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215 リイムが病になります

 私は旅客機をハイジャック犯から護った後FLに引きこもるため、連休を利用し泊まり込みになるクエストをアリスやみずきとこなして、3日ほど地球に帰らなかった。

 そして帰ってくると、


「リイム!?」


 アルカナくんがお世話していてくれたリイムが、寝込んでいた。

 私はビックリしてリイムに駆け寄りながら、アルカナくんに訊ねる。


「リイム、リイム!! ――ねえ、リイムはどうしたのアルカナくん!?」

「す、涼姫様・・・・それが、わたくしにも分からず・・・・今朝起きたら、ああして寝込んだまま全く動かなくて。ご飯を与えても吐いてしまって」


 は、吐いた!?


「と、とにかくお医者さん! 動物病院!」

「グリフォンを、診れるのでしょうか?」

「体の中身は、普通の動物だからいけるはず!」


 私がリイムを抱っこして玄関に向かうと、リイムは、


「・・・コケ」


 苦しそうにするだけであまり反応がなかった。なんだかリイムの鼓動も早い気がする。本当になんの病気だろう――死んじゃ嫌だよ!? リイム!!


 〖飛行〗で飛んでアルカナくんは〖念動力〗で持ち上げて、動物病院に駆け込むと、順番待ち。


 気が急くのを抑えながら順番を待つ。でも、抱っこしてるとちょっとリイムが、元気になって来たきがする。


「まってね。もう少しだからね、リイム」

「コケ・・・コケ・・・」(ママ、ママ)


 リイムの頭をゆっくりと撫でる。

 そしてとにかく順番が来たら、急いでリイムを診察室に――お医者さんはグリフォンを見てちょっとビックリしていたけど、きちんと診察してくれた。


 そして、初老の男性のお医者さんは診断結果を一言。


「なでなで不足ですな」


「は?」

「は?」


 〝なでなで不足〟?


 私とアルカナくんは 口をポカーン。


 なでなで不足ってなに。


「要は、鬱です」

「う、鬱・・・?」

「はい、ストレスで急性胃腸炎にもなっています――ビタミン剤を出しておきましょう。それから栄養補助食」


 とにかく急性胃腸炎になってるなら。

 私はリイムのお腹を触りながら、〖再生〗を使う。


「コケェ・・・」


 苦しそうなのは無くなったけど、元気は戻らない・・・。

 お医者さんがリイムの変化に気づいたのか、首を傾げる。


「おや? 何かしたのですか?」

「スキルで、急性胃腸炎を治しました」

「そうですか・・・すごいですね。――しかし飼い主さん。それだけでは駄目です。この病気の一番の薬は、――貴女の〝なでなで〟なのです、」

「わ、私の・・・・」


 お医者さんが優しく、私に諭してくれた。


「もしかしてここ最近、何日かリイムくんと会わなかったりしましたか?」

「み・・・3日ほど」

「動物にとって3日は長いですが、それでも3日でこの様子とは・・・・よっぽど飼い主さんを好きなのですね」

「そ・・・・それは」


 確かにリイムは、普段は私にベッタリだけど。

 私はとにかく診察台のリイムを優しく撫でてあげた。するとさらにリイムが元気になってきた気がした。


「コケ・・・コケ・・・」


 リイムは、嬉しそうに私の手にスリスリしてくる。


「なるほど。やはり貴女は、とても良い飼い主さんのようです。これからもリイムくんを大切にしてあげてくださいね」 


 言いながらお医者さんが、リイムを診察台から抱いて、私に戻す。


「はい、リイムは私の子供ですから――これからも一緒だよリイム」

「コケぇ」(ママ、ずっと一緒にいてね)

「もちろんだよ」


 私が言うと、リイムは私の胸に顔をうずめた。

 ずっと早かったリイムの鼓動が、少し落ち着いた気がする。

 よし分かった、今日はずっとリイムの側にいよう。


 いつもは学校だけど、今日もお休みだから、ずっとリイムの側にいるよ。


 私は家に帰って、とにかくリイムを撫でた。

 今までにないほど撫で続けた。

 すると、リイムはみるみる間に快復。

 そして、


「コケーーー!!」(リイム、今日もママと眠るの!!)

「黙れ珍獣、涼姫様はお疲れなのだ」

「コケコケコケ!」(うるさい、禿げ鳥!)

「ハゲだと!? これは、肌だ! 禿げているわけではない! 変な鳴き声の癖に!! 鷹としての誇りはないのか!!」

「コケー!!」(そっちも鳥なら、飛んでからボクをバカにしなよ!)


