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222 レベルを上げます

 私がいれば、印石の欠片を沢山手に入れられると命理ちゃんに言われて、私は張り切る。


「そっか―――そうだね! まかせて、命理ちゃん!」


 命理ちゃんが、太陽でも見たように眩しそうに目を細める。


「涼姫、ありがとう。大好き」


 ―――い、命理ちゃん。そのすぐ告白する癖は、昔からの癖なんですか? 毎回照れてしまいます。


 私は、取り敢えず聞くべきことを尋ねる。


「こ、ここも命理ちゃんのパーティーに入れば、下層に飛べるの?」

「飛べるわ。というかここは、最下層まで飛べるわ」

「・・・最下層。――どうやるの?」

「この惑星のMoBが落とすのよ。〈パーティー〉っていう印石を。もちろん当機は〖パーティ〗のスキル持っているから、今すぐ二人をパーティーメンバーにできる」

「パーティー・・・一人で攻略してた命理ちゃんに酷なスキルを」

「でもお陰で、当機はここからはフルメンバーで挑めるわ」

「そっか・・・そうだね頑張るね」

「うん。頼りにしてる」

「その〖パーティー〗は銀河連合が管理しているのとは、別のパーティーなんだね?」

「そう。じゃあパーティー申請するわ、手のひらをこっちに出して」

「うん」


 私は命理ちゃんに手のひらを差し出す。彼女はその上に手のひらを重ねて何かを呟いた。

 命理ちゃんの手が青く輝いた。

 その光が私を包んでいく。


「振り払わないで」

「分かった」


 やがて青い光が私の全身を覆う。


(これでパーティーになったわ)


 こ、この娘、脳内に直接!!


「念話が可能になるの!?」


(そう、面白い?)

(超楽しい)


 私が無言で命理ちゃんと会話していると、アリスがむくれた。


「今、念話っていいましたよね。念話とかしてるんですね! 二人だけで黙って会話しないでください。わたしも入れて下さい!」


 命理ちゃんがアリスに向き直る。


「アリスも手のひらを出して」

「はい!」


 命理ちゃんは、アリスにも私と同じ手順を行う。


(聞こえますか?)


 すぐさまアリスが、無言の声を送ってきた。


(聞こえる聞こえる!)

(聞こえたわ)


 アリスが困惑しながら返す。


(これって、心の中ダダ漏れなんですか?)

(声を送りたいっていう意思が無いと、聞こえないから大丈夫よ)


 アリスが急に私を見つめる。

 何拍か置いて、尋ねてきた。


(スウさん、今の聞こえました? 命理ちゃんは聞こえましたか?)

(えっ、聞こえなかったよ。命理ちゃんだけに聞こえるようにするとか、いきなり高度なことやったの!? ――何言ってたの!?)


 すると答えたのは命理ちゃん。


(〽硝煙の中で呼吸した)

(わ、分かった。もういい)


