226 商います
次の日、アリス、リッカ、メープルちゃんと来たダンジョン攻略。
ティタティーは色々準備があって、後で合流。
アリスがスマホを見ながらビックリする。
「わ――昨日、星の騎士団が50階に到達したらしいですよ」
「すごっ、私達も負けてられないね」
まあ、私達85階にいつでも行けるからチートなんですけど。
「ですね!」
そんな事を言いながら超空洞ダンジョンの20階。
なぜかここで商売をしているプレイヤーが、一杯いる。
流石に非プレイヤーや、NPCはここに来れない。一部パーティーを組んで連れてきてもらっているみたいだけど。
でもここの存在は「実際助かるだろうなあ」とは思った。
大概の場合、ここに来るまでに結構物資を使い切ってしまう。特に〈時空倉庫の鍵〉のない人たちは、物資がもたない。
だからここでご飯を食べたりするらしい。
あと、この先からかなり攻略が大変になるから、この先で足止めを食ってる人が多くて、ここが休憩場になってしまう。
つまり需要と供給が成り立った露天市。
もちろん商品はかなり割高なんだけど、どの店も繁盛している。
でも数千万クレジットある私には、割高だろうがなんだろうが関係なし。
まあ、クレジットならもっと持ってる人は結構いるらしいけど――おもにビブリオ・ビブレとか。あそこは資金源が謎。
で、私ってばバーサスフレーム用の〈時空倉庫の鍵・大〉とか持ってるわけで。
それを使って最近はじめたお金儲けがある。もちろん印石の欠片の購入資金の為。
「あ、スウさんだ! アリスさんもいる」
「仕入れの時間だ!」
「おーい、みんな。物資が来たぞー!」
私とアリスにワラワラと集まってくる店主たち。
私達が、最近は物資を運び込むようになったんだよね。
「倉庫を開くんで、持って行って下さいねー。あ、中は時間が存在しないんで、危ないから入っちゃ駄目ですよ?」
私とアリスが倉庫を開くと、フォークリフトが来る。
私が取り出したい物資を念じると、ゲート付近に移動してくる。それをフォークリフトが取り出して持って行く。
「いやー、いつも助かるよー」
「いえいえ。荷物の搬入は自動ですし、あとはここに来るだけでおまんがな」
「なんでこの人、急に怪しい関西弁になったの」
最近の涼姫は、商人モードなんでおま。
「商人といえば浪速の商人やろ?」
「は、はあ」
この商売、すんごい楽なんだよね。
私はバーサスフレーム用の倉庫を開いて、アリスとVRで宿題している間に荷物の搬入が終わる。
なのに、一週間に一回くるだけでボロ儲け。
これで印石の欠片を買いまくり。
30分もすれば荷物もはけて、さて探索。
露天で食べ歩きをしていたリッカ、命理ちゃんと合流。
ちなみに他のクレイジーギークスのメンバーは最近、10階に到達したらしい。
まあ、他のクレイジーギークスのメンバーの攻略が遅いのは仕方ない――私達とは、持ってる武器も防具もスキルも何もかも違う。・・・・一般の人は大体5階位で攻略が止まるらしい。
「こんリッカー」
あ、リッカが配信を始めたみたい。
にしてもリッカはいつも唐突に始めるなあ。別に良いんだけども。
私も始めようかな。
私が配信準備をしていると――連絡が来た。
「あ、ティタティーが到着したみたい。ちょっと迎えに行ってくる」
私とアリスは荷物の搬入が有るから早めに来たけど、ティタティーは「遅れてくる」と言っていたんで待ってたんだ。
するとリッカが喜んだ。
「ティタティー来れたんだ?」
私は、リッカの喜び向かって頷く。
「案外あっさりだったよ」
「確かに有効な手段だしなあ――ダンジョン攻略は、あっちの人間に頼んだほうがいい」
でもアリスは、
「ティタティーさんですか。わたしを仲間外れにして、リッカたちとイチャイチャした時に知り合ったという人ですね」
とか、怖いことを言っていた。
「それはほんと悪かったから、もう責めないで・・・・!?」
「アハハハハ。冗談ですよ、待たせてるなら早く行ったほうが良いですよ」
ねえ、目が笑ってないよ!?