 二人は鳥同士だからか言葉が通じる様子。

 私はテレパシーのお陰でリイムの言ってることがわかる。で、喧嘩してるらしい。


 リイムが パタパタ~ とアルカナくんの頭上を飛び回る。

 これこそ正に、上から目線。


「き、貴様ァ―――!!」

「コォケェェエェエエ―――!!」


 でも、これは元気になりすぎ。

 私は腰に手を当てて、ご立腹。


「二人共! おやつ抜きにするよ!」

「えっ!?」

「こけっ!?」


 アルカナくんが震えながら私に向かって、ゾンビのように歩いてくる。


「す・・・涼姫様・・・・? それだけはお許しを」


 リイムは翼を広げて、スライディング土下座。


「コケコケコケコケ!」(ママ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!)


 二人共涙目になった。

 私はため息を吐いて、肩を落として二人に尋ねる。


「じゃあ二人共、仲良く出来る?」

「は、はい! 勿論です! わたくしはチキン野郎とだって、仲良く出来ます!」

「コケッ」(うん! リイム、禿げ野郎と仲良くする!)

「何だと貴様!?」

「コケぇ!?」(ソッチが先に言ったんでしょ!?)

「事実だろうが!」

「コケッ!!」(こっちだって事実を言っただけだもん!)


 私は二人に雷を落とす。


「二人共、止めなさい!! ちゃんと仲良く出来るまで、おやつ抜き!!」


 その後、二人は涙目で私に謝ってきた。

 ちゃんと仲直りしたらしいのでホットケーキミックスで、ホットケーキを焼いてあげました。


「コケ」(アルカナ、ママのホットケーキ美味しいね!)

「おう、リイム! ――これこそ、正に至高の逸品!」


 仲良くなって良かった。もう喧嘩しちゃ嫌だからね。

 でも、至高の逸品ではないよ・・・・ホットケーキミックス使ったホットケーキなんか、誰が作ってもほとんど変わらないから。


 余ったホットケーキミックスは、二人の朝食の為にアメリカンドッグにでもしようかな。

 もちろん、私も食べるけど。というか明日のお弁当にもしよう。

 なんとなく、二人を優先的に思考してしまうのです。




 そんなこんなで次の日、学校で昼食の時間。

 いつも通り、アリス、チグ、フーリ、カレン、みかん、私が屋上に集合。


 なんか前に私に「ジュース奢ってよ」って言った先輩の女子生徒が、私を見て距離を取っていく。


「ま、またいるよ、スウ」

「マジかよ、アイツやばいって。下級生だけどアイツにだけは手を出しちゃ駄目だって――暴力装置だろ、あんなのもう」


 ぼ、暴力装置!?


「あの、サイドテールの暗黒神みたいなのが一番ヤバイヤツかと思ったら、スウが一番ヤベェじゃん・・・! ――なに、銀行強盗素手で制圧してんだよ。なに、ハイジャック犯制圧したりしてんだよ・・・・!? ――しかもアイツ首席だし、頭も切れるんだろ!? 暴力も、法の力も通用しないって噂じゃん!? あと猿織ってヤツがクラスでひどい目に遭ってるのアイツにちょっかい出したせいなんだろ、私達もそんな目に」


 ・・・・ええ!?

 震えながら離れていく上級生を見ながら、私は涙目。


「私、そんな怖い人間じゃないのにぃ」


 人が遠ざかっていく光景は、陰キャにはトラウマでしかない。


 あと猿権くん、2学期に入ってから酷い目に遭ってるのか・・・私もクラスメイトと上手く行かなかったからなあ。

 私が原因なら、流石に助けてあげよう・・・アリスに二度と手を出さないかは確認するけど。


 私が後で4組の様子を見に行こうと思っていると、フーリが茶道家のような姿勢で、半眼のままおにぎりを口に運んで静かに言う。


「事実しか言われてないのだけれど」

「事実!?」

「貴女を切れさせて、幸せになった人間・・・いたかしら?」

「う・・・うーん?」

「まあ、体育祭の時にアビキャンで貴女に絡んでいた小守先生くらいかしら・・・貴女に文句言って幸せになったのは。――急に雰囲気の変わった小守先生は、生徒に徐々に人気になっているそうよ――・・・」

「あ、あの先生は、根はいい人だったんだと思う」


 そこで急にフーリが、憎々しげに呟く。


「おにぎりの具に昆布は、冷えるとガチガチになるからお止めなさいと、あれほど・・・!」


 おにぎりが震えてる・・・! 破壊神が降臨してる! こ、こういうのが暴力装置ですよ、上級生さん!?

