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241 時が止まります

 サーバント・ジャイアントが1/3くらい減った時だった。


「我が兵をよくも!!」


 マウント・ジャイアントが言って大きく息を吸った。

 そうして吐き出す冷気でマンハント・ペリトンの半数を凍らせる。


「こいつ、霜の巨人なの!?」


 飛んでいるマウント・ジャイアントを、ドミナント・オーガは攻撃できない。


「リイム、力を貸して!」

「コケッ!」(うん、ママ!)


 私は用意していた(あぶみ)をリイムに掛けて、そこに足を乗せる。


「いこう!」

「コケー!」


 リイムが羽ばたく度に私達は加速していき、やがて亜音速に達する。


 マウント・ジャイアントが、こちらを苦々しく睨む。


「おのれ・・・速いな」


 マウント・ジャイアントの速度は私達の半分くらいだ。


「ならば見せてやろう、我が能力を――」


 マウント・ジャイアントが右手の鎌を天高く掲げると、魔法陣にも視える歯車が、奴の背後に沢山出現する。


 何をする気!?


「――時を刻む針よ――」


 マウント・ジャイアントが叫ぶと、ヤツの手に時計の針のような物が出現。


 マウント・ジャイアントは大きく振りかぶって、時計の針をぶん投げてくる。

 さらにマウント・ジャイアントが空に向かって、命令するような声を出した。


「――刻よ、止まれい!」

「え―――」


 ―――気づくと、私とリイムの前方500メートルほどに、時計の針のような物が――まるでワープしてきたみたいにあった。


「不味――」


 私はリイムの左の翼を〖念動力〗で無理やり折りたたませ、左右で揚力差を大きくして急速横転をさせる。


 時計の針が、空中を転げ落ちる私達の側をかすめていく。


 時止めとか、この巨人・・・チート能力持ってるの!?


「ごめんリイム痛かった?」

「コケッ!」(何ともないよママ、大丈夫!)


 良かった。

 にしてもこの巨人は、時の神クロノスって事?

 まてまてまて、その鎌はなんだ。それは豊穣の神クロノスの方でしょ!?


 誰だ、名前が似てるからって混同したの、アイリスさんが混乱してるじゃないか!

 そして私が苦労してるぞ!


 あと、霜の巨人はギリシャ神話じゃなくて北欧神話でしょ!!

 それ別の巨人! クロノスが所属するティターン神族じゃないから!


 ギリシャ地方は暑いから霜の巨人とかいない!


 オリンポス12神と戦った巨人じゃなくて、アース神族と戦った巨人の方!


 ――いや、今は戦いに集中だ。

 あの時計の針はどのくらいの速度で飛んできたんだろう?

 どうやらそれほど長く時間を止められないみたいだけど。


 マウント・ジャイアントが、少し驚いたように目を剥く。


「今の一撃を躱すか!? ――時を刻む針よ!」


 またマウント・ジャイアントが叫ぶと、ヤツの手に時計の針のような物が出現。

 マウント・ジャイアントは大きく振りかぶってぶん投げてくる。

 針に空気の傘が掛かった。マッハを超えている。


 また、刻を止める!?


 いや、止めてこないな。

 すぐに時止めを開始しないって事は、時止めにはクールタイムがある?


 針がこちらに当たりかけた所で止められたら困るけど、私はそんな事態にはさせないし。


 時間をカウントすると、針は2秒程で私達に到達する感じだな。


 私達とマウント・ジャイアントの距離は、いつもバーサスフレームで戦ってるだいたい1キロメートル。

 なら、あの針は秒速500メートルって所か。


 で、さっき時を止められた時に飛んできた針が、私達から距離500メートルくらい前方にあったから。


 なるほど。マウント・ジャイアントが時を止められるのは1秒程度!

 なら――反応する猶予も含めれば600メートル以内に近づかなければ、あの針が私達に当たることはない。


 相手が「刻よ止まれ」って言わないと刻を止めれないなら、針がワープみたいに飛んでくるの分かるからもうちょい距離詰めても大丈夫だけど。

 ちょっと詰めようか。


「時を刻む針よ!」


 マウント・ジャイアントの手に三度出現する針――両手!?


 二本の時計の針が、マウント・ジャイアントの手に握られた。


「刻よ――」


 来る。


「――止まれい」


 200メートル前方、針二本!

