238 パーティーメンバーが増えます
「あれ?」
使用できた? どうなったんだろう。
「〖触手〗」
すると、影の中から2本のウネウネが出てきた。
「あー、同じ印石を使うほど増えるの? でも流石に私でも動かせるのは8本が限界だなあ」
「じゃあもう、スウさんが全部使ってしまったらどうですかニャン?」
「いやー、でもこれ〖念動力〗の劣化版ぽいんだけどなあ」
「物理的干渉を受けるみたいで、壁も向こうとかにも届かないっぽいし。流石に私でも〖念動力〗を8つ操作しながら、プラス触手を同時使用はできないし」
「でも、プルモースライムの触手みたいに切れ味は良さそうですよニャン?」
「なるほど」
とりあえず私は、8つの〈触手〉を全部使用してみる。
8っつを鋭く伸ばしてみる、集中線みたいんでカッコイイことはカッコイイ。
文字の形にしたり、絵の形にしたり何かを伝えるのには使えそう。
「しかし私、神話生物っぽいなあ」
私が触手をウネウネさせながら、自分の触手とじゃんけんをして勝っているとアリスが微笑む。
「随分可愛い神話生物もいたもんですねニャン」
❝激しく同意❞
❝推しが、神話になった❞
うーむ、おもはゆい。
「〖仲間〗はなんだろう」
私がイルさんに尋ねると、答えがあった。
『小型MoBを支配下におくスキルです。痛めつけて弱ったところにスキルを使用すると、仲間にできます。レアエネミーから出た印石のようです』
「そこは痛めつけてなのね・・・・」
『はい。わからせてやって下さい』
「でもMoBを仲間にって・・・大丈夫なのかな」
『星団帝国時代に、使用した人がいましたが問題は報告されていません』
「じゃあ使おう」
私は〈仲間〉を使用してスキルにする。
「とりあえずMoBがいないと実験も出来ないよね。プルモースライムを一匹釣って良い?」
みんなに振り返って尋ねる。
「いいですよニャン」
「また一杯来たら、スウが空爆すればいい」
「問題ないわ」
「いいよ」
私はスナイパーライフルのアーティストA1を取り出して、宙に浮く。
そうして1kmくらい先で空中を泳いでいるプルモースライムを狙って、撃ってみる。
銃弾が側を通った筈なのに、プルモースライムは暫く空中でくるくる回っていた。
気づかなかったのかな?
でも、私がもう一発地面を撃ってみるとこっちに気づいたのか、ゆっくりと飛んでくる。
今回は、クラゲだらけになるような事はなかった。
数発スナイパーライフルを打ち込んで弱らせたところで、〖仲間〗を使用。
『マイマスター、対象に触れないと駄目です』
「そなのか」
私はクラゲに触れて〖仲間〗を再使用。
クラゲが白く発光した。
すると、クラゲが私に頬ずりした。
「あ、可愛いかも」
見た目も、クラゲセラピーな癒やしだし。
『マイマスター、〖仲間〗のスキルは遠くにいる〖仲間〗を召喚できます』
「マジで? 〖仲間〗」
私が(プルモースライム来いー)と念じると、私の隣にゲートが現れた。
そのゲートから出てくるプルモースライム。
おお・・・(ゲート閉じろー)と念じると、ゲートが消えた。
「ああ――閉じるんじゃなくて、消えるんだ?」
――ふむ。
私は〖仲間〗を使用して、〖仲間〗のゲートに指を突っ込もうとしてみる。
すると、バチッと弾かれた。
軽く静電気のような感覚と、弾きかえられるような圧力。
『マイマスター〖仲間〗のゲートを通れるのはMoBだけです』
「そうなんだ? じゃあMoBが放つ弾幕とかは?」
『恐らく通れます』
「じゃあゲートの中から仲間に、安全に攻撃して貰うなんて事も出来そうだなあ」
『マイマスター、弾幕を放つような強力なMoBには恐らく〖仲間〗は通用しないでしょう』
「そっかあ――〖仲間〗のゲートで切断は?」
『すぐにそういう事を思いつくんですね・・・・無理です』
なんかAIに呆れられてる。
そこで私はふと気づく。
・・・あ、〝頼りになる仲間が増えるかも〟。
あとは〈飛行〉が16コも補充できたのも嬉しい。有用だしなあ、これ。
私は頼りになる〝仲間〟を呼ぶために、みんなに理由を話して、一旦神奈川へ。
そうしてダンジョンの151層に置いてきたプルモースライムに向かって、ゲートを開く。
「リイム、入れる?」
「コケッ!」
リイムがゲートに入っていく。
問題ない、弾かれたりしない。
やっぱり! 最近忘れてたけど、リイムは一応MoBだもんね。
アイリスさんの夢が生み出したような存在。
実はリイムは〖飛行〗よりも高速で飛べるんだよね。
私も〖飛行〗は〖超怪力〗とかスキル全開で飛び上がった瞬間は、超音速で飛べるけど、超音速の持続はできない。持続できるのは、時速400キロ位が限界。
でもリイムは、人間を乗せて亜音速を維持できちゃうトンデモ飛行能力を持ってる。
だからもしダンジョン内で空戦になったら〖飛行〗で戦うより、リイムに乗って戦うほうが良い。
頼りになるぜ、うちの息子。
アルカナくんも一応入れるか試そうとしたけど、やっぱり弾かれた。
「スウ様の力になれず、残念です・・・」
「ありがと、その気持だけで十分だよ」
「はい」
本気で辛そう。
地球で護衛してくれるだけで十分なのに。
さて、プルモースライムを神奈川へ。
これをしないと、リイムがこっちに帰れない。
増殖とかしないよね?
一応プルモースライムに、言いつけておく。
「プルル、絶対増殖とかしないでね?」
すると、プルルは一回転して頭を下げるように傘を下げた。
だ、大丈夫かな。
「アルカナくん、プルモースライムが増殖とか――なんか様子がおかしくなったら、スマホに連絡して」
「わかりました。このスライムの監視の任、このアルカナめにお任せ下さい」
「う、うん。よろしく」
というわけで、私はダンジョンに戻る。
「リイムちゃんいらっしゃいニャン!」
「リイムきたかー!」
「リイム、久しぶり」
「白き聖獣様、お久しぶりです」
「コケッ!」(みなさん宜しくお願いします!)
リイムはアリスの様子が変なので一瞬首を傾げたけど、みんなに頭を下げた。
リイムの言葉は、テレパシーがある私にしか分からないので一応通訳。
「みなさん宜しくお願いします。だって」
「リイムちゃんかわいいニャン」
「礼儀正しく育ったなあ」
言って、アリスとリッカがリイムをなでなでし始める。
リイムは気持ちよさそうに、されるがまま。
リイムはナデナデされるの好きだもんなあ――ナデナデがないと寝込むくらいだし。
「じゃあ探索を再開しようか」
私が言うと、みんなが腕を挙げた。
「はいニャン」
「おー」
「了解」
「うん」
「コケッ!」




