242 超・危険なボスに遭遇します
かくして161階をクリア、私達はより深い階に向かうのだった。
――どんどん進んで、またアイテムを手に入れていく。
〈星草の花冠〉 現在の天球図がいつでも見れる。リッカが手に入れたんだけど「役に立ちそうで役に立た無さそうな、微妙なアイテム」と言って私にくれた。
〈永久凍土の髪飾り〉 持つ者の氷属性を強化してくれる。
私がゲットした。即、ティタティーにプレゼント。
「スウ、本当にありがとう」
ヘアピンみたいな感じなので髪につけて、私がアリスに貰った髪飾りを見て、「お揃いみたい」と笑ってた。
〈夢見る香水〉 夢を見ている香水。その香りは夢のようで、惚れ薬になる。
命理ちゃんが手に入れた。
命理ちゃんが小瓶を両手で抱えて、「ジー」とこっちを見ている。
「スウ大好き」
「うん。その怖い薬を持ってる時に言わないで、早めにそれを仕舞おうね」
〈服溶かしの薬〉 服だけを溶かすスライムの粘液。
アリスが手に入れた。
アリスが小瓶を両手で抱えて「ジー」とこっちを見ている。
「スウさん――」
「その危険な薬を、今すぐ仕舞え!!」
その後、ちびっ子がアリスから〈服溶かしの薬〉を貰って、学校でマジに私へ掛けようとしてきたんで念動力で弾くと、ちびっ子にぶっ掛かった。
産まれたままの姿になるちびっ子。周りの男子女子が「ギョ」なのに、
「いやん、えっち」じゃないんよ。
そんなバカをしながらも、でかでかダンジョン探索開始から24日目、178層。そこは光が一切ない空間だった。
みんなが〖暗視〗を使う。
「〖輝け〗」
私は光球を放って浮かべた。光量は相当あるので、周りが真昼ように浮かんだ。
「何もいませんね」
「うん、というかどんな場所か分からないな」
「いや、みんな〖暗視〗を切って。いるよ」
「え、熱のない敵ですか?」
「本当だ――暗視を切ったら見えた」
光球に照らし出されていたのは今までにない、広い広い部屋だった。正直天井も奥の壁も視えない程広い。
そんな広い場所に、5つの影があった。
影は人影に視える。それは上半身をゆっくりと揺らしている。
命理ちゃんが警告する。
「きっとダンジョン・ボスだわ」
私達は武器を構え、影の様子を視る。
〖仲間〗を呼ぶかな? と迷っていると、急に影のふらつきが止まった。
そうして、5つの影が私達をそれぞれ指さしてくる。
すると――私を指さしていた影が、黒い私になる。
黒い私になった影の隣には、黒いリイムも出現した。
他の影もだ、指さしている人物の形になる。
「なに、アイツ」
『マイマスター注意してください。あの敵はシャドー、他人に変身して能力をコピーしてきます』
「え―――っ」
「それは不味くないですか!? 私達のパーティーには、化け物しかいないですよ!?」
黒いリイムに黒い私が飛び乗る。
黒いスウは宙に舞い上がり、
『〖仲間〗』
スキルを使った。
嘘、まさか・・・・!
空中に浮かび上がる無数のゲートその中から現れる、黒いドミナント・オーガ、黒いマンハント・ペリトン。
「スウさんも早く、モンスターを呼んで下さい!!」
「うん!! ――〖仲間〗!!」
急いでこちらも〖仲間〗を召喚。
対抗するように現れる無数のドミナント・オーガと、マンハント・ペリトン。
瞬く間に地上と空中で、モンスター達の戦いが始まった。
「――って、まって・・・・」
ドミナント・オーガにやられたドミナント・オーガが復活しない。
マンハント・ペリトンも同様だ。
「・・・・不死身同士だと、殺せるの・・・?」
驚いていると、私の方に走ってくる――黒い命理ちゃん。
――私の相手は、黒い命理ちゃんって事!?
こういう時のお決まりは、ミラー対決とかじゃないの!?
本物の命理ちゃんの方には、黒いスウが〖飛行〗で突っ込んでいる。
「みんな、これ全力出さないと本当に復活判定入るかも!! それだけは避けて、危ないと思ったら後ろのゲート・・・。――えっ、ない!? 勝たないと出しても貰えないの!?」
アレがあれば、ダンジョンの出口にもワープできるんだけど。
今は脱出転移とか使えないんだよ!?
全員の顔が厳しくなる。
コメントが凄まじい疾さで流れていく。
だけど、悪いけどもう読んでるヒマが無い。
アリスが蛍丸を抜き放ちながら、叫ぶ。
「みなさん、ここは踏ん張りどころの様です!!」
リッカが奥歯を噛みしめる。
「―――ッ」
「リミッター解除」
命理ちゃんの体が青く発光する。
ティタティーが大きく息を吸い込んだ。
「魔力開放」
私は、歯の間から鋭く息を吐いて、床に足を叩きつける。
「入れ!! ――ゾーン!」
世界が青く染まり、体の感覚が無くなって、世界が緩慢になる。
アリスの方には、黒いリッカが。
リッカの方には、黒いティタティーが。
ティタティーの方には、黒いアリスが駆け始めた。
黒い命理ちゃんが私に指を向ける――飛んでくる弾丸。
これは私なら、当たらない。
〖飛行〗で避ける。
『リミッター解除。〖進化〗』
黒い命理ちゃんの体が青く発光して、その後白い翼が腰に生えてきた。
◆◇◆◇◆
『抜水術』
黒いリッカの放つ恐るべき斬撃が、アリスを襲う。
リッカが叫んだ。
「アリス、受けるな、躱せ!!」
「はいっ! これを蛍丸で受けたら――蛍丸が切り飛ばされますね!!」
普通のサイズの鞘から抜き放たれた〝小太刀〟をアリスが躱す。
「出てくるのが小太刀って知ってなかったら、バッサリ切られてた所でした!!」
「アリス、油断するな!! 鞘から出てくる水で貫いてこようとするぞ!!」
「え――。―――っ」
必死の形相で、水を躱すアリス。
「こんな事、考えてたんですか!?」
「絶対に油断するな、剣道で戦ったわたしだと思うな、どんなズルい手でも使ってくる――明鏡止水に入れ!!」
「は、はい!!」
一瞬目を閉じたアリスが深い呼吸をして目を開くと、透明に輝くような瞳が現れた。




