212 ハイジャック犯を制圧します
270話のドミナント・セレーナ戦でバレループをした時の説明がゴチャついていました。すみません><
すこし校訂しました。
分かりにくいなーと思った方、申し訳ないです。
「でも、コックピットを取り返せても、だれか飛行機を操縦できる人がいないと・・・・お客様の中にいるでしょうか」
すると、みずきが私を指さした。
「これなら多分できる」
だから、これ呼ばわり。
「できるんですか?」
「一応シミュレーターはやったことありますが」
「これ、スウだから」
「スウって、あのスウさんですか!? フェイテルリンク最高の戦闘機乗りって言われてる!」
客室乗務員さんが眼を丸くした。
「えっと・・・・こんにちわスウです」
「―――なるほど・・・貴女なら何とかできるかも――というか、今なんとか出来そうな可能性が一番高いのは・・・・貴女しか居ませんね。あの・・・お願いできますか?」
「分かりました。やってみます・・・・じゃあアリス、透視してもらっていいかな」
「はい、任せてください」
そこで乗務員さんが、少しためらう様な表情になって呟いた。
「――このフライトの副操縦士は・・・来月、私と結婚する予定なんです」
え、やだ・・・・そんなフラグやめて。
「わ・・・分かりました。できるだけお救いします」
「はい・・・」
でも彼女も分かってるんだと思う、もう殺されてる可能性が高いことが。
客室乗務員さんにドアの仕組みを教えてもらって、量子魔術で、ドアの向こうに金属の小さな玉を作って〖念動力〗で浮かせ、それを頼りにアリスに〖透視〗をしてもらって、レバーの位置を正確に教えてもらう。
金属の弾を移動させて、レバーが有る場所に来たら「そこだ」って教えてもらう算段。
私が金属の弾をゆっくり移動させると、アリスが伝えてくれる。
「もう少し右、行き過ぎです。戻って――そこです」
ショックなどで開きにくいように、上がUnLockになってるらしい。
私は〖念動力〗でレバーを上げた。
同時に、アリス、みずき、アルカナくん、私で突入。
すぐさま振り返ってくる、ハゲでヒゲの男。
「Who're!!(誰だ)!!」
しかし、みずきの動きが馬鹿捷い。
目にも止まらぬ速さで、ハイジャック犯を拘束。
アリスが、男性客に借りてきたベルトで瞬く間に、ハイジャック犯を縛り上げた。
「Japanese(日本人)!? なんだ貴様は!! 我らの邪魔する気か!!」
「当たり前だ」
みずきがハイジャック犯に冷たく言い放って、床に転がした。
私は一応みんなに言う。
「どこに向かってたのかとか訊きたいから、まだ連れてかないで」
「わかったドアの外はわたしが見張るから、アリスはその男を」
「はい」
にしても・・・私は、床に転がされた血だらけの男性二人を見る。
操縦士さんと、副操縦士さんだ。
息をしていない。
客室乗務員さんが口元に手を当てて、真っ青な顔で涙を流している。
――いや、まだだ。
まだ、可能性はある。
私は操縦士さんと副操縦士さんに〖再生〗を掛ける。
頭と心臓を撃たれているんだけど・・・・でも。
気付くと私は――飛行機じゃなくて、電車に乗っていた。
電車は鏡のような湖の上を走っていた。
若干戸惑っていると、やがて草原にたどりつく。
そこは花が咲き乱れていて――また、レテ川が見えた。
すると川べりに立つ、二人の男性の姿が見えた。
これは間に合ったかもしれない――私は〖サイコメトリー〗を使った後、叫ぶ。
「行っては駄目です!!」
川の前に立っている二人の肩を〖念動力〗で叩いた。
私の体に大きな疲労感が出る。これは――前にバルバロン王を最初に〖再生〗した時より酷い疲労感。今回使った〖再生〗が2人分だからだろうか。
「君は?」
「君は? ここは一体・・・?」
「よ、黄泉の河です」
二人の顔が暗いものになった。
「やっぱり我々は死んだのか?」
「そうだ、私達は突然現れた男に撃たれて」
「いえ、まだです。―――私があなた達の体を再生します、だから戻ってきてください」
「体を再生する?」
「・・・そんな馬鹿な」
「出来ます。だから戻ってきてください。副操縦士さん、婚約者を一人にするつもりですか!?」
「―――!」
副操縦士さんらしき男性が何かを思い出したような表情になって、息を呑んだ。
私は彼の瞳をみて、次に隣の男性の瞳を見た。
「いいですか。二人で戻ってきてください――いいですね!」
彼らが頷くのを見て、私が戻ろうとすると、意識がすぐさま現実に戻ってきた。
「が―――っ、はっ!!」
私は、荒い呼吸をする。
凄まじい倦怠感を感じる。
だけど、なんとか意識を失わないで済んでいるようだ。
そして見れば、操縦士さん達が呼吸を始めた。
傷も治って、元通りになっている。
「・・・・よ、良かった。乗務員さん、お二人はきっと助かります」
私が言うと、斜め上から嗚咽が聞こえてきた。
嗚咽の主は、手で顔を覆ってしゃがみ込み、全身を何度も震わせている。
「―――ありがとうございます―――ありがとうございます―――こんな奇跡を!」
と、何度もお礼をいってくる。
でも・・・操縦士さんたちが、目を覚まさない。脳と心臓をやられていたし傷が酷すぎるのだと思う。
もう一度〖再生〗を使えば、目を覚ましてくれる可能性はあるんだけど。
ハイジャック犯が、呼吸をはじめた操縦士さんたちに唖然としている。
目を覚ましてくれれば、操縦を彼らに任せるんだけど。
軽く揺すっても駄目だ。目を覚ます様子はない。
もう一度〖再生〗してみようか・・・王様の時はそれで上手く行ったし――でも、私はあの時気を失ったから、王様がどれくらいで目を覚ましたのかがわからないし。
もし二人がすぐに目を覚まさず、私が意識を失ったら一巻の終わりじゃないか?
アリスとみずきの二人は、飛行機の操縦はあまり出来ないし。
「みずき、王様ってどれくらいで動けるようになった?」
「王様が目を覚ましたのはすぐだったけど、彼が動けるまでは6時間掛かった」
「そっか――分かった」
飛行機の操縦ならオートパイロットを起動するだけだし。着陸だけなんとか頑張れば、自動でなんとかなる。
私は立ち上がって計器を視る。
どうやら、この国の大統領の家の方向に向かっていたようだ。
「目的地は、大統領の家ですか?」
ハイジャック犯がビクリと体を緊張させた。
――なるほど。
じゃあ操縦を開始する前に、一応、宣言をしよう。
義務が有るって聞いたので。
――まあ私はパイロットではないから、義務はないかもだけど。
宣言すると、ブラックボックスとかに音声が保存されるのかな?
「操縦士、副操縦士共に意識を失っています。緊急事態により。I Have Control(私が操縦します)」
私は中央のボタンを押して、オートパイロットを起動。一番近くの空港までの航路にする。
あとはオートパイロットが勝手にやってくれる。
これで一安心だ。と、胸を撫で下ろし10分ほど飛んだ。
その間に操縦士さんたちは運び出してもらった。
しかし胸をなでおろしたのも束の間。戦闘機が一機、下の方から飛んできた。
味方? この旅客機を助けに来た?
――いや、でもなんであんな急上昇してくるんだろう。
まるで海面スレスレを通ってレーダーを避けてきたかのような軌道――と思っていたら、けたたましい警告音。
この音は、地球のミサイル警報装置(MAWS)だ。
「ロックオンされた!!」