 

 さてと。今日のお弁当はお楽しみのアメリカンドッグだ。


 お弁当箱を開くと、みんな大好きアメリカンドッグが3本。

 私は楽しみにしていたアメリカンドッグを持ち上げて、口に入れようとした。

 刹那――私の眼の前を黒い影が横切った。


 気づくと、私が手に持っていたアメリカンドッグがない!


 頭上から「ピーヒョロロ~www」の鳴き声。


「奴等かあっ!」


 湘南や江の島付近の空には、強盗がいる。

 空賊とも呼ばれる(私が勝手に呼んでいる)。

 たまに、トビ又はトンビとか呼ばれる鳥だ。


 特に江の島の東側では、奴等に食べ物を盗られたという被害が後を絶たない。


 だが食べ物を奪われ空の上に逃げられては、人間は手も届かず、人々は泣き寝入りしてきた。

 そんな捕食者、トンビ――もとい空賊達。

 しかもここは学校の屋上、奴等にとっては絶好の狩り場って訳だ。


 「爽波高校の屋上でお弁当を食べるのは危険」と言われる所以はこれだ。

 ――え、初耳?


 さて、・・・・アメリカンドッグの1本くらい良いや。あと2本あるし。


 私も泣き寝入りしながら、もう1本を持ち上げる、


「と、でも言うと思うたか!!」


 振り返れば、また黒い影が急降下してきていた。


「させるかぁ!!」


  私は、ヤツのクチバシと顔を〖念動力〗で掴む。


「こちとら弾丸も躱すと言われ、空を飛行機で幾万(いくまん)時間も飛んできたんだ! そんな私に、その程度の(はや)さの一撃離脱戦法ダイブ・アンド・ズームが通用すると思っているのか!? 片腹痛い!」

「なあフーリ、スズっちが、また変なヤツになってる」

「放おって置くのよ、いつものことなのだから」


 カレンとフーリになんか絶妙に酷いこと言われてるけど、とりあえず気にしない。


 私は〖飛行〗〖前身〗〖念動力〗〖怪力〗〖超怪力〗〖飛行〗で空に上る。

 全力を出したことで、一瞬亜音速に達する。音速出したら学校が壊れるのでやらない。


「ちょっと、反省してもらおうか?」


 私はトンビに反省を促すために、亜音速で近づいた。


 するとアメリカンドッグを爪で掴んで「ピーヒョロロ~www」とか、馬鹿にするみたいに私達の頭上を飛んでいたトンビが ビクゥ となって逃げようとする。


 でも鳥程度が、私の速度から逃げられるわけ無い。


 下からアリスが、


「えっ、スウさんトンビが掴んだ物を食べる気ですか?」


 こちとら〖強靭な胃袋〗と〖毒無効〗持ちでね。

 ――いや、食べんけど。


 〖念動力〗で、トンビの首根っこを掴んで引き寄せる。


 トンビはもう恐怖のあまりか、眼を真ん丸にして震えている。

 トンビが恐怖で落としたアメリカンドッグは、〖念動力〗で掴んだ。


 私はトンビの額に指を押し当てて、「メ」っと言った。


 その後トンビが墜落したりしないように学校の屋上にエスコート。床に降ろして、彼の前にアメリカンドッグを置いてあげた。


 震えていたトンビが私を見上げたので、頷くと、トンビは器用にアメリカンドッグを足で押さえて あむあむ し始めた。

 友達なのか、私が最初に〖念動力〗で掴んだトンビも降りてきて、私を見上げたので頷くと、二羽で仲良く あむあむ し始めたので暖かく見守る事にした。

 その後、私がアメリカンドッグを食べるのを再開するとトンビが肩に乗ってきた。


 チグと、みかんが、


「懐かれてて草」

「スズっち、すぐに動物に懐かれるけど、ビーストテイマーなん?(笑)」


 なんて笑ってた。


 トンビは鷹の仲間なので、リイムみたいで可愛かったので肩に乗ったトンビはナデナデしてあげた。

 すると後日、私が屋上で食事していると、たまに肩に乗って来るようになった。


 ――ただね、私をカラスとの抗争に巻き込もうとするのは止めて?

 カラスとの空中戦が始まると「先生、頼んます」みたいに降りてくるのやめて?


 十数羽のトンビが一斉に私の周りを囲んで見上げてくるので、仕方なく亜音速でカラスの間を駆け抜けたら、その後カラスの間で「アイツはヤベェ奴DA!」とか噂が広まったらしく。


 私が道を通ると辺りのカラスの鳴き声がピタリと止んで、飛んで逃げていく様になっちゃったし。


 上級生どころか、カラスにまで逃げられるようになった私でした。

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