「じゃ、じゃあちょっと言ってくるね――〖飛行〗〖前身〗〖念動力〗〖怪力〗〖超怪力〗」
私はアリスの視線から逃げるように、スキルを全開にして飛んだ。使ったどのスキルもレベルがⅡになっているので更に早い。
しばらくして、私がティタティーを背中に乗せて返ってくると、アリスがティタティーを見て目をパチクリとさせた。
ちなみにティタティーにも、江東さんが作ったサイト、フェイテルリンク交換所で買ったパイロットスーツを着せた。
前にユニレウスで手に入れた奴と同じ、銀牙とセンチネルを混ぜた、シルバーセンチネル。
ティタティーはシルバーセンチネルを着たら、その上から魔術師のローブを着た。私もパイロットスーツの上から服を着たい。
「その方がティタティーさんですか? はじめまして、アリスって言います」
「はじめまして、ティタティーって言います」
アリスは、ティタティーを見ながら何かを我慢する仕草をした。
アリス研究者の私にはわかる――あれは、頭を撫でたがっている。
「ず、随分可愛らしい人ですね。リッカより更に幼く視える」
「まて、アリス。わたしをどういう目で見てたの」
珍しく、リッカが困惑した。
「ロリな化け物ですね」
「ロリではないよ!? 中学生くらいに視えるって言われるけど!!」
「ティタティーさんは、小学生くらいに視えますね。妖精族みたいですが、何歳なんですか?」
「104」
言われてアリスが止まった。
――ややあって驚く。
「ひゃ、ひゃくよんですか」
アリスが指折り数えだす。
いや104は104だと思うけど、なんか計算してんの?
するとリッカが、ティタティーに話しかけた。
手を差し出してハイタッチしてる。
「ティタティー、セーラ様は元気?」
「うん、元気。だけど毎日忙しそうにしてる。王様が身を引いて、アンドリュー様が王様になったから」
「マジか、バルバロン様退位したんだ?」
「うん。もうアンドリュー様に王位を渡したほうが安心って。アンドリュー様のやってる農地改革とか高炉とかすごくて、誰も反対できなかった」
「おー、スウの内政チートが炸裂したかあ」
「セーラ様曰く、アンドリュー様の握る権利に、欲の面を貼り付けた奴等が群がってきて仕分けが大変です。だって」
「セーラ様がんばれー。応援してるー」
「セーラ様に伝えたら、きっと喜ぶ」
アリスが首を傾げる。
「スウさん、ファンタシアにどんな余波を与えてきたんですか?」
「余波って・・・・ただの教科書の内容だよ」
するとなぜか、リッカが頬を膨らます。
「そうそう、三圃制農法とか持ち出してさ」
アリスが首を傾げた。
「さんぽせい?」
「ん? 爽波だと習ったんだよね? 授業中寝てた?」
「ちゃんと全部聴いてますよ。なんですかそれ、農業分野みたいですが。休んでた時にやっていたのでしょうか」
「あ・・・・あれ、アリスは習ってないの? ・・・・なんでスウは知ってたの?」
私は「あ」となり、二人の疑問に答える。
「えっと――ハクセンさん勘違いしてたんだけど。私、配信とか有るから勉強は早め早めを心がけないと、みんなが受験勉強開始したら追いつけなくなるかもって思ってて。だから先に教科書を三年生の部分まで勉強したんだ。で、それが終わったから今は受験対策してる感じ」
「・・・・リアルチーターだったか」
「・・・・スウさんの勉強法、怖いです。でもこの人特進クラス蹴ったんですよねえ」
「だって配信とか色々有るし、特進なんて無理だよ」
「先生に引き止められてましたけど、流石にスウさんは色々有るんで止められませんよねえ」
「止められたら本当に困る・・・・」
私は話を変えようと、おずおずと拳を上げて意気揚々を演出してみる。
「・・・・じゃ、じゃあメンバーも揃ったし、本格的にダンジョン攻略(練習)しようか。今日の連携確認を終えたら、明日はいよいよこっちの85層に降りてみようよ」
「ですね」
「そういえばスウ」
「ん、なに? リッカ」
「151階まで行ってる方のダンジョンの情報は、開示しないの?」
「あ・・・・」