「じゃあ最下層に飛ぶわ」


 命理ちゃんは気にしないで話を切り替えた。


「おけ」

「はい」

「ところでここって、何階あったの?」

「130階よ」

「130・・・・大変だった?」

「本命っぽい151階より大変だったわ」


 ・・・・ロストテクノロジー盛り盛りの頃の命理ちゃんが大変って、どれだけ大変なんだろう。


 命理ちゃんに続いて、まどろむような光のゲートに入ると、コマ落ちのように景色が切り替わった。


 見えた景色。―――そこは、まるで幼子の情景(トロイメライ)だった。

 優しさと、切なさで胸が一杯になるような光景。


 私の視界の向こうで一人のエプロンドレスの少女が笑い、夏の草原を駆け抜けていく。

 暖かな風が緑の絨毯を優しく撫でて、足元を輝かせ、遠くに消えていく。

 風の消えた森から、鳥の鳴き声が響いてきた。


「ねえ、命理ちゃん――あの女の子って」

「アイリスだと思うわ。面影が有るもの――でもあれは幻覚よ、かつて当機は追いかけたけれど触れる事すらできなかったわ」

「アイリスさんって・・・・なんだか私の幼い頃に似てますね」

「そうなんだ?」


 私が言うと、アリスが少し悲しそうに微笑んだ。

 どうしたんだろう・・・。――そうだ。


「ねえ――命理ちゃん、アイリスさん・・・・もしかしてここに一人ぼっちなの?」


 命理ちゃんはうつむくだけで、私への返事は無かった。

 アリスが一本の大きな木を指をさす。


「あの木、輝いていませんか?」


 アリスの指の先を追うと、小高い山に一本の木――こんもりとしている。

 その樹は白い花を垂らし、たった一本、寂しげに佇んでいた。


「トネリコ?」


 私は樹を見て「知ってる樹だ」と思った。


「トネリコってなんですか?」

「いわゆる世界樹のモデルになってる樹かな」

「流石、世界樹が何の樹とか知ってるんですねえ」

「必修科目だよ・・・」

「―――どこの世界の必修科目ですか」


 ・・・・オタクの世界の。

 命理ちゃんが、樹に向かって歩いていく。


「あれが進化の樹よ」


 私は、不思議な樹の名前に首を傾げる。


「進化の樹・・・?」

「来て」


 樹には、私の胸ほどの高さの場所に「AILICE」と刻まれていた。

 そこから黄金の光が溢れている。

 命理ちゃんが私に尋ねてくる。


「涼姫、印石の欠片は有る?」

「まってね。私、ほとんど無いんだよね、印石の欠片より印石が出ちゃって。ちょっと、適当な印石を砕くから」

「――そう、大丈夫?」

「全然大丈夫」


 私はファンタシアから印石を取りに行った時に、もしもの時に備えておいた印石を取り出す。

 取るのが面倒な〈毒無効〉とか、取りに行くのが嫌な〈飛行〉とかじゃない。

 取るのが簡単な〈空気砲〉。


 握ると、簡単に砕ける印石。もう〖空気砲〗は所持しているんで、欠片が消えたりしない。

 命理ちゃんが砕けた印石を見ながら尋ねてくる。


「どのスキルをレベルアップしたいとか有るかしら?」

「それは、印石の出現率を上げる〖奇跡〗かな」

「〖奇跡〗はレア度が高すぎて、レベル上げるの大変だと思うわ。もしかしたら今持ってる印石を全部使い切ってしまうかも」

「それは・・・・取りに行くのが嫌な印石とか有るから。――じゃあ、一番使う〖念動力〗を上げたいかも」

「それなら、今砕いた印石を50つ砕けばいけると思う」

「〈空気砲〉は、いくらなんでも50個はないなあ」


 私は既に持っている印石の欠片と、〈空気砲〉以外の手に入れやすい印石を砕いて命理ちゃんが指定する量の印石の欠片を用意した。


「じゃあ涼姫、そのAILICEという文字に触れて」

「わかった」


 手を文字に近づけると、手のひらが黄金の光に照らされた。温かい――まるで印石から伝わってくる温かさだ。


「もしかして、あの温かさって――アイリスさんの心の暖かさ?」


 間違っていない気がした。

 私は文字に触れる。すると優しい光が、私を包む。


 声はしなかったけど『貴女は、どんな夢を望みますか?』って訊かれた気がした。


「え、普通に夢を答えるの?」

「当機は昔、『アイリスが救われる未来』って答えたけど『夢は夢よ、クスクス』って笑われた気がしただけで、何も起こらなかったわ」

「なるほど、じゃあ〖念動力〗の進化を」


 『人は眠っている時こそ本当の姿。だから夢こそ本当の世界』そんな事を言われた気がした。

 相変わらず、声は聞こえないんだけど。


「人は眠っている時こそ本当の姿?」

「目覚めて活動するというのは進化して手に入れた能力なのよとか、アイリスは言っていたわね」

「ふむ、アイリスさんって物知り?」

「というかアイリスは凄く頭がいいわ――策略を組ませたら彼女の右に出る者はそうはいないわ・・・予測が未来予知じみてるのよ」

「え、そんなに!?」

「だから、今のマザーMoBは恐ろしい」

「マザーMoBって、アイリスさんの力も備えてるんだ?」


 黄金の光が更に強くなった気がして、光がもとに戻る。


「これでレベルが、上がったのかな?」


 私の疑問に答えたのは、アリス。


「雪花で調べてみてはどうですか?」

「なるほどたしかに」


 アリスの提案を受けて、わたしは雪花で自分のステータスを調べてみる。


ID:スウ


 力:25

 知力:58

 敏捷:331


 ステータス上昇:

  原始反射加速60% 

  空間把握20%

  筋操作(切り替え)20%

  酸素消費量低下10%

  記憶力拡大20%

  集中力持続強化60% 

  思考加速15%

  反射神経加速60%

  筋力アップ 30%  

  筋操作(精密)30%

  筋操作(速度)30%

  頑強(骨)20%

  頑強(筋肉)20%

 

称号:〖伝説〗、〖銀河より親愛を込めて〗、〖開放者〗


 スキル:〖奇跡〗、〖暗視〗、〖強靭な胃袋〗、〖超怪力〗、〖怪力〗、〖第六感〗、〖超暗視〗、〖サイコメトリーμ〗、〖念動力μⅡ〗、〖再生〗、〖飛行〗、〖超音波〗、〖マッピング〗、〖超聴覚〗、〖前進〗、〖味変化〗、〖黄金律〗、〖空気砲〗、〖ショートスリーパー〗、〖洗う〗、〖怪力〗、〖毒無効〗、〖人化〗、〖熱耐性〗、〖幸運〗、〖質量操作〗


 魔術:土属性


 クラン:クレイジーギークス

 所持機体:XFT-01 フェアリーテイル

     :WT-5 ホワイトマン


「確かに〖念動力μⅡ〗になってる」

「ミュ◯ツー?」

「やめなされ」


 その後、アリスも〖重力操作〗を〖重力操作Ⅱ〗にした。

 ちゃんと誰でも、レベルアップできるみたい。


「帰りはどうしたら良いんだろう」


 私が尋ねると、命理ちゃんが木の裏に回った。


「ここから」


 そこには〝起きぬけに観る太陽のような光〟が、空間のひび割れみたいな場所から漏れていた。

 アリスがちょっと真剣な声色を出す。


「じゃあ、一旦出ましょうか。命理ちゃんの言う通り、なんだかここにずっといるのは、危険な気がするんです」

「実は私も。だんだん眠くなってくるし、しかも眠ってしまったらこの夢の一部になってしまうんじゃないかって・・・そんな予感がする。アイリスさんの夢・・・ダンジョンってまるで印石みたい――ダンジョンって言う存在が巨大な印石で、その中なのかな?」

「かもしれないわ。そしてこの夢見るダンジョンは特に夢の性質が強いの」

「なるほど・・・早めに帰ったほうが良さそうだね。――命理ちゃん、帰っていいと思う?」

「もう、何もする事はないわ」

「じゃあ、急いで帰ろっか」


 私は、草原で蝶を追いかけて走るアイリスさんに、


「また来ます」


 声を掛けてダンジョンから出た。

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