223 最後のパーティーメンバーに気づきます
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只今私達は50層の、超空洞ダンジョンの30階にいます。
ああ、層と階がややこしい。
層は銀河の分割単位で、階はダンジョンの分割単位です。
そして現在私とダンジョンを攻略してるメンバーは私、命理ちゃん、アリス、リッカ。
本当は85階まで一気に飛べるんだけど、私達はまだダンジョンの事を全く知らないので、配信しながら練習がてらダンジョン攻略しています。
そうしながら印石の欠片の使い方を視聴者に説明する。
「という訳で、夢の中みたいなダンジョンの最奥に行かないと印石の欠片は使えません。非常に危険な場所で、恐らく命理ちゃんのパーティーメンバーでないと最奥には行けないと思います。しかも今の命理ちゃんにはクリア出来ないと本人が言ってます。パーフェクト命理ちゃんでないと無理らしいです。で、パーティー枠はあと一人なんです」
説明しながら、現れたミノタウロスを銃で撃ち倒して、私はふと気づいたんだ。
「あ、そっか! これ・・・さ」
「どうしました?」
「多分なんだけど、ファンタシアの人に手伝ってもらった方が良いと思う。ほらファンタジーの惑星の人」
「・・・・え――?」
アリスが疑問を呟いて、首を傾げながら蛍丸を血振り(血はついていない)のように動かして背中にしまった。そして気づいたようになって、顔を跳ねさせた。
「――あっ! そ、そうですよね!」
リッカと命理ちゃんも納得の顔だ。
私はさらに続ける。
「あの世界の人こそ、ダンジョンとかお手の物だと思うんだよね。正直な話、バーサスフレームを使わない戦いで、あの世界の人たちに立ち向かえる人は、なかなかいないと思う。特にティタティーだよ。彼の量子魔術なんか、もう威力が滅茶苦茶だったじゃん。凄まじい研鑽の下に、本当にファンタジー世界の大魔法みたいなの使うんだから」
「そ、そうですよね。確かにこのダンジョンは、あの世界の方々の土俵です――って、あれ? ティタティー? わたし達、そんなに魔術が達者な人と出会いましたっけ?」
アリスに、言ってなかったっけ?
――あ、言ってない。
「ま、前にちょっと暫く、あっちに滞在した事が有って」
「なんですかその話? しりませんよ? くわしく教えてくれませんか?」
アリスが、私に顔をどんどん近づけてくる。
「いや夏休みにさ、暫く向こうに寝泊まりしてだけ――アリスはお仕事忙しいし、拘束時間が、ほら・・・・」
「そうですか? 私の事を思ってくれたんですね?」
アリスの顔が、私の視界を埋めていく。
私は怖くて、ちょっと手のひらで彼女の胸を押し返す――意外と固くない。
「そ、そうそう!」
「他に誰かと行きましたか? 隠さないで下さいね? 調べれば分かりますよ?」
嘘ついてないか調べるの!? 本当に、怖いんだけど!!
「リ、リッカと行ったかな」「おう、行ったぞー」
「リッカだけですか?」
「あとはハクセン!」
「リッカとハクセンだけですか?」
「メ、メープルちゃん・・・」
「ふぅん・・・・わたしを仲間はずれにしたんじゃないですか? スウさんわたしのこと嫌いになりました?」
「な、なってないから! お願い、その浮気調査みたいなの止めて!?」「スウはアリスのアの字も言わなかったぞー」
「リッカちょっと何言ってんの!? 話をかき回さないで!? 誰かを呼ぶならって思った時、アリスの事を真っ先に考えたから! 嘘じゃないから!!」
「そうですか・・・・? じゃあ今度行く時は、わたしも連れて行って下さいね? 次は予定を訊いて下さいね? なんなら予定を空けますから」
「予定を無理やり空けるような発言はちょっと怖いけど。――う、うん! 今度から『ほうれんそう』を心がけるよ! ――じゃあ、銀河連合とちょっと相談してみるべきだと思うから」
「絶対デスヨ? ハイ、ドウゾ」
いま機械みたいに言われて、背中が寒くなったんだけど。
❝アリスが病んでるwww❞
❝めんどくさい彼女みたいなムーブメント、ワロw❞
❝なるほど、最後のパーティーメンバーはファンタシアの人間種最強を連れてくるのかあ❞
❝妥当な考えだわな。マジであそこの惑星の人間は、肉体的に強い人多いもん❞
「イ、イルさん、銀河連合に連絡入れられる?」
『了解しましたマイマスター。お待ち下さい』
イルさんが連絡を入れている間に私はダンジョンを眺める、綺麗――というか壮大な洞窟だ。
前回は夢みたいな場所だったから全部あんな感じなのかと思ったら、今回は普通に洞窟なんだけど、サイズ感がおかしい。
黒曜石の洞窟が、半径数千メートルはありそうな巨大な洞窟を形成してて。
さらに360度から水晶の柱が、無数に立っている。
この水晶の巨大さがまた凄まじい、一つ一つが柱――と言うより、ビルや塔だ。
遠くには、東京タワーみたいなサイズの水晶の柱まである。
地球にも水晶の洞窟とかあるけど、それを何百倍にもサイズを大きくしたものだと思ってくれたら良いかも。
巨大な水晶の洞窟は言ってみたら巨大なジオードだけど、そんな感じでジオードを超々巨大化した世界。
こんな光景から、このダンジョンは「超空洞ダンジョン」と呼ばれている。
印石をレベルアップできるダンジョンは、命理ちゃんが「夢見るダンジョン」と呼んでいたので、配信で「夢見るダンジョン」と告げた。
でも、やっぱり夢見るダンジョン以外も、ダンジョンは全てアイリスさんの夢の中みたい。
ちなみに、この超空洞ダンジョンの壁を無理やり掘って進んではいけない。
穴を掘れば、外は灼熱の地獄だ。
パイロットスーツを着ていれば焼け死ぬ事はないだろうけど、戦える状態ではなくなる。
『マイマスター、返答がありました。アイビー・アドミラー様に繋ぎます』
「今回の対応は、アイビーさんなのかあ」
どういう基準なんだろう? ――暇な人?
『お久しぶりです。スウさん』