 私はリイムを急速横――いや、リイムが自ら回避運動に入ってる。

 流石、私の自慢の息子!


 私は攻撃に集中。

 タイニーガンを念動力で敵に向ける。


 相手の時止めのクールタイムは3秒か。


 その間に私は、命理ちゃんに通信を入れる。


 私は相手の攻撃を邪魔するように、しっかりと相手のど真ん中へ的を絞る。


「もうお前に攻撃の(すき)など与えない」


 マウント・ジャイアントが必死で弾丸を躱そうとする。


「巨体が仇となってるよ!」


 的が大きすぎる。マウント・ジャイアントが被弾しだす。


「づ、づおおおおおお!」


 硬いけど、だんだん相手の体が削れていく。


「刻よ、止まれい!」


 ――気づくと、マウント・ジャイアントがワープみたいに移動していた。


 やっぱり、こちらが正確な攻撃をすれば、時を止めても相手は逃げるしか無くなる。


 マウント・ジャイアントが時を止めても、攻撃の暇が無い。


❝ねえ、なんかさっきから配信がラグくない?❞

❝いや、どうも相手が時を止めてるみたいだぞ❞

❝え・・・・? ―――あの子、時を止めてくる相手と戦ってるの?❞

❝時止めを圧倒する一般人とか、いちゃ駄目だろ・・・❞

❝The Beastバケモン


 そこからも私は一定の距離を取りながら、マウント・ジャイアントと戦い続ける。

 マウント・ジャイアントは時を止めて距離を縮めようとしてくる事もあったけど、近寄らせたりしない。


 高い高い崖のスレスレを飛べば、揚力を得やすいので、これを使って急上昇したり。


 崖の形状によって発生する上昇気流も同時に捉えたりすれば、軽い私達は一気に浮き上がる。

 できるだけマウント・ジャイアントの上を取る。


 上の方を取った方が、針の速度が遅くなるから躱しやすい。


 バーサスフレームと違ってリイムが自分で飛んでくれるから、私は逃げながらでも常にマウント・ジャイアントを攻撃し続けられる。


 相手に、時止め+攻撃の隙なんか与えない。

 常に防衛に使ってもらう。


 そんな風にして、3回ほど時止めをこなした私は命理ちゃんに連絡。


「命理ちゃん、今!!」

『了解よ』


 マウント・ジャイアントは、私達が注意を引いている間に〈ヘウレカ〉を準備した命理ちゃんから、〈ヘウレカ〉の閃光が伸びる。


 不意打ちで、しかも光速の攻撃が避けられるわけもなく、マウント・ジャイアントはあっけなく「ジュ」っと焼かれた。


 ジルコンみたいになって砕けるマウント・ジャイアント。


「しっ!」


 私が拳を握ると、なんとも歯に衣着せないコメント達が流れていく。


❝ズ、ズル・・・❞

❝ズルすぎて草なんよw❞

❝That's unfair(これは酷い)❞


 だって偉人も『勝てばよかろうなのだ』って言ってんじゃん。


 伏兵の存在を忘れていた相手が悪いんだもん。


 とりあえず私は、問題を下から上へ流す。

 そうして残ったサーバント・ジャイアントの掃討に掛かる。


 アリス達とドミナント・オーガ&マンハント・ペリトンにだいぶやらた上に、リーダーがやられて逃げ腰になったサーバント・ジャイアントは私達の敵ではなかった。


 こうして、このダンジョン初のボス戦は終わった。

 戦いが終わると、刀を血振りしたアリスとリッカが呆れた。


「時止めを圧倒するとか・・・貴女はどこの漫画時空の人間ですか」

「ロボや武器はリアル系なのに、使ってる人間がスーパー系」

「リッカその辺りの知識あるんだ?」

「新ハードで新作が出たからやった」

「まあ、時止めと言っても、たった1秒だったし」

「スウなら、敵がもっと長い時間を止めて来たら、もっと距離を離すだけだろう・・・」


 リッカが目を細めた。


 いやまあ、そのつもりだったけど。

 私は「うーん」と首を振りながら、大地に着地した息子を視る。


「リイムがいたからだよ・・・ね、リイム」

「コケェ」(・・・・いや、ママが化け物なんだと思うよ)

「む、息子にまで化け物言われた。・・・ママ悲しい」


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