245 スウと戦います
「なっ」
黒い命理ちゃんの全身はスパークしている。
だけどたしかに彼女は立っている。
さらに回復まで始めている。
そうかスキル〖祈り〗でギリギリで耐えて、〖起死回生〗で回復を始めたのか!
私は243mmキャノンと、タイニーガンと、フォルゲンファウスト16連ランチャーで黒い命理ちゃんを掃射する。
バリアが阻んできた。
そうだ、この娘バリアも持ってたんだった!
ドライアド戦でも、首都奪還の時でも使ってた!
黒い命理ちゃんのスパーク背中のスパークが激しくなる――不味い、〈真空回帰砲〉が放たれる!
私は〈時空倉庫の鍵・大〉の中から出した武器で攻撃を続けているけど、黒い命理ちゃんのバリアが硬い、このままじゃ間に合わない――何か、何か起死回生の一手は――!?
そうだ〖念動力〗ならバリアにも阻まれない――いや、まてよ。
私は苦し紛れで、スキルを使う。
「〖味変化〗!!」
私は、黒い命理ちゃんの口の中の空気の味をとんでもない激辛にした。
目を見開いた黒い命理ちゃんが、口を押さえて足をジタバタさせて悶絶する。
(き――効いた!)
「これもお届け!」
私は黒い命理ちゃんに寄ると、彼女の肩に触れる。
〖サイコメトリー〗で〝鉄棒で股間を打った記憶〟を黒い命理ちゃんにくっつけ、彼女の記憶の一番前に持ってきた。
機械の体でも〖サイコメトリー〗が通用するのは、実験済み。
黒い命理ちゃんがさらに目を見開いて、股間を押さえて涙を流し崩れ落ちた。
でも、これは・・・ちょっとオーバーキルかも。
その間にも、私は一斉掃射を続けてバリアを破壊。
「ごめんね」
243mmキャノンで、黒い命理ちゃんを消し飛ばした。
一応〝鉄棒で股間を打った記憶〟は回収。
よし、これで全体の戦いの均衡が崩せる。
私は、一番ピンチに陥っている命理ちゃんの元へ飛んだ。
「命理ちゃん!!」
「ス、スウ―――・・・・」
命理ちゃんは、すでにボロボロだった。
立つのがやっとの様子。
「あとは任せて!」
「・・・ごめん」
「命理ちゃんをこんな目に遭わせて、ただで済むと思うなよッ!!」
私は、自分に更に再生を使いながら、スモークグレネードを投げつける。
そうして、危険な〖念動力〗の位置を察知。
長い透明の腕のような物が、8つ浮いている。
黒いスウの〖念動力〗の全てを、私の〖念動力〗で掴んだ。
黒いスウが舌打ちをする。
スモークグレネードが吐いた煙はもう用済みなので、〖空気砲〗で弾き飛ばす。
念動力の操作を捨てた私と黒いスウの間で、8本の〖触手〗が交差する。
左、
右、
左、
上、
同じ能力同士――決着がつかない。いや、黒いスウはバーサクモードな分、相手の方が有利――こちらが徐々に押されていく。
『〖味変化〗』
黒いスウが私の唾液の味を変えてこようとする。
「〖味変化〗! 私のやり方が、私に通用するもんか!」
私は変化した自分の唾液を、すぐさま甘くした。
私は、黒いスウの乗る黒いリイムの口の中を激辛にする。目を見開いた黒いリイムが墜落。
黒いスウは黒いリイムの異常に気づいて〖味変化〗を使おうとするが、私が先に黒いリイムを掌握。
黒いリイムに〝鉄棒で股間を打った記憶〟を植え付けた。
翼をバタつかせて大暴れする。黒いリイム。
そんな様子をみた本物のリイムは「コ・・・コケェ」となんかドン引きっぽい声を出していた。
でもごめんリイム、今はそれどころじゃないんだ。
私は、黒いリイムを容赦なく一斉掃射で吹き飛ばす。
そこから私と黒いスウは互いに243mmキャノン、タイニーガン、フォルゲンファウスト16連ランチャーを放つけど。
私と黒いスウ、どっちにも当たらない。
すると、黒いスウが〈荷電粒子砲〉を取り出した。
不味い――私は放射線被害を出すアレを使えないけど・・・・あっちは使える!
私は触手で〈荷電粒子砲〉の射出口を押さた。
触手は黒体だから、荷電粒子を吸い込める。
でもそうすると、触手の数が足りなくなる。
だけど触手が二本増えたくらいじゃ、私には当てられない。
そうして、そろそろだ。
高速で飛んでいた黒いスウが、床に激突――転がった。
そのまま黒いスウは、動かなくなった。
「気軽に、バーサクモードなんか使うからそうなる」
そう、黒いスウのバーサクモードが切れたのだ。だから黒いスウは意識を失った。
私は黒いスウにも一斉掃射、黒い影を消し飛ばした。
一方、私が黒いスウを下すほんの少し前。
霞の様になったリッカが、黒いティタティーの横に潜り込む。
黒いティタティーは、ギリギリ反応できた。
氷のつららを生成して飛ばす。
けど、リッカが打刀の柄で氷のつららを弾き飛ばす。
さっきアリスが言ってたやつだ。刀の柄はナイフ程の長さが有る、これだけあればリッカは攻撃を弾けるって・・・・流石、脅威のチビっ子。
「胴ォォォォォォ」
リッカの剣が、まともにティタティーの脇腹に叩きつけられる。
だけど、黒いティタティーも着ているシルバーセンチネルのせいで、致命傷にならない。
連合製の振動して相手を切り裂く打刀でも、シルバーセンチネルを抜けないのか・・・!
抜水術を封じられている今、リッカの膂力だと、強力なパイロットスーツの防御力を破れない。と、私は思った。
私が無理だと思っている中、リッカがなぜか、黒ティタティーに背を向けた。
――背中に襲ってくるつららを、背中に回した打刀で弾き飛ばす。
リッカはそのまま一回転。
――回転の勢いのまま逆袈裟を、フルスイングするように、黒いティタティーに叩き込んだ。
僅かに切れ目は付いたけど、シルバーセンチネルの防御力はまだ破れていない。
同じ場所を何度も攻撃すれば・・・もしかすると。
そんな風に思っていると――リッカは〖水作成〗と〖飛行〗と〖空気砲〗と〖怪力〗――さらにパイロットスーツの能力アップの勢いを使って、黒いティタティーに叩き込んだ打刀に、肩から体当たり。
体当たりで、打刀を相手にめり込ませた!
――ついに打刀が相手のシルバーセンチネルの防御力を上回った!
「タァァァァァァ―――!!」
リッカは体当たりをしたまま、打刀を引き切る。
打刀が深くまで潜り込む――心臓を打刀が切り裂いた事で、黒いティタティーが霞のように消えた。




