理ちゃんが前に出た。


「当機が行くわ」


 そっか、命理ちゃんなら超音速で飛べる。


 命理ちゃんが足のロケットを一気に噴射、ドミナント・ドラゴンに迫っていく。

 そうして接敵、互いに背後を取り合おうと、大きな円を描いて飛び始めた。


 その形は、だんだんと互いで螺旋を描くシザーズに変わって行く。


 命理ちゃんは指鉄砲を放つけど、ドミナント・ドラゴンは難なく躱す。

 そして、ドミナント・ドラゴンの動きを見て私は叫んでいた。


「横転コルク抜き!」


 バレルロール中にさらにスナップロールで小さく一回転して、相手に追い抜かせる空中戦機動!


 やっぱり命理ちゃんが追い越し(オーバー・シュート)してしまう。


 ドミナント・ドラゴンから、刃物のバルカンが飛んで、命理ちゃんの足に直撃。


「―――!」


 命理ちゃんが足のロケットエンジンが切り飛ばされて、錐揉み回転で落ちていく。

 だけど、彼女は〖念動力〗で体を浮かせたようだ。よかった。

 すぐに命理ちゃんから、通信が入ってくる。


『この相手、ドッグファイトが強すぎるわ。――ごめんなさい当機の腕では、勝てそうにない』


「命理はボクに任せて!」


 ティタティーが、急いで命理ちゃんの方へ飛んでいった。


 ティタティーが側にいいれば命理ちゃんは大丈夫だよね? ――最悪氷の壁で鉄壁にすれば。

 ・・・・でも、ドミナント・ドラゴンはどうする。どうやったらあれに勝てる?


「私がもっと早く飛べれば・・・」

「コケー!」(ママ、乗って!)


 リイムが、私に向かって飛んで来た。


 そうか! ――たしかに、リイムは私達の〖飛行〗より早く飛べる。


 音速は超えられないけど、亜音速でなら飛べる。

 これは、リイムが人一人乗せても大丈夫。


 私は音速を出せるけど、それは離陸の瞬間に地面を蹴った時だけ。

 亜音速の維持すらできない。


 リイムは亜音速の維持ができる。


「じゃあリイム、お願い!」


 私はリイムにまたがって、リイムの背中に掛けてある鐙に足を乗せた。


 私とリイムは、ドミナント・ドラゴンを追いかけてどんどん上空へ。

 今は私達が、後ろを取っている!


 こちらが近づいて来たことに気づいたドミナント・ドラゴンが、水平に飛んで逃げ始めた。


 アリスとリッカは、私達に追いつけない。

 付いてきているけど、どんどん距離が離れて、やがて二人は諦めたように止まった。


 ドミナント・ドラゴンが宙返り、またも無数の刃物が飛んできた。

 私はリイムの手綱を引いて、これを躱していく。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 何かの作品で『ドラゴンは一見するとその図体からして飛行や空中機動は不得手に見える→でも実はその身体にかかる慣性を姿勢制御スラスターみたいな能力で自在に制御(モビ○スーツなら、一見…
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